安倍元首相と統一教会 総裁応接室スクープで進む「答え合わせ」
  当初は菅官房長官が関与した

              ジャーナリスト 鈴木エイト

 「統一教会問題、忘れていませんよね?」
 前回のコラムの最後に、私は各政治家へこう問いかけた。
 予言したわけではないが、9月17日付の朝日新聞1面トップに衝撃的なスクープが掲載された。
 2013年の参院選公示直前、自民党総裁応接室で行われた統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の幹部と安倍晋三首相との面談を証拠写真とともに報じたのだ。

 当時は総裁特別補佐だった萩生田光一氏と実弟の岸信夫衆院議員を従えた安倍氏が、統一教会会長、国際勝共連合会長、関連団体の総会長らと面談。
 比例候補での初出馬で苦戦が予想された北村経夫(現参院議員)への支援について確認したというものだ。2人のつながりは、祖父母の代までさかのぼり、北村氏は安倍氏の肝いりだった。

 私が当時入手した教団内部のFAXには、北村候補への「後援」、つまり組織票による支援を「首相からじきじき」に「依頼」されたとの記述がある。その場がくだんの総裁応接室だったことになる。

 それにとどまらず、警察が摘発に動いているとの情報を入手した教団が「ある自民党の有力な議員を通じて安倍政権に接近した」との内部情報を得ていた。
 この「有力な議員」とは誰を指すのか。総裁応接室でのトップ面談をセッティングできた人物は限られる。
 実は安倍氏は2005年の時点で、ある人物にこう話している。「祖父や父は統一教会と親しくしていたけど、僕はあの教団は嫌い」

 反ジェンダーなど思想的な共鳴関係にはあったものの、統一教会とは一定の距離を置いていた安倍氏。
 8年を経て、なぜ組織票を教団トップに直接依頼するまでになったのか。そこには両者を近づけた仲介者の存在があったはずだ。
 第1次政権を投げ出した失意の安倍氏に、総理総裁へ再挑戦するよう励ました教団関連団体トップをはじめとする古参幹部ルートのほか、有力なラインとして政界ルートを追ってきた。

 それが一連の疑惑を埋める、最後のピースだからだ。当時の菅官房長官の関与をめぐる情報も得ていた。
 だとすると、事は自民党だけに収まらず、政権中枢にまで及ぶことになる。

 癒着の実態を解明するには、2年前の自民党による簡易な自己申告点検では不十分だ。第三者委員会の設置や、国政調査権を発動して当たるべき問題であることが改めて示されたと言える。
   (9月27日発行「日刊ゲンダイ」カルトな金曜日「カルキン」<13>)