イスラエルによるパレスチナ人民虐殺
  難民支援のUNRWAへの資金拠出停止は撤回を
  日本は米国に隷従せず独自のアラブ外交を
  「沈黙は侵略者の共犯者になることだ」
  「メディア改革」連載第146回   (その2)(了)
  

 浅野健一(アカデミックジャーナリスト)

◎ 2月4日夕、「事故情報編集部」から、「昨年10月のハマスのイスラエル攻撃に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)スタッフ12人が関与したとの疑惑が米国などによって問題にされ、日米欧など18カ国以上が資金拠出を停止したことへの反対や批判がほとんどない。国連や欧州連合(EU)などは資金拠出を継続としている。浅野さんの見解を書いてほしい」という連絡があった。

◎ 岡氏も1/29学習会での質疑応答の中で、UNRWAは避難民を支援しており、最悪の生活環境に耐えているパレスチナ人への食糧や医薬品などを提供する人道支援は不可欠だと述べていた。

◎ UNRWAは1948年のイスラエル建国に伴う第1次中東戦争で故郷を追われたパレスチナ難民とその子孫を支援する国連機関。
 ガザやヨルダン川西岸、レバノン、ヨルダン、シリアの難民キャンプを中心に約590万人に医療や教育などの支援を行っている。
 ガザ地区内では約1万3000人を雇用している。スタッフの多くはパレスチナ人で、今回の戦闘では約150人が死亡した。

◎ 共同通信によると、米国務省のミラー報道官が1月26日、UNRWAのスタッフ12人が「ハマスによるイスラエル奇襲に関与した疑いがある」として、UNRWAへの資金拠出を一時的に停止したと発表した。
 UNRWAのラザリニ事務局長は同日の声明で、イスラエル当局から「UNRWAのスタッフが奇襲に関与した疑いがある」との情報が寄せられたとし、当該スタッフとの契約を打ち切ったと発表した。

◎ 米国に追随し、英国、ドイツ、イタリア、オランダ、スイス、フィンランド、オーストラリア、カナダも拠出停止を表明。
 日本外務省も28日、UNRWAへの資金拠出を一時停止すると発表した。小林麻紀外務報道官の談話で「疑惑について極めて憂慮している」と表明した。10番目の拠出停止国となった。

 これに対し、欧州連合(EU)は2月1日、今後の同機関に対する資金拠出を決定した。ノルウェーなども支援の継続を表明した。
 グテレス国連事務総長は「ガザ市民200万人が、日々を生き延びるためにUNRWAの援助を必要としている」と指摘した。
 また、UNRWAは2月1日、各国の資金拠出停止が続けば、2月末にはパレスチナ自治区ガザだけでなく、中東各地で支援活動の停止に追い込まれる恐れが強いとして、拠出再開を求める声明を出した。
 日米欧など16カ国が資金拠出の一時停止を表明。金額は約645億円に上るという。

◎ 声明は「ガザでは200万人近くがUNRWAの支援に頼っているとし、人道危機が深刻化する」と指摘。
 ラザリニ事務局長は「UNRWAの弱体化でなく、強化が必要な時だ」「一部の人間が犯罪行為で疑われているからといって、この機関と一つのコミュニティーの全員を制裁するなど、まったく無責任なことだ」と強調した。

 国連人権理事会が任命した特別報告者らは2月2日、UNRWAに対する資金拠出停止の動きに深い懸念を示し、拠出を再開するよう求めた。日米や欧州諸国など計18カ国が拠出を停止したとして「UNRWAが集団的に処罰されてはならない」と強調した。
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1302568

◎ BBCによると、米欧の政府で働く公務員800人以上が、イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区での戦いに対する自国政府の政策は「深刻な国際法違反」に相当する恐れがあると警告する文書に署名した。
 署名した公務員たちは、自分たちの政府が「今世紀最悪の壊滅的な人道上の破局」に加担する事態になりかねないものの、自分たちの専門的な意見は度外視されたと批判している。
https://www.bbc.com/japanese/articles/cxrkq03k597o
https://www.asahi.com/articles/ASS2333TJS23UHBI00G.html

 文筆家の師岡カリーマ氏は3日の東京新聞「本音のコラム」で、「ガザのUNRWA職員は約1万3千人。それだけ職員がいれば親ハマスの現地職員がいても不思議ではない。むしろ関与を指摘された12人という数は、感心するぐらい少ないという見方もできる」「少数の個人の犯罪疑惑を理由に、飢えた人々の命綱を奪う『文明国』が続出し、日本も同調」と書いている。

◎ 師岡氏は「その理屈が正しいなら、裏金作り(一種の脱税とみなす意見もある)が発覚した自民党には公的助成金が交付されないのが筋だろう。UNRWAへの拠出金停止を決めた岸田政権は、来年度の政党助成金を全額辞退して下さるものと期待する」と続けている。

◎ また、錦田愛子慶大教授(中東政治・難民研究)は「ガザでの人道支援は、UNRWAが一手に担ってきたのが現実だ。その活動を止めることは、ガザの人たちに、『死ね』と言っているのに等しい。各国の選択が、市民の命に直結する」と指摘している。

 現地で活動する団体や大学教授らが2日、都内で会見を開き、拠出金停止は国際法違反として、撤回を求めた。
 日本国際ボランティアセンターの今井高樹代表理事は「日本は必ずしも米国に追従する形ではない、独自の外交方針でやってきた。今までの中東への日本の外交方針を守っていただきたい」と訴えた。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000335358.html

 また、米紙ニューヨークタイムズは1月31日、国連の各機関や欧州の動きを詳しく伝えている。
https://www.nytimes.com/2024/01/31/world/middleeast/donors-unrwa-un-gaza.html?unlocked_article_code=1.TE0.QLzI.xgP9IS9KvFhz&bgrp=t&smid=url-share

◎ 攻撃関与の情報はイスラエルが公表した。イスラエルはかねて、UNRWAを含む国連の諸機関がイスラエルに対して偏向しており、時には反ユダヤ主義的だとさえ非難してきた。
 国連の調査は続いている中、パレスチナ難民への人道支援を担う国連の調査は続いている。

◎ 私は多くの国連職員に接触してきたが、米国の工作員のようなス
タッフが多数いた。国連事務次長の立場を利用して、日本の自衛隊カン
ボジア派兵を煽った明石康氏は米日政府の協力者だった。イスラエルの
ために働く国連職員も少なくないのではないか。

◎ 世界が、イスラエルによる1948年からのパレスチナ民族への大虐殺を続けてきたことが批判する中、突然出てきたUNRWA非難の情報で、難民支援が妨害されている。
 日本政府がUNRWAへの資金拠出を再開し、UNRWAの強化に協力することを要求しよう。
 学習会で学んだのは、沈黙は侵略者の共犯者になることということだ。

 


※2/13(火)緊急学習会『自民党裏金疑獄とメディア』
 <浅野健一が選ぶ講師による「人権とメディア」連続講座>

 日 時:2月13日(火)18時より20時30分(17時30分開場
 会 場:「スペースたんぽぽ」(定員40人)
 参加費:1000円(資料代含む)    ◇予約受付中

 浅野健一さんより、講座開催の趣旨と自民パー券裏金疑獄の概要を説明。
 岩田 薫さん(元軽井沢町議)(「昨年12月13日に安倍派幹部議員ら
                19人を東京地検に告発した)のお話。
 元東京地検特捜部検事・郷原信郎弁護士のお話。
 第二部で3人が討論。参加者との質疑応答。

 

たんぽぽ舎です。【TMM:No4972】2024年2月7日(水)地震と原発事故情報-