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【調査報道】市民に情報が閉ざされた百条委員会 非公開で隠されていた問題を独自取材~洲本市のふるさと納税をめぐる元職員の不正を調査~

委員長・副委員長の記者会見

特集は、373品の返礼品で違反が指摘された洲本市のふるさと納税についてです。洲本市議会は、2023年10月、強い調査権を持つ百条委員会を立ち上げたのですが… 

 

▶動画はこちら【特集】市民に情報が閉ざされた百条委員会 

 

①いつ開催? 

 

 市民へのお知らせはホームページで数行。日程記載のみ。誰が証人尋問で呼ばれるのか、市長や副市長ですら記載されず。

 

 ②どんなルールで運用? 

 

ルールを示した百条委員会の手引きは、記者クラブが公開を求める要望書を提出しても非公開。サンテレビが情報公開請求しても不開示。

 

 ③証人尋問の撮影は? メディアの撮影不許可。ライブ配信なし。36席の傍聴席が唯一(市長・副市長と元課長の証人尋問時のみ特設モニターあり)

 

 ④委員会に提出された記録資料 メディアは閲覧不可。記者会見で一つ一つ質問するしか方法がない。 このように、多くが非公開となっていて市民に情報が届いていません。

 

非公開で隠されていたある問題について番組が独自取材しました。

 

 

返礼品の洲本温泉利用券

 

2022年4月 洲本市 上崎勝規市長 「改めてここでお詫び申し上げます。どうも申し訳ございませんでした」 基準を超える高額な返礼品を寄付者に送っていたとして、洲本市は、2022年5月1日から2年間、ふるさと納税の制度の対象から除外。未使用の温泉利用券の支払いが今も続いているため、復帰のめどは立っていません。 このふるさと納税の中心的な業務を担っていたとされる人物が魅力創生課元課長です。指定取り消しに関連する多岐にわたる不正行為があったとして、2022年3月、停職6カ月の懲戒処分。その後、自主退職しています。 その半年後、市の第三者調査委員会がこの問題を調査しますが…。 

 

第三者調査委員会 上村敏之 委員長職務代理者(関西学院大学教授)

 

 「総務省の基準から見たら違反だらけでこれを見た時はがくぜんとしました。はっきりと言って終われませんでした。あまりにも問題が多すぎるわけです」 

 

基準違反の返礼品は373品。

 

最終報告書では、温泉利用券をめぐり、市がうその公文書を作成したり、外部の団体を巻き込んで偽装を図ったりした疑いがあること。

また、市が発行した商品券は管理番号が割り振られておらず、無断で持ち出されても分からない状況の中、元課長が不正に使用し、パソコンやプリンターを購入したこと。

さらに、返礼品のおせち料理については、条例で定められた議会の承認を得ずに申込書に偽の公印が押され、2000セット4800万円分が東京の企業に発注されたことなどさまざまな問題が指摘されていました。

 

非公開だらけ… 洲本市議会の百条委員会

証人尋問時に仕切り

2023年10月洲本市議会 「賛成全員により原案のとおり可決されました」 洲本市議会は2023年10月、元職員の不適切な事務処理などを調査する特別委員会 百条委員会を設置。しかし…。 2023年12月リポート 「きょうの証人尋問も非公開」 5月2日リポート 「きょうは市長と副市長の証人尋問なんですけども、きょうも中の撮影は許されませんでした」 5月25日リポート 「きょうも中の撮影は許されませんでした」 証人尋問の様子は一切撮影が認められず仕切りが。上崎市長は唯一仕切りを外されるも、撮影は認められませんでした。一方、公開を要望した証人がいます。洲本市の旧東京アンテナショップの元店長 田村伸也さんです。 田村伸也元店長 「リアルタイムで見られるものがないのは市民に声が届かない」 田村元店長は、元課長が店にある弁当などの商品を勝手に食べたり、親しい女性に公金で高級和牛を贈っていたことなどをサンテレビに内部告発。証人尋問で田村元店長は、事実であると証言。一方、元課長は、事実ではない。肉はお金を支払ったと証言しています。 田村元店長は、実名顔出しで記者の質問に応え、報道撮影の許可を事務局に求めても認められなかったと話します。 田村元店長 「あんなパーテーションもいりませんし、よく最近いろいろな地方自治体で言われている議会の見える化にならってテレビカメラを入れていただいたり、ライブ配信を入れていただいて市民の方にリアルタイムで見ていただけるような見える化ですよね」

弁護士「百条委員会は責任追及の伝家の宝刀 きっちりと運用していないのでは」

藤本尚道弁護士(ハーバーロード法律事務所)

神戸市の第三者委員会の副委員長を務めるなど行政問題にも精通する藤本尚道弁護士は―。 藤本弁護士 「公開しない。撮影を許さないということによって真実を引き出す効果はありうるんです。だけど、本人が映してほしい。自分の言っていることをきちっと聞いてほしいと思っている場合にそれを許さない。つまり公開しないというのは何か不思議な気がしますね」 百条委員会には強い調査権があり、証人を呼んで証言を求めるだけではなく、この問題に関連する企業や洲本市から記録資料の提出を求めることもできます。その内容を積極的に公開するようサンテレビが加盟する淡路島記者クラブが委員会に要望書を提出しますが。 木戸隆一郎委員長 「その点について委員の中で協議をしましたけども、法律にのっとって運用している中でそのような形ですることは難しいという結論を得ているので、大変申し訳ないですけども、そういった形でお願いしたい。当事者間でしか見ることができないというような『法律上の運用』もあるので」 「法律上の運用」という見解について藤本弁護士は―。 藤本弁護士 「法律が公開しなさいと書いていないからしなくてもいいだろうというそういうノリではないでしょうかね。だからそれで俺たちは法律に違反していない。だからのっとってやっているんだという一つの言葉のあやですね。議会が追及する問題。市民国民に対して公開していくというのは一つの大きな流れだと思うんですけどね。それをする気がないというだけのことです」 どのようなルールで百条委員会を運用しているのか。淡路島記者クラブは、ルールを記した手引きも公開を求めましたが、中身は明かされませんでした。サンテレビは、市議会と洲本市に対して、手引きの情報公開請求を行うも「行政文書にあたらない」として開示されませんでした。 藤本弁護士 「国民市民の知る権利に奉仕する形でマスコミが動いているわけですから、それに対して公開しないという動きというのは市民国民の知る権利を害している。これだけ停滞低迷しているということは議会そのものにやる気がない。本気度が疑われると私は思っていますね」

 

 

ぜ傍聴席以外で…

市民提供:5月2日午後5時55分ごろ市役所内

こちらは、5月2日午後5時55分ごろ、洲本市民が市役所内の様子を撮影した写真です。市職員が百条委員会の映像を視聴しているように見られます。この時間は、洲本市の上崎勝規市長が百条委員会の証人尋問で証言していた時間帯です。証人尋問の様子は、メディアの動画撮影は認められておらず、ライブ配信やケーブルテレビでの放送も行われていません。市民が情報を得るためには、傍聴席に行くしか手段はありません。この日、傍聴席が満席になったため、議場がある市役所6階の待合いフロアでも、百条委員会の映像を視聴することが認められました。市議会事務局によりますと、この日、傍聴が可能だったのは、「傍聴席」あるいは、「6階の待合いフロア」の2カ所だったということです。市民は限られた場所でしか傍聴ができない一方で、市職員は、庁舎内で百条委員会の映像を見られる環境だったことになります。

非公開で隠されていた問題を独自取材 疑惑のパソコンの背景

木戸隆一郎議員(委員長)

非公開だからこそある問題が生じました。委員会に提出された記録資料の中身について、記者会見で記者が委員長に質問しましたが、資料に書かれた内容と異なる回答がありました。 【2月22日 記者会見1回目の質問】 Q私たちが見ることができないですので、一つ一つ確認したいんですけども 木戸委員長「パソコンについては、パソコン、プリンターについては1台ずつ」 Qパソコン、プリンターは1台ずつ 木戸委員長「1台ずつ」 Qパソコンは 木戸委員長「1台です」 Qそれが請求としてある 木戸委員長「商品券を使用して不正に購入したパソコン」 質問したのは、市内の文具店が百条委員会に提出した記録資料について。木戸委員長は、元課長が洲本市の商品券を不正に使用して購入したパソコンは「1台」と回答しました。しかし…

浜辺副市長が証言 元課長が不正入手したパソコンは計3台

 

5月2日 サンテレビニュース

ニュースを読むアナウンサー 「浜辺副市長は、魅力創生課の元課長が合わせて3台のパソコンを不正に取得していたと証言しました」 5月2日の百条委員会で浜辺副市長は、元課長が計「3台」のパソコンを不正に入手したと証言。このうち1台は、商品券の不正使用ではなく、請求書を書き換えて不正に入手したことがサンテレビの取材で分かっています。改めて質問をすると。 【5月2日 記者会見2回目の質問】 Q百条委員会が資料請求をされて、その資料の中には2台と書かれているのでは 木戸委員長「いえ、それはなかったです。なかったです。はい。請求した時点でその1台しかなかったのかどうかということはあるかもしれませんけど、請求した中では1台だけでした」

 

 

メディア閲覧不可の記録資料 閲覧した他の委員にも取材

聞き取りをもとに再現した資料 2台パソコンが記載

 

記録資料は委員もコピーができないルールのためサンテレビは、他の委員にも提出資料について聞き取りを行いました。 濱野隆委員(議員) 「2台と書いてありました。私は文書を見て、パソコンとプリンターとパソコンと記載があります」 2台と回答した濱野委員にその記録資料を再現してもらいました。すると、市内の文具店から委員会に送られた記録資料にはもう1台のパソコンが。 Q実際の記録提出は「2台」と書かれていたんじゃないですか? 木戸委員長「改めて記録提出の要求を見ると、正確に言うのがちょっと難しい部分があるんですけども、商品券を使用してパソコンを購入したとみられるのは2台なんですけども、請求書が未発行とか。その部分を浜辺副市長が商品券をその分をお金を渡した。商品券を引き上げた経緯もあるのでその部分で少し認識の違いもあって正確に伝えられなかった部分があるかもしれないですけども、平たく言うと2台」 (再現したフリップを木戸委員長に見せる) Q委員の証言から再現をした。これは記録の提出要求のあったものだが、2台と書かれているのであれば、私たちに2台という説明をちゃんとしなければいけなかったのでは 木戸委員長「まずこれをこういう形で出すのがいいのか私は今判断を持ち合わせていません。記録の提出があったものを他の方に教えてこういう形で出すというのがよいのかどうか判断がついていませんので。これについて合っているのか合っていないのかというのは、私は申し上げられない」 Q違う回答をしているじゃないですか。1台と答えたじゃないですか。私たちは見る手段がないんですよ。そういうルールが作られたので。 木戸委員長「2月の段階で私がどういう風に申し上げたか。正確に教えていただかないと」 Qあえてそこをお話しされなかった?その理由は何ですか? 木戸委員長「話したのではなくてきょう、きちっとお調べしてきょうこうやって話をしています。別に隠すということはしていません」

 

浜辺副市長「私が代わりに45万円を支払った」

浜辺学副市長

 

商品券を使って不正入手したもう1台のパソコン。浜辺副市長が代わりに代金を支払ったという背景がありました。元課長は、「何をもって3台と言っているか分からない。商品券で勝ったのは1台」と証人尋問で証言しています。浜辺副市長は、もう1台のパソコンについて「元課長が退職時に持っていった。1年以上未払いになっていて、このパソコンが ある職員のところに突然送られてきた。どう処理をするかを考えた。公社でも使っていたため、公社の理事長の私個人が代わりに45万円を支払って、450枚の商品券(1枚1000円)は文具店から市に返却された」と証言しています。 キャスター 「浜辺副市長がやるべきだったのは、自らが弁済することではなく、刑事告発だったのではないでしょうか。このもう1台のパソコンの情報がメディアに明かされていませんでした」

サンテレビジョン