たんぽぽ舎です。【TMM:No5021】地震と原発事故情報より

 

ドイツの再生エネルギーはフランスの原発に依存しているのか
ちがう!むしろドイツは電力を輸出している

 

 土屋芳久

 「ドイツが原発を全て廃止し、再エネを増やせるのは、フランスか
原発の電気を輸入しているからだ。ドイツのエネルギー政策は、結局は、
フランスの原発に依存している」という批判をよく聞きます。

◎ それでは、ドイツの電力の貿易を見てみます。
 ドイツは2003年以降、電力の輸出が輸入をずっと上回っており、特に、
2015~18年の4年間は輸出量が輸入の2倍を超えました。
 理由は、ドイツの電気(とくに再エネの電気)が安くて、競争力が
いからです。

◎ しかし、その事実を見ても、原発の既得権益を死守したい人たちは
「ドイツの対フランス・電力貿易は赤字」と言います。
 ドイツの対フランス・電力貿易が赤字の年もありますが、その人たちの
主張は「ヨーロッパには国際的な電力網が張り巡らされ、電気という“
同質のもの”が行き来している」という実態を無視しています。

◎ 各国の電力会社は大小さまざまで、民営、公営(地方自治体が運営
など)、国営などがあります。
 それらの電力会社が、ヨーロッパをまたぐ国際的な電力市場で、あ
時間帯に足りない電気を(なるべく安く)買おうとします。
 一方、余っている電気、または供給可能な電気を持つ事業者は(な
べく高く)売ろうとします。当然、電力も市場原理によって取引されて
います。
 買ったり売ったりする電気が、ノルウェーの水力発電の電気だったり、
フランスの原発の電気だったり、自国の別の電力会社の石炭火力や風力
発電の電気だったりする、というだけです。

◎ ドイツは電気が足りないから、フランスに電気を売ってくれと頼ん
でいるのではありません。
 ヨーロッパ各国の多くの電力会社は、国際的な電力市場で「電気と
う無国籍で同質の商品」を売り買いしています。
 国際的な電力市場で、ドイツのD電力会社は、量と価格が折り合えば、
フランスのF電力会社から電気を買い、ドイツの顧客に提供します

◎ 電力市場に流れているのは“電気”という同質のもので、デンマー
の風力発電の電気も、フランスの原発の電気も、全く同じ質です。
 D社はF社の電気が安ければ買い、高ければ、別の電力会社から買
だけです。ドイツは、他から買えばいいだけなので、フランスの電気が
なくても、全く困りません。(まず、ドイツは電力の純輸出国です

◎ 見るべきことは、フランスの原発の発電コストは高く、産業として
成り立っていないという事実です。
 ヨーロッパ諸国は国際的な送電網で結ばれているので、フランスが
い原発の電気を提供できるならば、フランスの原発企業は大きな利益を
得るはずです。
 しかし、コストが高いフランスの原発の電気は、原価より安く売っ
いるので、損失が増えています。
 準国営の原発企業アレバは経営破たんし、オラノという企業名に変
て、政府の支援で何とか生き延びています。

◎ 原発の発電コストが安ければ、アレバは経営破たんしません。
 フランスは、以前は、原発の電気が75%を占めていましたが、今は67
%くらいに下がり、再エネの比率を2050年に50%に高める目標を掲げて
います。
 これらの事実が示すように、原発は極めて危険な上に、コスト(電
代)も高く、存在理由が何もない電源になりました。
 再エネが増えているドイツのあら捜しをするより、この問題の本質
しっかり考えることが大切でしょう。

◎(フランスの原発は大規模な改修中です。2022年に事故や故障が重なり、2.5兆円もの電力を輸入したので、電力貿易は1.2兆円近い大赤字になりました。
 フランスはドイツの再エネ・電力に大きく助けられましたが、極めて高い電力料金を支払う羽目になりました。

それまで電力の純輸出国だったフランスがヨーロッパの電力市場で大量の電力を買いまくったので、高騰していた電力料金をさらに高くしました。

西欧では、原発、とくに古い原発は「不安定電源」と考えられるようになりました)
      (『つゆくさ通信』2024.3.20 第183号、
   発行「脱原発大分ネットワーク」より了承を得て転載)