ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

 

原告側の控訴棄却 集団的自衛権を認めた安保法制をめぐり 札幌高裁

 

判決後の集会で話をする原告弁護団共同代表の斉藤道俊弁護士(中央)=2024年2月16日、札幌市中央区、石垣明真撮影

 

 集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は違憲だなどとして、道東などの約200人が計約2千万円の慰謝料を国に求めた訴訟の控訴審判決が16日、札幌高裁(佐久間健吉裁判長)であった。佐久間裁判長は原告側の請求を退けた一審・釧路地裁判決を支持し、控訴を棄却した。憲法判断は示さなかった。原告側は上告する方針。

 

  【写真】判決の言い渡しを前に、札幌高裁に入る原告ら=2024年2月16日、札幌市中央区、石垣明真撮影 

 

 原告側はこれまでに、政府による戦争などによって、個人の生命や身体が脅かされないという「平和的生存権」があり、それは憲法によって具体的に保障されていると主張。その権利が関連法によって侵害されて、精神的な苦痛を被ったなどと訴えていた。 

 

 また、集団的自衛権の行使を認めるには、憲法9条の改正が必要だったにもかかわらず、国はその手続きを怠って、強引にその解釈を変更したとも主張していた。

 

  判決では関連法について、「(原告らの)生命・身体を侵害する内容でもなく、そのような危険がある状況を生じさせてもいない」と認定。また、解釈変更に関する原告側の主張は、「時の政府などによる憲法解釈の変更を、憲法改正と同視することにつながりかねない」として採用しなかった。  そのうえで、「損害賠償法上で保護される利益の侵害を前提とせずに、特定の法律が憲法に適合するかどうかを判断することはできない」などとして、関連法に関する憲法判断を示さなかった。  原告弁護団で共同代表を務める斉藤道俊弁護士は、「戦争が起こってからでないと権利の侵害を認めないと言っているのと同じだ」と批判し、上告する方針を明らかにした。

 

  弁護団によると、同様の訴訟は全国22地裁・支部で25件起こされており、道内では2件目。(石垣明真)

朝日新聞社

 

 

 

 

時事通信

憲法判断示さず控訴棄却 安保法制訴訟 札幌高裁

 集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は平和的生存権などを侵害し違憲だとして、北海道釧路市など道東地域の住民ら約200人が国に1人当たり10万~20万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が16日、札幌高裁であり、佐久間健吉裁判長は原告側の控訴を棄却した。 

 

 憲法判断は示さなかった。 

 

 佐久間裁判長は、原告が主張する平和的生存権の侵害について、「現実的かつ具体的な危険を生じさせるとは認められない」と指摘。損害賠償法で保護される利益に当たらないとし、憲法判断をしなかった。 

 

 原告側などによると、同種訴訟は全国22の地裁・支部で起こされた。これまでの判決では、「明白に憲法に違反するとは言えない」とした昨年12月の仙台高裁判決を除き、いずれも憲法判断を示さず訴えを退けている。  原告側代理人の斉藤道俊弁護士は、判決後の報告集会で「戦争によって具体的被害が生じなければ保護される権利が認められないという判断。憤りを感じる」と批判し、上告する方針を示した。 

 

 

 

 

 

 

日本弁護士連合会

安保法は立憲主義に反し憲法違反です

2015年9月19日、参議院本会議において、安保法案が採決されました。

 

日弁連は、2014年7月1日の閣議決定及び安保法案について、政府が憲法第9条の解釈を変更し、これを踏まえて法律によって集団的自衛権の行使を容認することは、憲法の立憲主義の基本理念、恒久平和主義及び国民主権の基本原理に違反することを繰り返し指摘してきました。また、後方支援の拡大や武器使用の拡大等の立法も、自衛隊が海外において武力の行使に至る危険性を高めるものとして、同様に憲法に違反することを指摘し続けてきました。

 

安保法案については、衆議院憲法審査会における3名の参考人をはじめとする多くの憲法学者、歴代の内閣法制局長官、さらには元最高裁判所長官を含む最高裁判所判事経験者がその違憲性を指摘しました。また、世論調査でも国会での安保法案の成立に反対する意見が多数を占めていました。
しかし、参議院特別委員会が採決を強行し、参議院本会議において安保法案が採決されるに至ったことは、立憲民主主義国家としての我が国の歴史に大きな汚点を残すものです。

 

日弁連では、今後も国民・市民とともに、戦後70年間継続した我が国の平和国家としての有り様を堅持すべく、改正された各法律及び国際平和支援法の適用・運用に反対し、さらにはその廃止・改正に向けた取組を行います。1人でも多くの方が、この問題に興味・関心を持っていただけることを願っています。

 

集団的自衛権・安保法をめぐる問題

集団的自衛権とは、政府解釈によれば「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」です。

 

これまで政府は、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないとしてきました。

 

ところが、現在、政府は、この政府解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認しようとする方針を打ち出しています。

 

しかし、これまで政府は、集団的自衛権の行使は許されないとする解釈に関し、政府による法令の解釈は「論理的な追求の結果として示されてきたもの」と説明していました。長年の議論によって積み重ねられてきた解釈を変更することは、立憲主義の観点から極めて問題があります。

 

戦争と武力紛争、そして暴力の応酬が絶えることのない今日の国際社会において、日本国民が全世界の国民とともに、恒久平和主義の憲法原理に立脚し、平和に生きる権利(平和的生存権)の実現を目指す意義は依然として極めて大きく重要です。

 

日弁連は、集団的自衛権の行使に関する解釈の変更に強く反対します(詳しくは「集団的自衛権の行使容認に反対する決議」)。