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三井住友建設、都内大規模マンションも「工事停止」に!麻布台ヒルズは建設再延期の恐れも

建設途中の「麻布台ヒルズ」の「レジデンスB」(筆者撮影)

 

 「麻布台ヒルズ」が11月24日に開業したが、麻布通りに面する住宅中心のタワー「レジデンスB」は準大手ゼネコンの三井住友建設がまだ工事中だ。2023年3月末の工期を2024年6月末に大幅延長したものの、再び延期する可能性も出てきた。さらに、三井住友建設が設計・施工を請け負う、住友不動産と京王電鉄が開発する都内の大規模マンションでも、工事が止まっていることが判明した。(東京経済東京本部長 井出豪彦) 

 

 

● 工期を大幅延期した 「レジデンスB」の現状

 

  11月24日、「麻布台ヒルズ」が開業した。しかし、全面開業ではない。メインタワーの「森JPタワー」、住宅とホテル「ジャヌ東京」が入るタワー「レジデンスA」、低層の「ガーデンプラザA~D」は開業したが、麻布通りに面する住宅中心のタワー「レジデンスB」は準大手ゼネコンの三井住友建設がまだ工事中だ。

 

  もちろん、もともとは同じタイミングで開業するはずだったが、三井住友建設のミスで工期が大幅にずれ込んだため、森ビルとしてはレジデンスBの完成を待たずに開業に踏み切ったというわけだ。  三井住友建設の工事の遅れについては2023年6月にダイヤモンド・オンラインで『三井住友建設が連続最終赤字、「麻布台ヒルズ」が大幅遅延の“深刻な事情”』と報じたところ大きな反響があった。 

 

 その記事では、レジデンスB(当時は「B-1街区」と呼んでいた)は当初の工期が「2023年3月31日」だったが、「2024年6月30日」に延期したと報じた。つまり、延期した工期まであと半年しかない。いまの現場の状況はどうなっているのだろうか。

 

  12月18日、筆者が現地を確認したところ、冒頭写真の通り。目視では14階部分まで建ち上がっていることが確認できた。

 

 レジデンスBは64階建てのため、残りは50階分。現場に掲示されている「建築計画のお知らせ」では工期は「2024年6月30日」から変更されていない(下の写真)が、あと半年ではとても間に合わない。5月末の段階では地上数階だったところ、半年たって10フロア程度しか積み上がっていないのだ。 

 

● 三井住友建設が設計・施工を請け負う 大規模低層マンションの販売が延期 

 

 協力業者筋によれば「プロジェクト内部ではすでに完成予定を2025年5月に延ばしている」という。そうであれば、当然森ビルサイドとも調整がついている可能性が高い。今回、森ビルはダイヤモンド・オンラインの取材に対し、レジデンスBの完成が2025年にずれ込むことを認めた。ただその工期すら守れるのか危ぶむ声があるのも事実。万一、今後何らかの事情で2025年の工期すら間に合わないとなれば、三井住友建設は追加損失が出ることになるだろう。これまでに三井住友建設はこの現場だけで2021年度と22年度、合わせて534億円の損失を出している。 

 

 「現在、三井住友建設からは正社員と派遣、合わせて160人投入されているという話だ。一現場としては異例の陣容といえる」(前出協力業者筋)というから三井住友建設も必死だ。

  しかし、悪いときは悪いことが重なるのかもしれない。このほど、住友不動産と京王電鉄が世田谷区上北沢1丁目で開発する大規模低層マンション「シティテラス桜上水」(143戸、敷地面積1万278平方メートル)の工事が止まっていることがわかった。 

 

 現地の「建築計画のお知らせ」によれば、設計・施工は三井住友建設。着工予定は「2023年3月上旬」、完成予定は「2025年3月中旬」となっており(下の写真)、すでに着工しているはずだが、平日昼間に訪問したところ、現場のゲートは閉ざされ、人の出入りがまったくない。

 

 

 

 敷地を取り囲むフェンスは1カ所透明な部材が使われ、敷地内の様子が確認できるが、大量のくいが放置されている(下の写真)。明らかに様子がおかしい。物件のホームページを確認すると「諸般の事情により、販売を延期させていただくこととなりました」とある。

 

 ● 麻布台ヒルズの工事で 他の現場にしわ寄せか 

 

 事情通によれば、「三井住友建設は住友不動産から近くのマンションも受注していたが、そこで工期遅れを起こしてもめた結果、住友不動産としてはシティテラス桜上水について三井住友建設との契約解除も検討しているようだ」という。

 

  近くのマンションというのは「レジデンスコート世田谷桜丘」(世田谷区桜丘5丁目、89戸)。シティテラス桜上水の建設予定地から直線距離で約1700mの場所にある。12月18日夕方に現地を確認すると外観は完成しており、最終の片付け作業のような段階だった(下の写真)。  ホームページの「物件概要」(12月25日時点)では「備考」として「完成時期に変更が生じました。2023年11月下旬(予定)→2023年12月下旬(予定)→2023年12月14日完成済み/引渡し予定日が変更となりました。2024年3月下旬→2024年7月下旬」との記載がある。工期が遅れたことでマンション購入者は新年度のスタートに合わせた引越しができなくなり、クレームに発展している可能性がある。  いずれにしても三井住友建設にとって住友不動産は重要顧客であり、第6位(2.18%)の大株主でもある。「麻布台ヒルズに大量の経営資源を投入しているしわ寄せがほかの現場に生じているのだろう」(前出事情通)。  三井住友建設の今期の中間決算は麻布台ヒルズの損失処理が一巡した結果、営業利益が88億円(前年同期比673%増)とV字回復を果たした。今冬の賞与も「業界平均の支給額だった」(関係者)という。しかし、まだまだ楽観は禁物かもしれない。

 

 

● 三井住友建設・森ビル・住友不動産の 3社への質問と回答  なお、ダイヤモンド編集部では、三井住友建設、森ビル、住友不動産の3社に質問状を送付。3社からの回答は下記の通りだ。  

 

【三井住友建設】 

<質問1>  麻布台ヒルズのレジデンスB(B-1街区)の工期について、現場では「2024年6月30日」と掲示されていますが、変更ありませんか?2025年5月に再延期済みとの情報がありますが事実ですか?  

<質問2>  貴社が住友不動産と京王電鉄から受注したマンション「シティテラス桜上水」の現場が止まっており、物件のウェブサイトでは「販売延期」となっています。この背景について「レジデンスコート世田谷桜丘」の工期遅れが理由で住友不動産サイドとトラブルになっており、工事請負契約が解除される可能性があるとの話がありますが事実ですか? 

 

 <回答>  お問い合わせいただきました2件につきまして、いずれも個別の工事に関することであり、回答については差し控えさせていただきます。 

 

 【森ビル】 

 <質問>  麻布台ヒルズのレジデンスB(B-1街区)の工期について、現場では「2024年6月30日」と掲示されていますが、現実的ではないとの見方があります。実際は2025年5月に再延期済みとの情報がありますが、事実ですか?  

 

<回答>  麻布台ヒルズレジデンスBは工事が遅延しており、竣工は2025年にずれ込む見通しです。  当社としましては、麻布台ヒルズ全体の完成まで責任をもってしっかりと取り組んでいく所存です。  

 

【住友不動産】

 <質問>  貴社と京王電鉄が事業主として開発中のマンション「シティテラス桜上水」の建設現場が止まっており、物件のウェブサイトでは「販売延期」となっています。この背景について質問です。設計・施工を受注した三井住友建設が、同じく貴社が開発されている「レジデンスコート世田谷桜丘」で工期遅れを起こしたため、「シティテラス桜上水」については貴社が三井住友建設との契約解除を検討しているとの話がありますが事実ですか? 

 

 <回答>  個別の案件について回答は差し控えます。