日刊IWJガイド・非会員版「失業率44%の『怒れるインドの若者』が不満のはけ口に、弱者に対して差別的な暴力をふるう! 順風満帆に見えるインドの実情!」2024.4.27号~No.4212

 

はじめに〜モディ首相率いるインド人民党が掲げる「ヒンドゥー至上主義」の闇第5弾! インド独立系メディア『インディア・フォーラム』で、チャンディーガル開発交流研究所の教授兼所長であるプラモド・クマール氏が、失業率44%の「怒れるインドの若者」が、不満のはけ口に、下位カーストや少数民族などの社会的弱者に理不尽な差別的暴力をふるっていると警鐘! 経済成長率は中国を上回る7%台! 人口も14億人と中国と並び、依然として増加中と順風満帆に見えるインドの実情!

 

 おはようございます。IWJ編集部です。

 

 「世界市場最大の民主主義の祭典」と、インドの選挙管理委員会が自画自賛する、インド下院の総選挙が4月19日から進行中です。圧倒的な勝利を予想されている与党・インド人民党(BJP)は、「ヒンドゥー教至上主義」を掲げ、インド国民の8割を占めるヒンドゥー教徒の支持を集めています。

 

 インド人民党の主要な支持母体が、民族義勇団(RSS)です。民族義勇団は、イスラム教徒との対立を煽り、少数派コミュニティーに対して迫害を行っています。また、ヒンドゥー教にもとづくカースト制度の維持・強化を支持し、アーリア人種の優越性を説いたナチスを肯定し、ヒットラーをも公然と称賛しています。

 

 また、民族義勇団は、1948年に「インド独立の父」であり、「非暴力、不服従」を説いたマハトマ・ガンジーを「イスラム教に対して融和的だ」として暗殺しました。いったんはこの民族義勇団は発動を禁じられますが、すぐ翌年にその禁止は解かれ、民族義勇団は、活動も、名称もすべて継続し、その「政治部門」であるインド人民党は、党勢を拡大して、権力を掌中におさめ、現在に至っています。「非暴力」を説いたガンジーを暗殺した、という点は、この民族義勇団と、インド人民党の原点と本質が表れていることは、忘れるわけにはいきません。

 

 インド独立系メディアである『インディア・フォーラム』は、総選挙前の3月11日、「インドにおける若者の怒りと宗教的憎悪の現在」という記事を出し、非常に高い若者の失業率に対する若者の怒りが、「自殺、薬物中毒、家庭内暴力から宗教的過激化まで、さまざまな形」で出現していると、指摘しました。

 

※Youth Anger and Religious Hate in India Today(The India Forum、2024年3月11日)

https://www.theindiaforum.in/forum/youth-anger-and-religious-hate-india-today

 

 「インドの若者たちは、宗教的象徴の神聖性を侵害し、ダリット(カーストの最下位の奴隷階級であるシュードラより低い、アウトカーストとされる被差別民)や民族的・宗教的少数派を強制的に排除し、征服することで怒りを発散している」として、最近のインドの新聞の見出しが例として引かれています。

 

 「ジャルカンド州でジャイ・シュリ・ラームを唱えなかったとして若者たちが9年生(高校1年生相当)の生徒を攻撃」。

 

 2022年3月24日付『サブランギンディア』紙は、右翼過激派イデオロギーに傾倒する若者たちが、ジャールカンド州ジャムシェドプルで9年生のイスラム教徒の生徒を、生徒が「ジャイ・シュリ・ラーム」を唱えることを拒否したために暴行した、と報じられています。

 

 「ジャイ・シュリ・ラーム」とは、古代インドの叙事詩ラーマーヤナに登場するラーマ神を讃えるマントラです。

 

 暴行を働いた若者達は、ウッタル・プラデーシュ州の州首相ヨギ・アディティアナート氏のビデオを、イスラム教徒の生徒に見せていた、と指摘されています。アディティアナート氏の7年間の在職期間中、イスラム教徒に対するリンチやヘイトスピーチが、激化しました。

 

 アディティアナート氏は、ヒンドゥー教僧侶で、モディ首相と同様、インド人民共和党(BJP)の大衆指導者でもあり、大きな影響力を持っています。「公共集会を利用して、反イスラムのヒステリーを煽る分裂政治家」という批判も受けています。

 

※Jharkhand: Youths attack Class 9 student for not chanting Jai Shri Ram!(SABRANGINDIA、2022年3月24日)

https://sabrangindia.in/jharkhand-youths-attack-class-9-student-not-chanting-jai-shri-ram/

 

 「カルナータカ州で、ヒンドゥー教の少女と旅行したイスラム教徒の大学生が専用バスで殴られ、突き飛ばされた」。

 

 『インディアン・エクスプレス』紙によると、カルナータカ州沿岸部のダクシナ・カンナダ地区で、自動人力車で旅行中だった、イスラム教徒の若者とそのヒンドゥー教徒のガールフレンドが、待ち伏せをしていた3人の暴漢に襲われました。

 

 3人は、カップルに名前を尋ね、彼らが異なる宗教に属していることを知ると、イスラム教徒の若者の顔と頭を殴り、カップルを罵倒しました。

 

※Karnataka: Muslim youth beaten up for travelling with Hindu girlfriend(The Indian Express、2022年4月6日)

https://indianexpress.com/article/cities/bangalore/karnataka-muslim-youth-thrashed-7856088/

 

 「マディヤ・プラデーシュ州で、『イスラム教徒の疑い』で身体障害のある高齢者が殴り殺されて発見」。

 

 2022年5月21日付『サブランギンディア』紙によると、マディヤ・プラデーシュ州ニームチで、65歳の障害のある高齢者が執拗に殴られている様子を映したビデオが、SNS上で拡散されました。

 

 体格の良い中年男性が、「お前はイスラム教徒か? 身分証明書を見せろ」と迫りながら、高齢男性を繰り返し平手打ちしてます。高齢男性は、後に死亡しているのが発見されました。亡くなった高齢男性は、イスラム教徒ではなく、仏教と同時代に生まれた、より禁欲的で長い伝統をもつジャイナ教の信徒であったことが明らかになっています。

 

 襲撃犯は、マディヤ・プラデーシュ州のインド人民党(BJP)と関係があったことがわかっています。

 

※Madhya Pradesh: Disabled senior citizen ‘suspected of being Muslim’ thrashed, found dead(SABRANGINDIA、2022年5月21日)

https://sabrangindia.in/madhya-pradesh-disabled-senior-citizen-suspected-being-muslim-thrashed-found-dead/

 

 「ウッタルプラデーシュ州の結婚式で、食べ物に触れたとしてダリットの若者が殴られた」。

 

 「ダリット」とは、差別的な「不可触民」という言葉のかわりに用いられるようになった、「壊されし者達」あるいは「抑圧されし人々」という意味です。インドでは、4つのカーストの、そのさらに下、「アウトカースト」という最下層に相当します。

 

 2022年12月12日付『タイムズ・オブ・インディア』によると、18歳のダリットの若者・ララさんが、村の結婚式で自分のための皿を手に取ったところ、主催者の家族らが、ララさんを殴りました。助けに入った兄も殴られ、バイクを破壊されました。

 

 ララさん達の姉妹が、警察に訴えたところ、それを知った加害者らは、ララさん達家族の家に押し入り、ララさんを殴り、家を壊しました。

 

※In Uttar Pradesh, dalit youth 'abused and thrashed' for touching dishes at Gonda wedding(The Times of India、2022年12月12日)

https://timesofindia.indiatimes.com/city/lucknow/in-uttar-pradesh-dalit-youth-abused-and-thrashed-for-touching-dishes-at-gonda-wedding/articleshow/96158430.cms

 

 「ラジャスタン州の井戸から、水を汲んだ指定部族の男がリンチを受けた」

 

 2022年11月8日付『ニュー・インディアン・エクスプレス』によると、指定部族の46歳の男性が井戸から水をくみ上げたという理由で、集団に襲われ、撲殺されました。

 

 「指定部族」とは、インド社会においては、人口第1位のヒンドゥー教や、第2位のイスラム教に属さず、固有の文化を維持してきた少数民族コミュニティを指します。

 

 また、「指定カースト(Scheduled Castes)」は、先述した「アウトカースト」の「不可触民」を指します。

 

 加害者らは、井戸で水を汲む被害者を罵り、被害者の家を少なくとも3人以上の集団で襲撃し、男性とその息子を棒で殴りました。

 

 加害者らは、カースト差別主義者でした。

 

※46-yr-old tribal man lynched over drawing water from a tubewell in Rajasthan(The New Indian Express、2022年11月8日)

https://www.newindianexpress.com/nation/2022/Nov/07/46-yr-old-tribal-man-lynched-over-drawing-water-from-a-tubewell-in-rajasthan-2515933.html

 

 「マディヤ・プラデーシュ州:暴徒がアディヴァシ族の女性を性的暴行、15人逮捕」。

 

 2022年3月14日付『スクロール』紙によると、マディヤ・プラデシュ州アリラージプール地区で、アディヴァシ族の女性2人を性的暴行した疑いで、男15人が逮捕されました。

 

 事件は、この地域の少数民族である、アディヴァシ族が祝う祭り「バゴリヤ」の最中に起きました。

 

 被害者の女性達は告訴しませんでしたが、暴行の動画がSNSで共有され、警察が逮捕に動きました。

 

 アディヴァシ族の写真を撮った、写真家のアマン・チョタニ氏によると、「アディヴァシ」は、「原初の住民」という意味です。アディヴァシ族は、645民族に及ぶともいわれるインド先住民族の総称で、約1億400万人、インドの人口の8.6%を占めています。

 

 国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナルは、先住民族であるアディヴァシの権利獲得や彼らの保護を長年訴えてきました。

 

※Madhya Pradesh: Mob sexually assaults Adivasi woman, 15 arrested(Scroll、2022年3月14日)

https://scroll.in/latest/1019426/madhya-pradesh-mob-sexually-assaults-adivasi-woman-three-arrested

 

※インドに生きる先住民族〈アディヴァシ〉の今(VICE、2019年9月27日)

https://www.vice.com/ja/article/mbmgeq/this-photographer-captures-the-last-living-tribes-of-india

 

 見当違いの方向に怒りをぶつけている「怒れるインドの若者達」は、イスラム教徒、ダリット、社会的弱者、少数民族への虐待を強めるだけではなく、高い失業率に抗議するため、国会の警備を破り、議場の井戸に飛び込むなどの乱暴も働いています。

 

 上記『インディア・フォーラム』は、「若者達の怒り」の原因には、若年層の非常に高い失業率があると指摘しています。

 

 『インディア・フォーラム』は、独立系シンクタンクの「インド経済監視センター」を引き、2023年10-12月期、20-24歳の失業率は44.49%に上昇した、と指摘しています。

 

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