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(社説)首相南米歴訪 国際協調に力を尽くせ
少数与党による第2次内閣を発足させたばかりの石破首相が、南米を舞台にした一連の外交日程を終えた。自国第一主義を掲げるトランプ米次期大統領の就任に各国が身構えるなか、国際協調や多国間外交に力を尽くせるか。米国の同盟国でもある日本の果たすべき役割は大きい。
首相はペルーでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、ブラジルで主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に続けて出席した。
G20では、飢餓・貧困、気候変動、災害などの課題を挙げ「分断と対立ではなく、共通点と一致点を見いだし、全てのメンバーが責任を共有した形で、解決を主導していく必要がある」と述べた。そうした体制をつくれるか、言葉だけでなく実践が問われる。
トランプ氏は関税の大幅な引き上げを主張しており、各国首脳には、保護主義への警戒感も広がっている。
首相は歴訪を締めくくる記者会見で「日米の協力が両国の国益になり、インド太平洋地域の平和と安定にも貢献することを、よく説明し、理解してもらう」と、トランプ氏への向き合い方を語った。
法の支配に基づく国際秩序の維持や、自由で開かれた貿易・投資の促進が、米国自身の利益でもあることを粘り強く訴え、国際社会との橋渡しを通じて、信頼関係を構築してもらいたい。
米国に国際社会に関与し続けるよう働きかけるうえで、日本自身が周辺諸国との関係を安定させるとともに、国際協調を重視する諸国との連携を強化することは重要だ。
首相はペルーで中国の習近平(シーチンピン)国家主席と会談。中国軍の活動の活発化などに懸念を示す一方、あらゆるレベルで意思疎通を強化することで合意した。対中強硬姿勢を示すトランプ政権の下で、米中の緊張が地域を不安定化させないよう努める必要がある。
首相は開催国のペルー、ブラジルや東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳らとも個別会談を重ねた。主要7カ国(G7)との協調に加え、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国との関係を深めることは、国際社会の分断と対立を防ぐうえで不可欠だ。
首相が強力な指導力を発揮するには、政権基盤が脆弱(ぜいじゃく)であることは確かだ。それだけに、内政にとどまらず、外交・安保の分野についても、より丁寧に国民に説明し、開かれた国会での議論を通じて、理解と支持を広げるしか道はあるまい。国民的議論を抜きに安保政策を大転換した、岸田前政権のようなやり方は通用しないと心得るべきだ。