半年隠された米兵少女レイプ被疑事件
｜ 外務省は去年から５件の性暴力事件を隠蔽
｜「被嘘
｜ 琉球メディアは被害者匿名を徹底保護
｜ 「メディア改革」連載第155回
└──── 浅野健一（アカデミックジャーナリスト）
鹿児島県警本部長による犯人隠匿事件が明るみになる中、６月25
大阪と沖縄で二つの凶悪事件が大きく報道された。大阪地検検事正
務めた北川健太郎弁護士が検事正時代に部下に対する準強制性交の
で大阪高検に逮捕された。
また、同日、沖縄の民放テレビ局が在沖縄米軍の25歳兵長が少女
（16歳未満）へのわいせつ目的誘拐と不同意性交罪で起訴されて
ことがわかったと報道。事件は昨年12月24日に起きた。
沖縄県警は、米軍が兵長の身柄を確保していたため、逮捕できなか
県警は３月11日に那覇地検に書類送検し、地検が同27日に在宅
日米地位協定に従って、米軍が起訴後に被告人（兵長）の身柄を日
に引き渡した。
県警は事件の発生、送検を県警記者クラブに広報（公表ではなくク
加盟の企業メディア記者に限定した便宜供与）せず、地検広報官も
へ広報しなかった。
県警は、過去の米兵による事件は発生・逮捕時に速やかに広報して
起訴の段階で捜査当局から事件を知った外務省の岡野正紀事務次官
エマニエル駐日米大使に抗議した。
ただ、外務省はこの際、沖縄県に情報を伝えなかった。沖縄のテレ
記者は那覇地裁の事件簿を見て、米兵が被告人になった事件がある
見つけて、関係先に取材して独自に報じた。報道の直後に、林芳正
長官らが事件を認め、県にも連絡したと述べた。
県警、地検、裁判所、外務省は６月25日にテレビ局が報道するま
の発生、捜査経過を秘匿してきた。鹿児島県警であったことが、全
で起きているのだ。玉城知事は「信頼関係において著しく不信を招
でしかない」と抗議した。県民も強く反発した。
これについて外務省の小林麻紀外務報道官は、26日の記者会見で
具体的な事案の内容に応じて適切に判断して対応している。特に本
ように被害者のプライバシーに関わるような事案については、慎重
対応が求められると考えている。常に関係各所にもれなく通報する
が必要だとは考えていない」と述べた。
小林氏の、対応は適切だったという認識は異常だ。
https://www3.nhk.or.jp/news/ht
会見から２日後の６月28日の閣議で、３年前の岸田内閣の発足以
内閣広報官を務めてきた四方敬之氏を退任させ、後任に小林外務報
を起用する人事（７月１日に発令）を決めた。小林氏は、東京都出
57歳。中南米局長などを歴任した。
その後、今年1月にも記者クラブで広報していない米軍関係者によ
性暴力事件があったことが判明。また、林官房長官は7月3日、こ
他にも同様の広報していない事案が3件あると明らかにした。
https://www3.nhk.or.jp/news/ht
政府は「被害者のプライバシーへの配慮」を理由にしている。NH
よると、政府は５日、沖縄県内での同様の事件については、捜査当
公表しないものでも可能な範囲で県に情報を伝える運用を始めた。
当局が公表しないものでも県に情報を伝えるというのだが、県警な
これからも事件の発生、立件に関して広報しないのだ。
沖縄では1995年９月に金武町で、米兵3人による女子小学生へ
強かんがあった。2001年６月には、米空軍嘉手納基地所属の軍
町の駐車場で女性をレイプ。08年２月には、米海兵隊員が女子中
強かん。12年10月には、米海軍兵２人が通行中の女性を連れ去
強かんした。
16年は、３月、米海軍兵が那覇市のホテルで寝ていた女性を暴行
さらに同年４月、うるま市でウォーキングをしていた20歳の女性
米軍属の男が鈍器で殴りつけて草むらに引き込み、強姦したうえナ
等で刺殺した。
外務省などは事件情報の隠蔽について、被害者のプライバシーへの
配慮などを理由に挙げているが、沖縄では女性団体、弁護士会、マ
労協、書店商業組合などが事件被害女性の人権を守ってきた。ヤマ
(本土)の週刊誌などが米兵の勾留理由開示裁判で読み上げられた
女性の住所、氏名、職業、年齢などをもとに関係先の取材をしたこ
裁判所も被害者の特定につながる個人情報を伏せている。
01年の事件では、家族関係、仕事を書いた「週刊新潮」「週刊文
の県内での販売を拒んだ。沖縄弁護士会人権擁護委員会（永吉盛元
委員長）は「一部週刊誌から侮辱的な取材を受け、名誉とプライバ
を侵害された」と、人権救済の申し立てを行い、弁護士会はいちは
会長声明を出して、メディア界に警告した。
ヤマト(本土)と違い、沖縄では女性記者を中心として、性暴力犯
取材と報道について、被害者を守り抜く枠組みができている。私も
ってきた。「被害者のプライバシー」を理由にした、米兵事件の隠
私は許さない。
