「兵庫医科大学で悪性胸膜中皮腫の第一人者だった長谷川先生」で検索したら、

医療ライターの福島安紀さんの記事 発見 👀

右田孝雄さんも(*^-^*)

 

 

【 国立がん研究センター希少がんセンターと兵庫医科大学は7月7日、中皮腫の中で最も多い「悪性胸膜中皮腫」をテーマにした希少がんセミナーをオンライン開催した。セミナーでは、兵庫医科大学呼吸器外科教授の長谷川誠紀氏が「悪性胸膜中皮腫を治る病気に」と題して主に外科治療について国立がん研究センター希少がんセンター/中央病院呼吸器内科外来医長の後藤悌氏が主に薬物療法について講演した。また、NPO法人中皮腫サポートキャラバン隊理事長の右田孝雄氏が、同会の活動を紹介した・・・

 

 

長谷川氏は、「うまくいくケースばかりではありませんが、最初の段階で切除不能といわれても、あきらめる必要はないということです。私が研修医だった頃には肺がんは治らない病気といわれていましたが、今では治るのが当たり前になってきました。同じように、悪性胸膜中皮腫は治るようになりつつある病気だと考えています。もっと治療成績を改善するために、 新しい手術のやり方や新しい薬をうまく使うなど、いろいろな試みが進行中です」と強調した。

 

患者・家族同士の交流と情報提供を行う患者会も活用を

 

 NPO法人中皮腫サポートキャラバン隊理事長で悪性胸膜中皮腫サバイバーの右田氏は、「私たちは、中皮腫の患者さんとご家族が、希望を持って安心して暮らせることを目指しています。中皮腫と確定診断されたばかりの方もいれば、何年か前に診断された方も情報が欲しいと思います。私たちは人とつないだり、必要な情報、良質な医療、新たな治療法、安心な社会保障とつないだりということをキーワードとして活動しています」と話した。毎週水曜日13時30分から、中皮腫ZOOMサロンをオンライン開催し、患者・家族の交流、情報交換を行っているという。また、中皮腫に関する講演会、勉強会なども開催している。

(右田孝雄氏講演資料より)

 

 右田氏は、患者数が少ないために治療薬などの開発がなかなか進まない中皮腫の選択肢を1つでも増やすことを目指して、医師、患者、弁護士などが2022年1月に設立した一般社団法人中皮腫治療推進基金(https://www.mesothelioma-fund.com/)についても、次のように紹介した。「中皮腫を治る病気にするために、新しい治療薬や治療法の開発、あるいは、既存の治療薬の適応拡大のための治療研究ができる資金を募る基金です。皆さんのご協力をお願いします」。

 Q&Aセッションでは、司会の国立がん研究センター希少がんセンター・希少がん中央機関の加藤陽子氏が、「『悪性胸膜中皮腫の疑い』と言われたらどの科、どのような病院を受診したらよいのかという質問を患者さんからよく受けます。どうしたらよいのでしょうか」と質問した。

 後藤氏は、「悪性胸膜中皮腫は胸水がたまっているという症状から見つかりますので、肺がんや結核との鑑別診断が必要です。近くの呼吸器内科を受診するといいと思います。悪性胸膜中皮腫は患者数が少ないためになかなか診断がつかないこともあるのは事実ですが、近くの病院で手に負えない状況なら、専門病院へ紹介してくれるはずです」と回答した。

 右田氏は患者の立場から、「中皮腫だと分かったら、経験豊富な病院で治療を受けることをお勧めします。中皮腫に詳しい病院は少ないので、どこにかかったらいいか分からなかったら、私たちにお問い合わせください。個人的には、中皮腫を診てくれる病院がもっと増えて欲しいと思います」と語った。

 長谷川氏も、次のようにコメントした。「胸水がたまったからといって中皮腫とは限らないので、最初は地元の呼吸器内科専門医のいる医療機関を受診し、そこから専門の施設に行っていただくのがいいと思います。中皮腫の専門施設が少ないというのはその通りで、各地方に1カ所ずつぐらいは中皮腫の手術と薬物療法の経験が豊富な病院が必要です。そうかといって、多くの施設が中皮腫を診るようになると分散化してしまうので、適度の集約化がいいと考えています」。

 最後に、「悪性胸膜中皮腫は治る病気になりつつありますがまだ道半ば、3合目くらいです。我々も思い切り頑張りますので、患者さん、医療関係者、マスコミなどのパワーを集めて何とか治る病気にしていきましょう」と長谷川氏が呼びかけセミナーが終了した。

 

 

 

 

 

 

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国立がん研究センター・希少がんセミナー2023より 14

徐々に治る病気になりつつある悪性胸膜中皮腫の治療

福島安紀=医療ライター

 国立がん研究センター希少がんセンターと兵庫医科大学は7月7日、中皮腫の中で最も多い「悪性胸膜中皮腫」をテーマにした希少がんセミナーをオンライン開催した。セミナーでは、兵庫医科大学呼吸器外科教授の長谷川誠紀氏が「悪性胸膜中皮腫を治る病気に」と題して主に外科治療について、国立がん研究センター希少がんセンター/中央病院呼吸器内科外来医長の後藤悌氏が主に薬物療法について講演した。また、NPO法人中皮腫サポートキャラバン隊理事長の右田孝雄氏が、同会の活動を紹介した。


 

合併症の少ない胸膜切除術や無開胸手術で治療成績が向上

 

〈長谷川誠紀氏 顔写真〉

 

 悪性胸膜中皮腫は、肺を包む膜(胸膜)に並んでいる中皮細胞から発生する悪性腫瘍だ。主な原因はアスベスト(石綿)の曝露(ばくろ)で、30~40年の潜伏期間を経て発症する。長谷川誠紀氏は、講演の冒頭で、「悪性胸膜中皮腫は2010年頃にはほとんど治らない病気でしたが、ここ10年ぐらいで大きな進歩がありました」と話した。

 兵庫医科大学呼吸器外科は、2004年から悪性胸膜中皮腫の手術に力を入れ始め、現在では全国からこの病気の患者が集まってきている。最初の7~8年は、肺ごと全部摘出する胸膜肺全摘術(EPP:extrapleural pneumonectomy)が主流であり、生存期間中央値(MST:50%の患者が亡くなるまでの期間)は17.7カ月だった。病変のある側の胸膜を切除して肺は温存する低侵襲の胸膜切除/肺剥皮術(以下、胸膜切除術。P/D:pleurectomy/decortication)を実施するようになって治療成績が改善し、MSTが50.1カ月になった。2019年頃から、患者の負担を減らすために、一度も開胸しない無開胸P/Dを実施するようになっており、今後はさらに治療成績が上がる可能性が高いという。無開胸P/Dは、開胸せずに袋状の胸膜を剥がして摘出する方法だ。

 悪性胸膜中皮腫の手術に関しては、2006年からJMIG-0601試験、2011年からはJMIG-1101試験という多施設共同第2相臨床試験が行われた。JMIG-0601試験では、ステージI~IIIの悪性胸膜中皮腫の患者42人(年齢中央値64.5歳)を対象に、シスプラチンとペメトレキセドによる導入(術前)化学療法の後、胸膜肺全摘術を行い、術後に片側胸部放射線療法(54グレイ[Gy])を実施した。JMIG-1101試験ではステージI~IIIの悪性胸膜中皮腫の患者20人を対象に、JMIG-0601試験と同じ導入化学療法が実施され、胸膜切除術を行った。
 
 時期も対象者も異なるため単純な比較はできないものの、JMIG-0601試験とJMIG-1101試験で大きな差があったのが手術合併症だ。「胸膜肺全摘術では手術関連死(84日以内の死亡)が9.5%だったのに対し、胸膜切除術では0%、グレード4以上の重大な合併症は前者が30.3%だったのが、後者は0%でした。生存期間中央値は胸膜切除術が41.4カ月で、胸膜肺全摘術(19.9カ月)の約2倍です。わずか5年の間に治療成績が大幅に延びたということです」と長谷川氏は解説した。近年、胸膜切除術の割合が増えており、特に、4年間で11例以上悪性胸膜中皮腫の手術を実施している病院では、胸膜切除術の割合が高い。

完治を目指すためには手術と術前化学療法が必要

 手術の対象になるのは、「手術を安全に受けられる全身状態」を維持し、「中皮腫が胸膜の中に留まっていて病変の切除が可能(ステージI~III期)」という2つの条件を満たした患者だ。進行した状態で見つかる患者が多いため、悪性胸膜中皮腫の患者のうち、手術が受けられるのは10%程度という。

(長谷川誠紀氏講演資料より)

 

 悪性胸膜中皮腫は、上皮型、肉腫型、二相型という3つのタイプに分けられる。日本肺癌学会が作成している診療指針の「悪性胸膜中皮腫診療ガイドライン2020年版」で切除可能なら手術が強く推奨されるのは上皮型で、二相型は弱い推奨、肉腫型は手術が適応外だ。ただ、長谷川氏は、「免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブとイピリムマブを組み合わせた薬物療法がかなり効くケースがあり、今後は、非上皮型でも手術ができるようになる可能性があります」と指摘した。

 悪性胸膜中皮腫の手術は胸膜切除術であっても、胸腔鏡手術やロボット支援手術が主流で低侵襲になっている肺がんの手術に比べると、大きな切開が必要で手術時間が長く、入院期間も3~4週間になる大がかりな手術だ。最近では1%未満の病院も出てきているが、手術死亡率も全国平均では3~5%と高い。

(長谷川氏講演資料より)

 

 では、手術をしないと悪性胸膜中皮腫は治らないのだろうか。

 「実際に、手術適応があるのに手術を受けなかった患者さんの5年生存率はゼロに近く、手術を受けた場合は42%です。手術をするのは治ること目指すためで、手術なしで完治は困難です。逆に、目の前の日常を静かに過ごしたい、やり残した仕事をしてしまいたいという方はあえて手術を受けないという選択肢もあるかもしれません」と長谷川氏は語った。

 手術だけで中皮腫を治すことはできず手術の前か後には、化学療法を行うのが標準的だ。「我々は術前化学療法を推奨しています。その理由は、術前化学療法をやっている間に病状が進行してしまうような患者さんは、残念ながら予後が悪いからです。そういう方が8%くらいいますが、もしも最初に手術を受けると治らないのに体には大きな負担がかかり、つらいだけになってしまいます。完治が期待できるのは術前化学療法で病変が縮小あるいは維持され、手術で病変を取りきれた患者さんです」(長谷川氏)。

 胸膜切除術後は、体重や握力、6分間歩行距離などが低下するが、1年後には元に近い状態に戻り、手術後のQOLは比較的良好だ。

(長谷川氏講演資料より)

 

悪性胸膜中皮腫に保険適用のある抗がん薬は現時点で4剤のみ

 

 縦隔リンパ節や他の臓器への転移があるなど、手術ができないくらい胸膜中皮腫が広がっている場合には、抗がん薬による治療を行う。後藤氏は、「胸膜中皮腫に有効だと考えられている抗がん薬には下記のようなものがありますが、日本では、赤字で表記したシスプラチン、ペメトレキセド、ニボルマブ、イピリムマブという4つの薬しか保険適用になっていないのが実態です」と解説した。

(後藤悌氏講演資料より)

 

 シスプラチン単独よりも、ペメトレキセドを併用した方が腫瘍縮小効果は高く、平均生存期間が延びることが分かっている。シスプラチン+ペメトレキセド療法では、副作用を軽減するために、投与1週間前から葉酸とビタミンB12の投与を受ける。

上皮型か肉腫・二相型かで治療戦略を変える必要がある可能性も

 「ニボルマブは、悪性胸膜中皮腫に対して日本でだけ認められている薬ですが、無治療に比べて生存期間を延長する効果があります」と後藤氏。さらに、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、シスプラチン+ペメトレキセドよりも全生存期間を延長することが分かってきた。

(後藤氏講演資料より)

 

 注目すべきは、これを組織型別に上皮型と肉腫・二相型に分けて分析してみると、明らかに、肉腫・二相型の方が効果は高い点だ。

(後藤氏講演資料より)

 

 今年6月の米国臨床腫瘍学会(ASCO2023)では、シスプラチン+ペメトレキセドだけよりも、免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブを併用した方が全生存期間を延長することが報告された。これに関しても、非上皮型(肉腫・二相型)の方が効果は高かったという。

(後藤氏講演資料より)

 

 「上皮型と肉腫・二相型とでは、全く違う経過をたどることがあります。上皮型は、シスプラチン+ペメトレキセドと免疫チェックポイント阻害薬による治療の効果は同じくらいかもしれないといわれています。肉腫・二相型では、明らかに、ニボルマブ+イピリムマブがシスプラチン+ペメトレキセドを上回っています。実際には、ニボルマブ+イピリムマブを最初に行い、その後、シスプラチン+ペメトレキセドを実施することが多くなっています。日本ではまだ承認されていませんが、今後は、シスプラチン+ペメトレキセド+ペムブロリズマブも選択肢になるかもしれません」と後藤氏は話した。

免疫チェックポイント阻害薬で中皮腫が縮小し切除可能になるケースも

 診断された段階では手術が難しいと判断された場合でも、ニボルマブ+イピリムマブが奏効し中皮腫が小さくなれば、手術で病変を取り除ける可能性も出てきた。長谷川氏は、胸壁の広い範囲に病変が広がっていて切除不能と判断されたが、ニボルマブ+イピリムマブを3コース実施後、サルベージ(救援)手術を行い、病理学的に腫瘍が完全に消失した上皮型の50歳の女性の例を紹介した。

(長谷川氏講演資料より)

 

 下大静脈という血管まで病変が広がっていて切除不能と診断されていたケースでも、ニボルマブ+イピリムマブを3コース実施後腫瘍が縮小し、手術が可能になって病理学的に腫瘍が完全に消失した例があるという。

 長谷川氏は、「うまくいくケースばかりではありませんが、最初の段階で切除不能といわれても、あきらめる必要はないということです。私が研修医だった頃には肺がんは治らない病気といわれていましたが、今では治るのが当たり前になってきました。同じように、悪性胸膜中皮腫は治るようになりつつある病気だと考えています。もっと治療成績を改善するために、 新しい手術のやり方や新しい薬をうまく使うなど、いろいろな試みが進行中です」と強調した。

患者・家族同士の交流と情報提供を行う患者会も活用を

 NPO法人中皮腫サポートキャラバン隊理事長で悪性胸膜中皮腫サバイバーの右田氏は、「私たちは、中皮腫の患者さんとご家族が、希望を持って安心して暮らせることを目指しています。中皮腫と確定診断されたばかりの方もいれば、何年か前に診断された方も情報が欲しいと思います。私たちは人とつないだり、必要な情報、良質な医療、新たな治療法、安心な社会保障とつないだりということをキーワードとして活動しています」と話した。毎週水曜日13時30分から、中皮腫ZOOMサロンをオンライン開催し、患者・家族の交流、情報交換を行っているという。また、中皮腫に関する講演会、勉強会なども開催している。

(右田孝雄氏講演資料より)

 

 右田氏は、患者数が少ないために治療薬などの開発がなかなか進まない中皮腫の選択肢を1つでも増やすことを目指して、医師、患者、弁護士などが2022年1月に設立した一般社団法人中皮腫治療推進基金(https://www.mesothelioma-fund.com/)についても、次のように紹介した。「中皮腫を治る病気にするために、新しい治療薬や治療法の開発、あるいは、既存の治療薬の適応拡大のための治療研究ができる資金を募る基金です。皆さんのご協力をお願いします」。

 Q&Aセッションでは、司会の国立がん研究センター希少がんセンター・希少がん中央機関の加藤陽子氏が、「『悪性胸膜中皮腫の疑い』と言われたらどの科、どのような病院を受診したらよいのかという質問を患者さんからよく受けます。どうしたらよいのでしょうか」と質問した。

 後藤氏は、「悪性胸膜中皮腫は胸水がたまっているという症状から見つかりますので、肺がんや結核との鑑別診断が必要です。近くの呼吸器内科を受診するといいと思います。悪性胸膜中皮腫は患者数が少ないためになかなか診断がつかないこともあるのは事実ですが、近くの病院で手に負えない状況なら、専門病院へ紹介してくれるはずです」と回答した

 右田氏は患者の立場から、「
中皮腫だと分かったら、経験豊富な病院で治療を受けることをお勧めします。中皮腫に詳しい病院は少ないので、どこにかかったらいいか分からなかったら、私たちにお問い合わせください。個人的には、中皮腫を診てくれる病院がもっと増えて欲しいと思いますと語った。

 長谷川氏も、次のようにコメントした。「胸水がたまったからといって中皮腫とは限らないので、最初は地元の呼吸器内科専門医のいる医療機関を受診し、そこから専門の施設に行っていただくのがいいと思います。中皮腫の専門施設が少ないというのはその通りで、各地方に1カ所ずつぐらいは中皮腫の手術と薬物療法の経験が豊富な病院が必要です。そうかといって、多くの施設が中皮腫を診るようになると分散化してしまうので、適度の集約化がいいと考えています」。

 最後に、「悪性胸膜中皮腫は治る病気になりつつありますがまだ道半ば、3合目くらいです。我々も思い切り頑張りますので、患者さん、医療関係者、マスコミなどのパワーを集めて何とか治る病気にしていきましょう」と長谷川氏が呼びかけセミナーが終了した。