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「大川原化工機」訴訟、都と国が控訴…起訴取り消された社長「あきれる思い」と批判
生物兵器の製造に転用可能な精密機械を不正輸出したとして逮捕された後、起訴が取り消された会社社長らが11日に記者会見し、逮捕・起訴を違法と認定した東京地裁判決を不服として控訴した東京都と国の対応について、「あきれる思いだ」と批判した。
記者会見する大川原正明社長(左から2人目)ら(11日、東京・霞が関で)=杉本和真撮影
東京地裁は昨年12月27日、精密機械製造会社「大川原化工機」(横浜市)の大川原正明社長(74)らが国家賠償を求めた訴訟の判決で、警視庁公安部の逮捕と東京地検の起訴を違法とし、計約1億6000万円の賠償を命令。
都と国は10日に東京高裁に控訴し、
原告側も「冤罪(えんざい)の真相を明らかにしたい」として控訴した。
代理人弁護士らと都内で会見した大川原社長は、都と国が控訴せずに謝罪の意思を示せば原告側も控訴しない方針だったことを明かした。社長とともに逮捕・起訴され、勾留中に体調を崩した末に72歳で亡くなった同社元顧問・相嶋静夫さんの長男(50)は「都や国に反省の気持ちがあると期待していたが、温かみのない対応に落胆した」と話した。
1審では捜査を担った警部補が事件を「捏造(ねつぞう)」と証言したが、地裁判決は捏造の有無に言及しなかった。
原告代理人の高田剛弁護士は「高裁では事件がつくりあげられた背景を認定してほしい」と述べた。
警察庁の露木康浩長官は11日の定例記者会見で「警視庁で内容を精査した結果、上級審の判断を仰ぐことが適当との結論に至った」と説明。警視庁が今回の捜査の事実関係を確認し、得られた教訓を今後の捜査に生かしていく考えも示した。
一方、日本弁護士連合会は10日に会長談話を発表し、大川原社長らの身柄拘束が約11か月に及び、相嶋さんが亡くなった点に言及。「裁判官が保釈を認めず、その結果、1名が死亡した。裁判官の保釈判断は強い非難を免れない。裁判官の判断も検証されなければならない」と指摘した。