「国のために戦えますか」
  と言われたら、戦わせようとする為政者と闘うべきだ

                       大矢英代(カリフォルニア州立大助教授)


 「米国人は、自由を回復し、独裁政治を終わらせ、解放するためにやってきたのだ。征服するためではない」。ワシントンDCの第2次世界大戦記念碑には、そんな刻印がある。見渡す限り壮大な花崗岩で築かれた記念碑には、戦場の残虐性は見えない。「戦争を終わらせるためには、正義という名の暴力が必要だ」。
 そんな米国型の戦争価値観が具現化された空間の中で、言葉にならない恐怖を感じた。

 「あなたは祖国のために戦えますか」。
 ジャーナリストの櫻井よしこ氏のSNS発信が、今、ネットで物議を醸しているという。「多くの若者がNOと答えるのが日本です。安全保障を教えてこなかったからです」と櫻井氏は投稿した。
 平和のために武力が必要だという米国と、平和のために武器を捨てて対話せよと唱える日本国憲法。「同盟国」という名で結ばれた二つの国は、「平和」 への考え方が根本から異なる。

 しかし、櫻井氏の発言にみるように、ここ数年で、日本はアメリカ型の価値観に着実に近づいてきている。
 いや、「お国のために死ね」と言ったかつての帝国主義的価値観に逆戻りしているというべきだろう。
 「国のために戦え」と言われたら、戦わせようとする為政者と闘うべきだ。

それでも戦えと迫られたら、逃げよ、隠れよ。自分の命を一番大事に。
               (2月5日「東京新聞」朝刊21面「本音のコラム」)