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現代ビジネス

【実名告発】「農協は終わった」と組合員は天を仰いだ…JA共済を解約された組合員の「悲痛な叫び」と自浄作用なき「JAの断末魔」、その悲惨な実態

ヤバすぎる「JA共済連」の体質

 

 JA共済連茨城が共済金の支払いを巡ってトラブルとなった契約者に対して、契約更新をすべて拒否している。

 

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 その詳しい経緯は、前編『JAムラの「ヤバすぎる掟」が明らかに…! 「共済解約」の強要と「組合員切り捨て」、その驚愕の一部始終』で紹介したが、一連のトラブルからは組合員に対して強権的に対応するJA共済の異様さが浮かび上がる。 

 

 トラブルとなった相手の共済金の支払いを拒否し、裁判に訴えたあげく、自ら提出した証拠資料から過大なノルマによって生じた不正営業の実態を暴かれるという、稚拙な失態を演じた。

 

  JAは全国に1000万人以上の組合員を擁する日本最後の巨大組織だ。

 

  筆者は、2022年に上梓した『農協の闇』(講談社新書)で、JA共済連が顧客を食い物にする不正販売や過大なノルマによる自爆営業が横行している実態を指摘した。こうした不正行為は、組織延命のために組合員や職員を犠牲にする負のスパイラルから生じているが、今回の事案もそれを浮き彫りにする例だった。

 

  JA共済連から契約更新を拒絶された原和久(63)は言う。

 

  「共済の在り方の問題を指摘した組合員を、保身に駆られた共済連が追い込んでいく。こうしたJAの有り様は、異様というほかない」

「過大ノルマ」で行われた不正行為の数々

 原もまた、不適切な営業は職員を苦しめるノルマが理由だと考えている。

 

  JA共済連は地域のJAにノルマを割り振っている。地域のJAは職員に過大ともいえるノルマを課す。そのため、職員は自らが不必要な契約をする「自爆営業」を強いられてきた。職員は、その経済的な負担を減らすため、顧客を騙して契約をさせたり、横領したりするため、不祥事が後を絶たない。

 

  たとえば、JAおおいた(大分市)では、職員が顧客が契約している共済の貸付制度を無断で悪用し、約1000万円を横領した。この不祥事件を調査した第三者委員会は「過大なノルマは不祥事の元凶」と糾弾している。  JA共済連はこうした自らの過ちを改めることなく、その被害者である原に対してその契約を一方的に切り捨てる行為に出たのだった。

 

信頼を損なったのはどちらか

 

悪質な組合員いじめは共済保険の更新拒否に至った…Photo/gettyimages

 

 JA共済連茨城は、原と妻、息子の三人が加入していたあらゆる共済について、契約期間が満了したら次の更新を拒絶した。家族は「建物更生共済」や「火災共済」だけでなく、「自動車共済」「傷害共済」「個人賠償責任共済」などにも加入していた。  予定利率が下がる中、別の会社の保険に入り直せば、原にとっては既契約よりも不利になる。  しかも、裁判の経過を見れば、契約者の原に非は認められない。むしろJA側に共済金の支払いの過失や契約の不正行為があることが次々と明らかになった。  そんな契約相手を一方的に契約解除できるのだろうか。  たとえば、自動車共済の約款第23条には、下記のとおり契約解除できる場合が示されているが、それは契約者側に非があるケースー、具体的には不正に損害を生じさせたり、詐欺行為を行ったり、はたまた反社会勢力だった場合で、その他に互いに信頼関係を損なったケースで存続が困難となった場合に契約が解除できると示されている。 

 

 【自動車共済の約款第23条】 

(1) 共済契約者、被共済者または共済金を受け取るべき者が、組合にこの共済契約に基づく共済金を支払わせることを目的として損害または傷害を生じさせ、または生じさせようとした場合 

 

 (2)被共済者または共済金を受け取るべき者が、この共済契約に基づく共済金の請求について、詐欺を行い、または行おうとした場合 

 

 (3)共済契約者または被共済者が、次のいずれかに該当する場合 ア.暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業その他の反社会的勢力に該当すると認められること イ.反社会的勢力に対して資金等を提供し、または便宜を供与する等の関与をしていると認められること ウ.反社会的勢力を不当に利用していると認められること エ.法人である場合は、反社会的勢力がその法人の経営を支配し、またはその法人の経営に実質的に関与していると認められること オ.その他反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有していると認められること 

 

 (4)(1)から(3)までのほか、組合の共済契約者、被共済者または共済金を受け取るべき者に対する信頼を損ない、この共済契約の存続を困難とする重大な事由が生じた場合 

 

 上記のケースのうち原に該当するとすれば(4)のケースだろうが、JA共済連茨城とJAつくば市がそう判断したとしても、彼らは適切な段取りを踏んでいない可能性が濃厚だ。

 

まるで根拠のない「契約解除」

 

 

「契約の更新拒否」に根拠は見当たらなかった…Photo/gettyimages

 

 JA共済連の別の県本部に勤める職員によると、顧客との間で契約を巡って問題が生じた場合には、顧客の主張の妥当性を検討する。また、JAに非があることが認められたら、顧客には問題が起きたことの謝罪や経緯を説明する。最後に地域のJAと今後の対応を協議することになっている。 

 

 原の場合、「顧客の主張の妥当性」については裁判でもおおむね認められている。一方で、原に対してJA共済連は「謝罪」をしていないし、「経緯の説明」についても少なくとも原は十分ではないと主張している。

 

  さらにこの職員によると、JA共済連が過去に契約を解除した案件はいずれも顧客の側に一方的に非が認められた場合である。至極当然な話だが、今回のようにJA側に非がある案件は見当たらないという。

腐敗が進みやすい「JAの体質」

 JA共済連とJAつくば市による原の家族への嫌がらせとも思える対応をきっかけに、JAつくば市の職員から原の元には、自らの組織に対して疑問を抱く声が届いているという。

 

  原は実情をこう明かす。 

 「うちの農協に限っても、悪質な不正は頻繁に起きています。それでもマスコミ沙汰にならないのは、隠蔽しているから。不正をした職員は懲戒解雇するのではなく、依願退職させるのですが、それは職員のほとんどが地縁血縁で入ってきているので、懲戒解雇にはできないからです。そもそもJAは役員も含めて自らの不正を追及できない体質なのです」 

 

 筆者は一連の問題について見解を問うた。まずJAつくば市に電話をしてみたところ、「一切答えられない」「共済連に聞いてください」と言うばかりで、そのまま切られてしまった。 

 

 JA共済連茨城には質問状を送ったところ、松葉健弁護士を通じて次のような回答が届いた。  〈JA共済連及びJAつくば市において弁護士委任している案件については、弁護士を担当窓口として協議を行っておりますので、JA共済連及びJAつくば市からの回答は控えさせていただきます。〉

 

 

役目を終えた農協

日本の農業は大丈夫なのだろうか…Photo/gettyimages

 

 原は、大学を卒業後、JA茨城県中央会が県内のJA職員を養成するために水戸市で創設した茨城県農協学園で1年間学んだ後、JAつくば市に就職している。

  原は、こう嘆く。

  「学園では、JAは組合員のためにある、と教わってきました。ところが、いまのJAは組織保持に必死で、組合員のことなど考えていない」  JAは、経営の主軸である金融事業が組合員を裏切る行為を続けている一方で、本来、本業であるはずの農業関連事業は脆弱になり続けている。原はそんな現状を見るにつけこう感じるという。

  「農協はすでにその役目を終えているのではないか」 

 さらに、窪田新之助氏の追及記事『TBSの“黒い”「抗議書」を受け取ったジャーナリストは戦慄した…! 「news23」“身バレ報道”、その後の顛末とTBSの「原因究明、謝罪なし」に見る「泥沼の危機」』では、過ちになかなか気づくことができない組織の問題を紹介している。

窪田 新之助(ジャーナリスト)