直近5年間で少なくとも約8000万円

に上る

 

この「中抜き」がなぜ解せないのかと言えば、キックバックは派閥から「渡される」のに対して、派閥に納めず手元に残す「中抜き」はそこに意志が存在すると思われるからだ

 

丸川氏を巡ってはX(旧ツイッター)では「丸川珠代! お前もか! この、愚か者めが!」などといった厳しい意見もみられた。安倍派の実態を“告白”していた同派の宮澤博行衆院議員は1月14日、静岡県での党会合で2022年までの3年間に132万円の不記載があり、そのうち114万円は派閥に納めず手元に残していたと説明した。

 

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丸川珠代・元五輪相「中抜き700万円」にネットから「愚か者めが!」特大ブーメラン!…安倍派幹部不起訴に”喪が明けた”と動き出す政治家

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 自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、東京地検特捜部はパーティー券収入の一部を派閥からキックバック(還流)されていた現職議員1人を逮捕する一方、大半の議員は「不問」にするとの方針が報じられている。浮かび上がるのは政治家という「上級国民」と庶民感覚のズレだ。政界事情に通じる経済アナリストの佐藤健太氏は「立件の有無に関係なく、国民には解せない点がたくさん残っている。疑惑議員は全員、記者会見で説明責任を果たすべきだ」と指摘する。

派閥側は事務職員のみが立件されるというのでは「法の欠陥」

 1月16日付の読売新聞は「安倍派幹部7人不起訴へ 会計責任者との共謀認定できず 4000万円超不記載の3議員は立件方針」と報じた。これまで特捜部は、自民党最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)の幹部から複数回にわたって任意聴取してきたが、立件する方針を固めた会計責任者との「共謀」を認定する証拠は固められなかったという。

 

  報道の通りならば、政治資金規正法違反容疑で告発された安倍派幹部の塩谷立元文部科学相▽松野博一前官房長官▽西村康稔前経済産業相▽高木毅前国会対策委員長▽萩生田光一前政調会長▽世耕弘成前参院幹事長▽下村博文元文科相―の7人は不起訴になるのだろう。  一方で、派閥から4000万円超のキックバックを受けたとされる池田佳隆衆院議員は政治資金規正法違反容疑で逮捕され、大野泰正参院議員や谷川弥一衆院議員、会計責任者は立件する方針という。派閥で決めたルールに基づきキックバックを受けていたにもかかわらず、派閥側は事務職員のみが立件されるというのでは「法の欠陥」でしかない。

田崎史郎「数十万円でも摘発していったら安倍派の議員はほとんど関わってきてしまう」

 不起訴になると伝えられる幹部7人は、派閥会長がルールを決めていたとの趣旨を証言しているとされる。だが、「安倍派セブン」も派閥からキックバックを受けていたと報じられており、問題がなかったわけではない。特捜部は不記載額が「4000万円」に満たない議員の立件は見送るというが、同じようなことを一般国民がすれば「1000万円」でも厳しく処罰されるのではないか。上級国民と庶民を区別する理由が解せない。  政治評論家として著名な田崎史郎氏は昨年末のテレビ朝日「モーニングショー」で、「金額で線を引くのはおかしいんですが、数十万円でも摘発していったら安倍派の議員はほとんど関わってきてしまうでしょう」と解説している。では、なぜ政治家は許されて庶民は処罰されるのか特捜部は国民が納得できる理由を説明できるのだろうか。

 

  東京地検は全国からエース級の検事を集め、100人体制で捜査にあたってきたといわれる。昨年12月19日に安倍派と「志帥会」(二階派)の関係先を強制捜査し、年末には高額のキックバックを受けていた議員の事務所などを3日連続で家宅捜索した。

 

 

 

直近5年間で少なくとも約8000万円に上る

 しかし、所属議員に「渡していた側」である派閥の処罰対象が会計責任者にとどまるならば、それだけ大がかりの体制が本当に必要だったのかと言いたくもなる。政治資金規正法違反で派閥幹部を立件するには、最初から「共謀」の証拠を固める必要があることは分かっていたからだ。  さらに解せないのは、派閥からのキックバックではなく、「中抜き」していた議員の扱いだ。元日の朝日新聞によれば、所属議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた収入を派閥に納めずに手元で裏金にした疑いがある総額が、直近5年間で少なくとも約8000万円に上ることが取材でわかったという。TBSも1月12日、こうした「中抜き」は安倍派の事務総長経験者である下村氏が約500万円、丸川珠代元五輪相も約700万円あることが分かったと報じている。 

 

 この「中抜き」がなぜ解せないのかと言えば、キックバックは派閥から「渡される」のに対して、派閥に納めず手元に残す「中抜き」はそこに意志が存在すると思われるからだ。丸川氏を巡ってはX(旧ツイッター)では「丸川珠代! お前もか! この、愚か者めが!」などといった厳しい意見もみられた。安倍派の実態を“告白”していた同派の宮澤博行衆院議員は1月14日、静岡県での党会合で2022年までの3年間に132万円の不記載があり、そのうち114万円は派閥に納めず手元に残していたと説明した。

「慣習というか、流れの中でノルマ分は納めなければいけないという中でずっときて…」

 その理由については「慣習というか、流れの中でノルマ分は納めなければいけないという中でずっときて、ノルマオーバーした時にノルマ分だけ納めれば良いという慣習の中でやってしまったことと認識している」としている。  宮澤氏は「中抜き」も派閥の指示だったと説明しているが、その通りであったとしてもノルマ超過分の「中抜き」は派閥を通していない分、悪質のように映る。企業・団体からのお金が議員側に国民がわからない形で入っていたとなれば、政治資金規正法の趣旨に反するのは明らかだからだ。  仮に、庶民の収入の「裏金」が発覚すれば、加算税や延滞税といった厳しい追徴課税が待っている。派閥からのキックバックや「中抜き」をしていた議員は、立件されるか否かではなく、それらのお金を一体何に使っていたのか国民に説明する責任があるだろう。非課税のお金を得ながら「裏金化」しても責任を問われない、「でも庶民はマネしちゃダメよ」というのでは納得できないのは当然だ。

 

 

丸川元五輪相はJNNの取材に回答を拒む

 そもそも今回の裏金疑惑が浮上して以降、誰が国民への説明責任を果たしただろうか。宮澤氏はたびたびメディアに登場しているが、松野前官房長官は「差し控える」を連発。「中抜き」が報じられた丸川元五輪相はJNNの取材に回答を拒む模様が放送されていた。安倍派幹部の多くは動向すら一般国民に分からないままだ。日頃、政治家を追いかけているマスコミの記者たちは何をしているのか。  少なくとも野党時代、厳しく民主党政権を批判していた自民党議員の姿はそこにはない。選挙の時だけ低姿勢で票をお願いしながら、いざとなったら“雲隠れ”している議員は1日でも早く記者会見を開いて、有権者に説明する義務があるだろう。  安倍派でキックバックを受けていた議員の中には「立件されれば議員は辞める」と話す人もいる。だが、不起訴になったからといって政治資金収支報告書への不記載が容認されるわけでは決してない。立件か否かにかかわらず、不記載が事実であれば自分から辞職する議員がいないのが不思議なくらいだ。

99人に上る最大派閥は「喪が明けた」とばかりに

 やがて東京地検特捜部の捜査が幕を閉じ、不起訴処分となった際には「安倍派セブン」は派閥中枢に居座り続けるのか。所属議員が99人に上る最大派閥は「喪が明けた」とばかりに、岸田文雄首相(自民党総裁)が再選を目指す今年の党総裁選で大きな影響力を発揮するだろう。将来の宰相候補としては萩生田氏や西村氏らの名もあがる。  一部には検察審査会による解明に期待を寄せる声もあるが、正式な裁判が行われなければ国民が事実を知ることは困難だ。なぜ裏金が必要だったのか。「プール」していたお金は脱税にはならないのか。国民の解せない点は、次の衆院解散・総選挙とともに霧消しそうな気配である。

佐藤健太