千葉で断続的地震と「スロースリップ」の謎
日本の他の場所でも起きている
数千年前の巨大地震にとっての「空白」地帯
「警戒せよ！生死を分ける地震の基礎知識」その535
島村英紀（地球物理学者）
千葉県の外房沖（いすみ市・茂原市のすぐ太平洋沖で）奇妙な地震
続いている。気象庁によると、千葉県東方沖を震源とする地震が先
日から今月12日までの間に計33回に達した。マグニチュード（
のところ５.２どまりで陸上での最大震度は４までだが、もっと大
のが来ないともかぎらない。
３月11日で東日本大震災（Ｍ９）から13年。再びこのような状
きるのかと地元では戦々恐々だ。千葉県内のスーパーで水や非常食
が売れている。新型コロナウイルスが流行し始めた2020年には
不足する噂が流れ、トイレットペーパーやティッシュなどの買い占
相次いだ。
ところで、これらの地震がよくわからない。
なぜ、ここで起きたのか。
もっと大きな地震に結び付く可能性があるのかは現在の地震学から
分からないのだ。
国土地理院のある研究者は陸側のプレートと海側のプレートの境界
ゆっくりとずれ動く「スロースリップ」が起きていると主張する。
スロースリップとは断層の境界がゆっくり動くもので、低い周波数
出るのが地震波の特徴だ。
海底地震計を近くに置いて丁寧に調べないと分からない。ここ千葉
の外房沖の現場には海底地震計は置いていない。
これまでにスロースリップが確認されているのは、千葉県の外房沖
は1996年５月、2002年10月、07年８月、11年10月
それぞれが２年から６年余りの間隔で起きているという。それまで
大きな地震は起きなかった。
今回の間隔は５年８カ月となる。過去ではおおむね１０日前後、観
されている。
なぜ、千葉県の外房沖で起きたのか。スロースリップがなぜ、ここ
けで起きたのか、なぜ数年ごとに起きるのかはナゾだ。
しかもスロースリップは日本の他の場所でも起きている。いままで
大きな地震はめったに起きなかった。
例えば、震源の真上にある三ケ日（静岡県）で東海地震（Ｍは想定
８＋）が起きる、すわ、と思いかけたこともあったが、なにごとも
なかった。
もともと房総沖には巨大地震が何回も襲ってきたものの、人口や文
のせいか、京都や奈良に比べて昔の地震は知られることは少ない。
年以上たどるのは難しい。
いまの首都圏に近いとはいえ、数千年前の巨大地震にとっての
「空白」地帯なのである。
（島村英紀さんのＨＰ
「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より ３月15日の記事）
