米国トランプ政権で軍事・平和はどうなるか
 | 米国の軍事関連産業の企業献金や政・財・軍の
 | 一体化(天下り等)は日本とは桁ちがい
 └──── 上岡直見(環境経済研究所代表)

◎ 事前の予想に反して米国の次期大統領はトランプに決まり、軍事・平和と日本への影響が気になる。
 トランプが自国最優先の政策を展開し、その影響で世界中で混迷が深まる懸念を持つ人が多いだろう。
 しかし結論からいうと関係ない。
 表面的には民主党と共和党が政策を争っているように伝えられるが、どちらも裏では強大なネオコン勢力と一体化しており、以前のオバマ政権さえその例外ではない。

 「民主主義国家では、軍人の暴走を防ぐために文民統制(シビリアンコントロール)が採用される」と教科書的には言われるが、全くあてにならない。
 ほとんどの戦争は文民が始めるからである。
 米国の軍事関連産業の企業献金や政・財・軍の一体化(天下りなど)は日本とは桁ちがいであり、自民党の裏金などは幼稚園レベルである。

◎ 米国の政策決定のメカニズムを解説した本が最近刊行された。(※
 日本では名前も聞いたことがない女性高官の名前が挙げられている
 紹介文によると「軍事政策がそれを決定する一握りのエリートらの物質的利益と直接結びついているのなら、政策自体を外交的理性、軍事合理性で御するのは至難に違いない」という。

 外国のクーデターへの関与、CIAの暗躍、裏で武装勢力への援助などベトナム戦争の頃から公然の秘密ではあるが、冷戦終結後も変わっていない。
 ウクライナ戦争もロシア側が単に領土的野心で侵攻を始めたわけではない。
 前々から米国がロシアを崩壊させて資源を独占する筋書きを作り、2015年頃からNATOの側が挑発を繰り返していた経緯が解説されて
いる。
 なお本では原稿が間に合わなかったのか、ガザ問題に言及がないのは残念であるが、背景は同じことだろう。

 「軍事的合理性」さえ関係ないとすれば、利権のためなら自国兵士の生命さえ重視しないということである。
 まして日本人の安全など考慮するはずがない。
 米国が一見すると日本を友好国として位置づけているのは単に利権のためだけである。
 米国の言い分を鵜呑みにして日本の政策を判断する危険性を改めて認識させられる。

(※)成澤宗男『米国を戦争に導く二人の魔女-フロノイとヌーランド』
   緑風出版 https://ryokufu.com/product/2409-0