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「津田沼戦争」を勝ち抜いたヨーカドーが閉店へ…空き店舗のまま“棚ざらし”の恐れも(重道武司)

イトーヨーカドー津田沼店(C)日刊ゲンダイ

 

【経済ニュースの核心】 「戦争」の遺構──と化す可能性もゼロとは言い切れない。  無論、戦争と言っても軍隊を動員して戦火を交える本物の戦争ではない。千葉県習志野市から船橋市東部にかけてのベイエリアを舞台に流通大手各社が価格と品揃えなどを巡って激戦を繰り広げた顧客争奪戦で通称「津田沼戦争」と呼ばれている。

 

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 それを「勝ち抜いた」(業界筋)とも言われた「イトーヨーカドー津田沼店」(習志野市)の閉店が固まった。すでに従業員などへの説明会が行われており、4月にも告知。9月に営業を終える。  店舗を運営するヨーカ堂の親会社、セブン&アイ・ホールディングス(HD)幹部によれば、後継店舗は未定。土地・建物のオーナーは新京成電鉄だが、「まだ後継テナント探しに着手したばかり。メドは立っていない」と関係者。要するに空き店舗のまま、たなざらしにされる恐れも拭い切れないわけだ。 

 

 実際、千葉県ではJR常磐線柏駅東口で営業していた「そごう柏店」が2016年9月に閉店。駅前の一等地にもかかわらず後継テナントが決まらず7年余りにわたって放置されてきた。23年6月になって太田和美・柏市長が買い取りの意向を表明。ようやくこの2月になって物件の所有者である三井不動産との間で跡地(約5200平方メートル)取得で合意したが、この間、東口駅前の賑わいは消失。「人流を変えた」(地元不動産業界関係者)とさえ言われている。 

 

 ヨーカドー津田沼店は1977年に開業した。地下1階地上8階建てで、店舗面積は約1万6400平方メートル。新京成線新津田沼駅と直結する好立地にあり、食料品、日用品から衣料、玩具などまで扱う総合スーパーだ。さらには「ニトリ」「洋服の青山」「ダイソー」といった専門店や「サイゼリヤ」などの飲食店もテナントとして軒を連ねる。

 

 

 ■かつては全店舗で売り上げトップだったが…  周辺にパルコ、丸井、高島屋、ダイエーや西友、イオンなどが相次ぎ出店し覇を競ったのは70年代後半から。そんな中、ヨーカドー津田沼店は80年代から90年代にかけ10年以上にわたって同社の全店舗中売上高トップの地位を死守し続けた。  しかしその後、丸井が去り、高島屋が去り、昨年2月にはパルコも撤退した。そして今度はヨーカ堂まで。つわものどもが夢の跡というべきか、盛者必衰というべきか……。 

(重道武司/経済ジャーナリスト)