ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

村本大輔2024/07/16/ 11:00

テレビから消えた「ウーマン・村本大輔」 かつての“嫌われ芸人”はなぜ今になって見直されてきたのか

 
渡米して活動している「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔

この記事の写真をすべて見る

 

 7月上旬、お笑いコンビ「チョコレートプラネット」がアメリカのオーディション番組に出演し、会場を爆笑の渦に巻き込んだというニュースが話題となった。近年、アメリカに拠点を移して活躍する渡辺直美や、イギリスのオーディション番組で注目された、とにかく明るい安村など、海外進出する芸人が相次いでいる。かつて過激な政治的発言などで炎上が続き、日本のテレビからは“消えた”ウーマンラッシュアワー・村本大輔(43)もその一人だ。

 

【写真】パワハラ騒動があっても「干されなかった」女性芸人はこちら

 

 そんな村本が6月27日放送の「アメトーーク!」(テレビ朝日系)にVTR出演し、地上波で久々に姿を見せた。

 

 

「同番組では『あれから5年…激動の同期芸人』と題した企画が放送され、南海キャンディーズ・山里亮太やキングコング、平成ノブシコブシらNSC同期の第一線で活躍する芸人たちが出演していましたが、番組終盤に登場したのが村本でした。相変わらず舌鋒鋭く、村本節で同期たちを斬りまくっていました。キングコングの2人に対して『YouTubeとサロンビジネスの宣伝目的でテレビに出ている』と断罪しつつ、自身が題材となったドキュメンタリー映画『アイアム・ア・コメディアン』の宣伝をさらっと押し込んだあたりはさすが。アンチが多いことで有名な村本ですが、SNSでは『いきなり出てきたウーマン村本、カッコよく見えた』など、好意的な意見もありました」(テレビ情報誌の編集者)

 

7月から自身のドキュメンタリー映画が公開される

「アメリカでも嫌われてます」

 1999年のNSC入所時は目立たない存在だったという村本。卒業後もなかなか相方が定着せず、落ちこぼれ同士で中川パラダイスと組んだのがウーマンラッシュアワーだった。しかし、2013年の「THE MANZAI」で優勝すると、テレビに引っ張りだこ状態に。そのまま芸能界を駆け上がっていくかと思いきや、途中から村本の過激な言動が目立ち始め、次第に炎上芸人として見られるようになった。

 

「原発や沖縄の基地問題など政治問題を漫才のネタにし始めた17年頃からテレビ出演が激減しました。『お笑いに政治ネタを持ち込むな』と考える視聴者も多く、アンチも急増していきます。こうして20年のテレビ出演はたった1本になり、以降は名実ともに“消えた芸人”となりました。一方、村本さんに密着した『村本大輔はなぜテレビから消えたのか?』というドキュメンタリー番組が放送されたのですが、そこには現場に足を運び、当事者の生の声を笑いとして届け続ける彼の姿がありました。同番組は高評価を得て、『2021年日本民間放送連盟賞 番組部門 テレビ報道番組 最優秀賞』を受賞したほどです。こうした中、政治や宗教などが当たり前のようにネタにされているアメリカを目指すようになり、2021年末にニューヨークへの移住を宣言。

『世界をコメディで監視する』との誓いに、ファンからはエールが寄せられました」(放送作家)

 

 

 だが、ビザ取得が難航し、昨年11月になってようやくアーティストビザが取れたことで、渡米することができた。それから現在まで、現地のライブハウスなどで地道に活動を続けている。村本は映画『アイアム・ア・コメディアン』で、「俺はコメディアン、テレビに出ているタレントとは違う」と言い切っているが、日本に帰ると、年間600ステージのペースで黙々と舞台に立ち続けているという。

 

アメリカでは毎晩コメディークラブを渡り歩き、英語が下手なことを観客から指摘されると「2年目の英語のヤツよりも、生まれもって英語をしゃべれるお前のほうが笑い取れないってどういう気持ち?」と逆にいじって「アメリカでも嫌われてます」(映画の公開初日舞台あいさつでの発言)とのこと。本人はいたって真面目にお笑い道を歩んでおり、自身の芸人道を邁進しているようだ。

 

同世代の芸人も一目を置いている

「SNSで公開しているアメリカでの舞台の映像を見ると、いかにも日本人が話すカタコト英語という感じで、ぎこちない部分もあるのですが、それでも観客は爆笑しています。どういうネタが受けるのか、きちんと研究して試行錯誤しているのでしょう。先日の『アメトーーク!』の出演シーンで同期芸人が誰も村本に対して突っ込めなかったことに対し、山里が『村本あっちで頑張ってんだな、という気持ちが先に立っている』と分析していたのが印象的でした。異国の地で孤軍奮闘する姿に同期たちも一目置いているようです。

渡辺直美やとにかく明るい安村など、ビジュアル力が強く言葉に頼らない笑いを発信できる“パワー系芸人”が近年、海外で活躍し、一定の実績を残しています。

しかし、まったく違うアプローチで世界に挑戦する村本に、お笑い関係者や後輩芸人も注目しています」(前出の放送作家)

 

 7月の映画公開に合わせて、一時帰国をしている村本だが、9月までは日本で活動する予定で、独演会のチケットは即完売となるほどの人気ぶりだ。お笑い評論家のラリー遠田氏は村本についてこう述べる。

 

 

「村本さんというと、世間では政治的な発言ばかりが注目されがちですが、芸人として地に足のついた活動を続けているところが、最も評価すべきポイントです。たった1人で舞台に上がり、小道具や楽器も一切使わずに、言葉一つで観客を楽しませる漫談という芸は、シンプルな分だけ奥が深くて難しいものだと考えられています。しかも、村本さんの場合、異国の地で慣れない英語を駆使してそれをやっているのだから、難しさはさらに数段上がります。『アメトーーク!』で同世代の芸人たちが村本さんに一目置くような態度を見せていたのも、彼がアメリカでスタンダップ・コメディーの修業を続けていることにリスペクトの気持ちがあるからでしょう」

 

 テレビから「消えた」と言われる村本だが、その実、お笑いの純度はますます研ぎ澄まされているようだ。

(雛里美和)