ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

国連安保理、ガザ「3段階」停戦案の受け入れ迫る決議 ロシアは棄権

米ニューヨークの国連本部=2023年7月3日、八田浩輔撮影

 

 パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘をめぐり、国連安全保障理事会は10日、イスラエルがイスラム組織ハマスに示したとされる新たな停戦案の受け入れと履行を双方に迫る米国主導の決議案を採択した。15理事国のうち、日本を含む14カ国が賛成し、ロシアは棄権した。ハマスは決議を「歓迎する」との声明を出し、交渉の用意があるとした

 

  【地図】半年でガザの街はこれだけ壊れた 

 

 停戦案は3段階からなり、バイデン米大統領が5月31日に明らかにしていた。

即時に休戦に入り、イスラエル軍はガザの人口密集地域から撤退を始める。

ハマスは女性や高齢者など一部の人質を解放する

 

残りの人質を解放して恒久的に敵対行為を停止する

 

ガザの復興計画に移行――というシナリオを描く。

 

  米国が起草した安保理の決議は、イスラエルは既に3段階の停戦案を「承認している」として、ハマスにも受け入れを要求。そのうえで、双方に「無条件で遅延のない完全な履行」を求めたパレスチナ国家の樹立を前提とした「2国家解決」への支持と、ガザの領土変更に反対する内容も盛り込んだ。 

 

 米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は採択後、「イスラエルはこの取引に賛成している。ハマスが同じ対応を取れば、戦闘は今日にも止められる」と述べた。米国はブリンケン国務長官による10日からの中東歴訪に合わせ、合意に向けた交渉を後押しする材料とするために早期の採決を促していた。

 

  棄権したロシアのネベンジャ国連大使は、米国が公表した停戦案が不透明だと批判する一方、アラブ諸国が決議案に賛成していることに配慮して「阻止はしない」と説明。拒否権の行使による孤立化を避けた。

 

  イスラエルとハマスの戦闘が始まった昨年10月以降、ガザ情勢をめぐる安保理決議は4回目となる。3月下旬にはラマダン(イスラム教の断食月)期間中の即時停戦を要求する決議を米国を除く14カ国の賛成で採択したが、休戦は実現しなかった。イスラエルは過去3回の決議に強い反発を見せたが、今回の決議後は安保理批判のトーンを抑えている。

 

  安保理決議の実効性が問われるなか、国連外交筋は「停戦交渉の行方は分からない。ただ、今回の決議は包括的な内容で、これまでの決議と比べて前進に期待が持てるのは確かだ」と期待をにじませる。【ニューヨーク八田浩輔】