最終回 日本の地震、噴火リスク、温暖化

   …まだ謎が多い地球
 

    この連載を足場にさらに謎がとけることを願う
 

 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その537

 島村英紀(地球物理学者)


 今回で連載は最終回を迎える。
 2013年の連載開始から、あっという間の11年だった。

 
これから首都圏直下型地震も南海トラフ地震も起きるに違いない。
震を起こすエネルギーが日々たまっていっているからだ。

 

 これら以外に能登半島地震や熊本地震のような「思わざる」ところ
地震が起きるかもしれない。地震国、ニッポン。

 

 残念ながら、どこにどのくらいたまっていて、あと、どれだけ「持つ」のかは、いまの地震学ではわからない。地震学は日進月歩しているが、まだ道は遠い。数日かもしれないし数年、あるいは、ひょっとすれば数十年後かもしれない。

 そのうえ
都会ほど地震に弱いこともある。
 東京都が2022年に発表した首都直下地震に関する「地域危険度」を発
表した。
 
荒川、足立、墨田、葛飾など23区東部の6区の街が、最も危険度の高
いランク5のうち4分の3を占めた。

 いずれも
荒川や隅田川が運んできた堆積物が厚く積もった低地帯
る。地震のときに震度が大きくなるところだ。

 そのほかの地域も枕を高くしては寝られない。
 
耐火性の低い木造住宅が密集している環状7号線の内側を中心に
ドーナツ状にある地域
だ。

 

これらには品川区南西部、大田区中央部、中野区、杉並区東部などがある。
 これらの地盤は東京東部ほど悪くはないが、地震のときの火災が燃
広がる恐れが大きいので危険度上位にランクされている。

 

 東京や大阪などの都会には「木密地帯」といわれる古い木造住宅が
集した地帯が多い。

 
火山もまだ分かっていないことが多い。
 

 世界では火山があるとは思われていなかったところで噴火が始まる
とは珍しくはないし、日本でも
宮城県の安達火山、秋田県の一ノ目潟(
いちのめがた)、山形県の肘折火山、北海道函館沖の銭亀火山など、一
度だけの噴火の例もある。

 
活火山・富士山もこの300年は噴火がないが、いつ噴火しても不思議で
はない状態にある。

 もちろん観測はしている。しかし、300年前の噴火の前にどういう異常現象が起きたのかをちゃんと追跡できるデータはない。
 

 一方で地球温暖化の問題も大きい。地球は金星のように生物が住め
くなる400度を超える灼熱の世界になってしまうのだろうか。


 
そもそも宇宙に浮いている巨大な球の一つである地球はどうなって
まうのだろう。

 

 「天井がない」ことさえ忘れている現代人にとっては隕石(いんせき)
が近くに落ちてくることも日常生活にかまけて想像がつかないだろう。

 

 要するに宇宙に浮いている球の一つである地球のことには、まだ謎
多い。

 この連載を足場にしてさらに謎がとけることを願う。

 (島村英紀さんのHP 
http://shima3.fc2web.com/
 「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より 3月29日の記事)