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EUの守る利益「アマゾンより優先」 オンライン広告情報、開示命令

2023年3月1日、ベルギー・ブリュッセルの欧州委員会本部に掲げられた欧州旗=ロイター

 

 欧州連合(EU)の最高裁にあたる欧州司法裁判所は27日、オンライン広告に関する情報の開示義務を取り消すよう求めた米アマゾンの申し立てを棄却した。EUが守ろうとしている利益が「アマゾンの利益よりも優先される」と判断した。 

 

 2022年に発効したEUの「デジタルサービス法」は、アマゾンを含め、域内の月間利用者数が4500万人を超える巨大プラットフォーム企業を対象に、利用者保護などを義務づける。その一つが、「広告のリポジトリ」の開示だ

 

  特に、利用者によって広告を出し分ける「ターゲティング広告」については、広告の内容や、広告を出し分ける際に使ったパラメーター(変数)などを開示しなければならない

 

  これに対しアマゾンは、「私的な企業活動の尊重と事業遂行の自由という基本的権利が制限される」として、開示義務の取り消しを申し立てた。下級審にあたる欧州一般裁判所は23年9月、アマゾンの主張を支持し、開示義務の一時停止を命じた。判決を不服として、行政府の欧州委員会が上訴していた。 

 

 欧州司法裁は27日の判決で、「アマゾンの存続や長期的な発展が危うくなることは証明されていない」と判断。下級審の判決を覆し、アマゾンに開示義務を履行するよう命じた。さらに「開示義務の一時停止は、デジタルサービス法の目的の達成を数年間遅らせることになる。EU立法府が守る利益はアマゾンの利益よりも優先される」と結論づけた。(ブリュッセル=牛尾梓)

朝日新聞社