ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

 

●根津公子の都教委傍聴記(2024年2月15日)

当事者の苦情を無視して突っ走る中学校英語スピーキングテストとは?

 

 今日の定例会の議題は公開の報告事項が5点。①「今年度中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)の実施状況について」 ②「今年度フリースクールに通う不登校児童・生徒支援調査研究事業報告(途中経過)について」 ③「来年度不登校施策について」 ④「今年度都児童・生徒体力・運動能力、生活・運動習慣等調査結果について」 ⑤「インクルーシブな学び東京コンソーシアムの設立について」。

 非公開議題は議案に懲戒処分が2件(重い処分)及び報告にも懲戒処分が、そして、「いじめ防止対策推進法」第30条1項及び第28条に基づく報告(「重大事態」のいじめ)がありました。

 都教委HP、2月14日発表(=昨日)の懲戒処分を見ると6人の処分が記載されています。全員男性。うち2件は一人が18歳以下の女性に性行為をした、もう一人は小学生のでん部を触ったとのことでどちらも懲戒免職。2件は自転車窃盗。4人のうち、40代はじめの2人は主任教諭。高校のスクールカウンセラー職にある人は「生徒に不適切な内容のメッセージを送信。私的な内容のメッセージ」だったとのことで減給1/10 1月処分。都教委はスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの増員を掲げていますが、この人は免職どころか停職にさえならなかったのですから、この高校で今も働き続けているということです。この人に適切なカウンセリングができるのでしょうか。「君が代」起立をしなかった筆者には、都教委は2005年から2009年まで停職処分を出し続けました。ここには、生徒に被害を与える者よりも都教委に盾突く者が重罪、許さんという都教委の姿勢が明確に表れていると思います。

 

①「今年度中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)の実施状況について」

  「隣の生徒の音声が大きかったので私の録音機に入ったのではないか」「採点基準があいまい」「点数の配分が問題」(=下に示すA~Fを参照)等々の苦情や「中止を求める」要請がいくつも都教委に寄せられてきたスピーキングテストですが、今年度の実施状況について都教委は次のように報告しました。

 

 実施結果:平均スコアは65,2(昨年度は60,5)%。段階別評価の分布は、スコア100~80のA(入試での得点20点)が25,3(昨年度は16,8)%、スコア79~65のB(16点)が29,2(25,6)%、スコア64~50のC(12点)が26,0(31,4)%、スコア49~35のD(8点)が11,9(16,9)%、スコア34~1のE(4点)が6,5(8,3)%、スコア0のF(0点)が1,1(0,9)%。スコアが昨年よりも良くなったのは、中学校での取組が進んだことと子どもたちの意欲向上による、というものでした。

 ただ、機器の不具合(疑い例を含む)、イヤーマフ・イヤホンの装置関連、現場対応の誤りなどがあり60人の生徒に支障が生じた。その生徒に対し「説明・謝罪の上、希望者に対し、再度の受験機会を設定する」とのことです。過去形の言葉ではありませんでしたので、これから?なのでしょう。都立高の受検は来週です。大ごとではありませんか。(追記;東京新聞16日朝刊がこの問題を報道しており、それによると、「都教委は、再試験の実施日について『個人の特定につながる』として明らかにしていない」と書いています。)

 報告に対し教育委員の発言は「1年生からスピーキングテストをすることでテストの受け方を周知徹底させてほしい」「グローバル人材育成を目指し、東京の子どもたちが将来外国に行った際に日本の文化などについて言えるようにしてほしい」等々、推進する発言ばかりでした。その中で気になった発言が一つ。「都教委は英語の4技能(読む、書く、聞く、話す)すべてに力を入れている。読む、書くに力を入れるのは当然のこと。話す(スピーキング)だけが問題にされているが、スピーキングにも力を入れているのだと確認したい」という北村教育委員の発言です。当事者である中学生・保護者、市民諸団体がスピーキングテスト中止を求めてきたことを意識しての、あるいは多少は脅えての発言だと私には思えました。声をあげ続け中止にもって行かなくては、と思いました。

 段階別得点及び11月26日に受験できなかった生徒は12月17日に受験する、さらには支障のあった60人が再受験するといった不公平・不公正なスピーキングテストを都教委は、反対の声を無視してまでなぜ強行するのでしょう。なぜ、都立高校入試に加点する(*)のでしょう。子どもたちの英語力を高めたいのであれば、日々の授業に英語を母語とする正規教員をプラス配置すればいいのです。それには予算がかかり過ぎる?いや、民間企業に丸投げすることによって都教委に利益がある?あるいは、学校教育を民間に移行させる?…などと思ってしまいます。
(*)都立高校入試の得点配分は学校によってまちまちですが、多くの普通科高校では次のようになります。 学力検査500点(100点×5教科)+内申書300点(9教科)+スピーキングテスト20点=1020点。

 

②「今年度フリースクールに通う不登校児童・生徒支援調査研究事業報告(途中経過)について」

 昨年度から今年度までの2年間、都内公立小中学校に在籍する不登校の子どものうち、フリースクールに通う子ども及び保護者に調査に協力してもらい、来年度末に支援のニーズ等について有識者会議の助言を受ける。並行して、「学校外の子供の学び・居場所の創出」推進チームで不登校の子どもの学校外での学びのあり方等について検討していくとのこと。推進チームは都子ども政策連携室、生活文化スポーツ局、福祉局、教育庁から成るとのことです。

 

 今年度の子どもへの調査の一つ、「フリースクールで楽しさや興味を感じる活動は?」に対する回答が紹介されました。その1位は「やりたいことを考え、計画して行なう活動」で1000人中979人。2位は「施設内での文化・芸術活動」、3位は「自然体験」。下位は「授業の形の学習」や「施設外での文化・芸術活動」、「オンライン学習等」。 「やりたいことを考え、計画して行なう活動」が楽しいという子どもの声に、北村教育委員から、「今の学校教育がなすべきことへの示唆とも取れる」と発言がありました。まさしくそう。不登校は学校教育が、都教委が生み出していることの自覚を教育委員は持ってほしいです。

 

③「来年度不登校施策について」

 ②の調査をもとに、来年度はチャレンジクラス(東京型不登校特例校(校内分教室))の設置や不登校対応巡回教員の配置を新規に行なうとのことです。私には根本的解決になるとは思えません。子どもの不登校だけでなく、病休の増加、そのうち精神疾患の割合が高い、採用1年での離職の増加等々、教員も学校が楽しい場所ではなくなっている現実を都教委は直視すべきです。それをしなければ、次々に施策を出しても解決にはなりません。

 

 

④「今年度都児童・生徒体力・運動能力、生活・運動習慣等調査結果について」

 2011年度から始めた調査(小5、中2、高2)。体力・運動能力はコロナ禍になる前と比べ下がったまま(中2男子はほぼ戻ったが)。生涯にわたって体力・運動能力を向上させるよう、運動を楽しむ子どもの割合を増加させるのだと言います。

 

 

⑤「インクルーシブな学び東京コンソーシアムの設立について」

 文科省が「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築」を打ち出していることに呼応した企画なのか。

 

 設立目的は「都教委が企業やNPO等の交流、情報交換の場を提供することで、障害のある人々の生涯にわたる学びを支援するとともに、障害のある人もない人も共に学べる環境づくりに向けた取組を展開し、互いの個性を認め合い、多様性を尊重しながら支えあえるインクルーシブシティの実現を目指す。/更に、コンソーシアムを構成する企業、NPO法人等が有する専門性を生かして、高校生等を対象とした体験プログラムや学校卒業後の障害者を対象とした生涯学習講座等を都が実施し、インクルーシブな学びを展開する」ということ。コンソーシアムは都教委生涯学習課が事務局となり、株式会社・合同会社、社団法人、NPO法人、社会福祉法人、財団法人、任意団体の18団体が入って交流・情報交換を行うということです。

 小学校入学時、いや幼稚園入園時から障害を持った子どもを分け、子どもたちに差別意識を植え付けておいて、「障害のある人もない人も共に学べる環境づくり」だと! 冗談も休み休み言え、と言いたい!!