日刊IWJガイド・非会員版

G7はロシアの凍結資産の盗用を決定! ロシアはドルとユーロをモスクワ証券取引所から排除! 他方、サウジは脱『ペトロダラー体制』へ!」2024.6.15号~No.4254

 

■はじめに〜米国・バイデン政権は、新たな対露制裁を発動! G7首脳会議は、ロシアの凍結資産の盗用で大筋合意! ロシアはカウンターで、モスクワ証券取引所からドルとユーロを排除! 

 

そんな中「サウジアラビアが、米国との石油ドル協定を更新しないと決定した」との「ペトロダラー体制終焉」の情報が非公式に流れる! 実際、サウジアラビアは、中国が主導する中央銀行デジタル通貨の国境を越えた試験に参加! サルマン皇太子は国内行事を理由にG7の招待に応じず、サウジ外相は、ロシアで開催されたBRICS閣僚会議に参加! ペトロダラーによるドル基軸体制の終焉を告げる「噂話」が、いずれ事実になる日が来る!?

 

 おはようございます。IWJ編集部です。

 

 米国のバイデン政権は6月12日、新たに大規模な対露制裁を発動しました。制裁は、米国の金融制裁対象である「特別指定国民(SDN)」への指定と、米商務省産業安全保障局(BIS)による輸出管理強化からなります。

 

 13日付『ジェトロ』によると、米財務省は、国務省と共同で、ロシアやベラルーシの300以上の事業体と個人を、「特別指定国民(SDN)」に指定しました。

 

 この大規模制裁は、ロシアの制裁回避を阻止する目的で、「ロシアの金融システムのほか、金取引のロンダリング、無人航空機(UAV)の生産、化学・生物兵器の材料やUAV機器、工作機械、産業機械、マイクロエレクトロニクスなど機微かつ重要な品目の調達を支援しているネットワーク」をターゲットにしています。「SDN」に指定されると、在米資産の凍結や、米国人との資金・物品・サービスの取引禁止が科されます。

 

※バイデン米政権が大規模ロシア制裁を発動、300以上の事業体・個人を金融制裁対象(SDN)に指定(2024年6月13日)

https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/06/879a9789c7b12f95.html

 

 13日にイタリア南部プーリア州で開幕したG7首脳会議は、初日に、制裁で凍結されている約3000億ドルのロシアの資産が生む「利子」を活用し、ウクライナに対して、500億ドル(約7兆8500億円)の融資を行うことで、大筋合意しました。13日付『ロイター』や、『BBC』が報じています。

 

 ながらく、ロシアの凍結資産の「流用」は米国をはじめ、EU内で議論されてきましたが、これまでは、国際法違反ではないかとして賛成しない国々があり、実現していませんでした。しかし、今回の案は、各国が大筋合意したことで、当初500億ドルを拠出する予定だった米国の負担が減ると言われてます。

 

 上記『ロイター』によると、今後、「技術的な詳細」を数週間かけて確定し、ウクライナへの支援は、今年の年末までに実施される可能性がある、ということです。

 

 G7は、欧州連合(EU)とともに約3250億ドル(約51兆円)相当のロシア資産を凍結しています。ロシアの凍結資産は、年間約30億ドルの利子を生んでいます。G7は、この30億ドルを、国際市場で資金調達するウクライナへの融資500億ドルの年利の支払いに充てる計画だ、と『BBC』は報じました。

 

 G7は元金に手をつけることは避け、その利子をピンハネするというのです。どういう国際法上の根拠があって、こんなことが許されるのかわかりません。こうしたヤクザか盗人まがいの手法は、「世界をリードする先進国」と、その「先進国がなんでも決める国際秩序」なるものへの信頼を大きく損なうものです。

 

 ゼレンスキー大統領もG7に参加し、ウクライナと米国の二国間安全保障協定に署名したバイデン大統領と堅い握手をかわし、「今日は本当に歴史的な日であり、我々はウクライナと米国の間で(1991年の)独立以来最も強力な協定に署名した」と、ぬけぬけと述べました。

 

 ロシア側は、当然、このG7の動きに対して、強く反発しています。ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、G7で今回の決定が発表される数時間前に、「(欧米ウクライナにとって)極めて痛みの大きい報復措置が取られる」、と警告しました。

 

※G7、凍結ロシア資産活用で大筋合意 ウクライナに500億ドル支援(ロイター、2024年6月13日)

https://jp.reuters.com/world/security/NHW2MJVEUBK4ZPNX5ZKO42SE4M-2024-06-13/

 

※G7 agrees $50bn loan for Ukraine from Russian assets(BBC、2024年6月13日)

https://www.bbc.com/news/articles/cllldqyg19ro

 

 西側諸国の攻撃的な動きに対し、モスクワも対抗措置を取るべく動きました。

 

 モスクワ証券取引所(MOEX)は12日、ドルとユーロの取引を停止しました。この措置は、米国の新たな制裁に対抗するものだ、としています。12日付『RT』が報じました。

 

 13日から、ドル建て・ユーロ建ての取引が停止されています。

 

 MOEXは、今回の取引停止は、ロシア最大の公開取引市場(MOEX)における海外との、貴金属取引、株式および資金取引に影響すると、発表しました。ただし、MOEXは、ドルとユーロを除き、他のすべての金融商品は引き続き取引可能である、と説明しています。

 

 ドル建て・ユーロ建ての取引は、MOEXを介さない、2者間で直接取引する店頭取引(OTC)で行われることになります。

 

 今回の米国の追加制裁では、MOEXのほか、その子会社2社、すなわち国立決済センター(NCC)と国立決済保管所(NSD)も対象とされています。ジャネット・イエレン米財務長官は、「ロシアは完全に『戦争経済』に移行しており、国際金融システムから『深く孤立している』」と述べました。

 

 「経済戦争」を仕掛けた米国側が、「おまいう」なセリフです。

 

 しかし、本当に西側諸国が科した対露制裁によって、ロシア経済が国際金融システムや世界経済から、深く孤立しているのか、それにより決定的なダメージを被っているのかは、疑問があります。

 

※Moscow exchange suspends trading in dollars and euro(RT、2024年6月12日)

https://www.rt.com/business/599188-euro-dollar-suspense/

 

 13日付『ロイター』は、ロシアの大手商品輸出業者に取材しています。

 

ロシアの大手商品輸出業者「(中国の)人民弊を持っているので気にしない。ロシアでドルやユーロを手に入れるのは、事実上不可能だ」。

 

 すでに、人民弊は、5月にMOEXで取引された全外貨の53.5%を占めており、MOEXで最も取引される主要通貨となっています。米国をはじめとする西側諸国が、ドルやユーロを「兵器化」して対露制裁をかければかけるほど、ドルやユーロの政治的信頼性は失墜し、危うくて持っていられない通貨となっていきます。

 

 グローバル・マジョリティーを中心とした世界中の他の国でも、そうした制裁リスクを恐れ、嫌って、他の国々との貿易におけるドルやユーロの利用率を減しつつあります。「孤立」に向かっているのは、むしろ米国と西側諸国である、というべきです。

 

※モスクワ取引所でドルとユーロの取引停止、米の対ロ追加制裁受け(ロイター、2024年6月13日)

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/FFPB64UZZBJSXEIHRYBMX4D5KQ-2024-06-12/

 

 また、『日刊IWJガイド』6月13日号でお伝えした通り、世界銀行による報告によれば、西側からの制裁を受け、ジャネット・イエレン米財務長官によれば「孤立」しているはずのロシア経済の成長率2.9%を記録しました。

 

 これは「先進」西側諸国1.5%を上回り、最大の成長率2.5%である米国を上回りました。この6月の世界銀行による報告は、国際通貨基金(IMF)による4月の予測を裏付けるものとなりました。イエレン米財務長官の発言は、こうした公式データから乖離しており、虚言に等しいものです。こうして日々、米国はさまざまな形で、信頼を失いつつあります。

 

※【第2弾! 世界銀行が、ロシアのGDP成長率を上方修正! ウクライナ紛争を通じて、ロシアの軍需産業が拡大、そしてロシアの「東方転換」により、中国との貿易が増加!】

ロシアの「東方転換」で世界経済の構造が転換し、西側諸国は世界経済を支配する力を失いつつある!「ロシアの弱体化」を画策して、ロシアを「東方」へ追いやった米国の歴史的な戦略的失敗!(世界銀行『世界経済見通し2024』、2024年6月11日)(日刊IWJガイド2024.6.13号)

会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20240613#idx-7

非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53585#idx-7