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パー券不正疑惑は麻生派にも拡大 麻生副総裁に続き棚橋、森衆院議員も刑事告発 「強制捜査し裏帳簿の押収を」と専門家
派閥「志公会」の2023年度の政治資金パーティでスピーチする麻生太郎自民党副総裁。HPより。
政治団体「志公会」(以下、麻生派)が2018年以降、多額の政治資金パーティ券収入があったにも関わらずその明細を政治資金収支報告書(以下、収支報告書)に記載しなかったとして今年1月に刑事告発されていた事件で、新たに不記載が見つかったとして追加の刑事告発状が12月25日に東京地検宛てに出されたことが分かった。また、麻生派の事務総長を務めていた棚橋泰文衆議院議員、森英介衆議院議員も追加告発され、麻生派で告発されたのは麻生太郎自民党副総裁をはじめ、5人となった。(フリージャーナリスト・鈴木祐太) 【写真報告】これが政治資金報告書と「文通費」領収書だ。橋下徹、維新清水参議員などの実物公開(7点)
◆報道と刑事告発受けてやっと報告書訂正
政治資金規正法違反の疑いで刑事告発された棚橋泰文衆議院議員。選挙区は岐阜県大垣市を基盤としている。HPより。
2022年11月に「しんぶん赤旗日曜版」(以下、「赤旗」)が、麻生派の政治資金パーティ券収入の明細不記載を報道したことを受けて、2023年1月に上脇博之神戸学院大学教授が、会長の麻生副総裁をはじめ、会計責任者ら3人を刑事告発していた。上脇教授が今回提出したのは、告発補充書と追加の告発状だ。 告発補充書では、事実上麻生派の実務を取り仕切っていたのは事務総長だとして、2018年から2021年6月末まで事務総長を務めた棚橋泰文衆議院議員と、その後任の事務総長をしている森英介衆議院議員が新たに告発された。 また追加の告発状では、2019年から2021年までの新たに発覚した明細不記載に加えて、この11月に新たに公表されたばかりの2022年分の収支報告書で明細の訂正がなされていたパーティ券収入が告発対象となった。 「赤旗」は今年11月に新たな調査で発覚した明細の不記載を報道。それを受けたように、麻生派は、政治団体「全国宅建政治連盟」が2019年に購入したパーティ券24万円分などを11月に収支報告書を加筆訂正して記載した。告発状では、「赤旗」が報道した後に加筆訂正したことは、麻生派が政治資金規正法違反を犯していたこと「自白」したものだと厳しく指摘している。
◆パー券収入不記載は計918万円、さらに額が膨れる可能性
これで、麻生派の収支報告書のパーティ券収入の明細不記載額の合計は918万円となった。初回の刑事告発時に350万円だった不記載額は、500万円以上増えたことになる。 安倍派の場合、上脇教授による初回の告発対象額は1946万円だったが、現在の告発対象額は3290万円になり、さらに5年間で約5億円のキックバックを含め約10億円が裏金になったとも報道されている。 二階派の上脇教授による最初の告発対象額は468万円だったが、現在のそれは1436万円。麻生派の告発対象額の「膨張」は決して少ないわけではない。 麻生派を追加告発した上脇教授は次のように指摘した。 「裏金づくりが悪質な規正法違反であることは明白ですが、その発覚の原因は20万円超のパーティ収入明細の不記載の報道と刑事告発でした。麻生派の明細不記載額918万円は決して少額ではありません。組織的に行なわれたのは明らかですから悪質であることに変わりはありません。ですから追加告発しました。東京地検特捜部は、この不記載についても捜査を尽くして立件してほしいと強く思っています。」
◆企業からのパー券収入は闇の中
麻生派の今回の訂正は、「赤旗」の報道を受けて加筆修正されたものが中心となった。いわば、外部からの不記載の指摘を受けて訂正したものだ。そのため、訂正は政治団体からのパーティ券収入に限定され、企業からのパーティ券収入は一切含まれていない。 この点は安倍派、二階派も同様だ。政治団体は収支報告書の提出が義務付けられているが、企業は収支報告書の提出が義務付けられていないためだ。報道機関をはじめ、一般の人間には、調べる方法がない。ゆえに誰も企業購入分の不記載を指摘できない。このことが、企業からのパーティ券収入の不記載を発見できない理由だと考えられる。 これだけの不記載が発覚している状況で、企業からのパーティ券収入の不記載がどの派閥でも訂正しないのは不自然ではないだろうか。 告発状では、麻生派がいまだに正直に訂正しておらず、このまま不記載を認めないのであれば「強制捜査を行って裏帳簿を押収するしかにないだろう。そして、厳重に処罰していただきたい」と最後に結ばれている。
<二階派パー券不正>平沢勝栄議員ら派閥幹部3人を追加で刑事告発 報道後に慌てて収支報告書に記載か 「特捜部は二階派も捜査尽くして」と専門家 (最新パーティ写真あり)
政治団体「志帥会」(以下、二階派)が政治資金収支報告書(以下、収支報告書)にパーティ券収入明細を記載していなかった問題で、新たな不記載が見つかったため、2018年以降の事務総長経験者である平沢勝栄衆議院議員、山口壮衆議院議員、武田良太衆議院議員の3人が、政治資金規正法違反で追加で刑事告発された。これで告発対象となった二階派の不記載額合計は1436万円となった。(フリージャーナリスト・鈴木祐太)
◆告発後も不記載を続けた二階派
告発補充書を提出したのは上脇博之神戸学院大学教授。これまでは会長である二階俊博衆議院議員と事務方担当者2名の合計3人が刑事告発されていたが、告発補充書では「事務総長は「志帥会」の実務を取り仕切っており、同会長と共に政治資金収支報告書の記載方針を決定する立つ場にあった」として、2018年19年の事務総長だった平沢勝栄衆議院議員、20年の山口壮衆議院議員、21年22年の武田良太衆議院議員が新たに刑事告発の対象となった。
二階派に関連して追加して出された告発補充書によると、今回新たに見つかったのは2019年以降の268万円の不記載分。
二階派のパーティ券の不記載問題の刑事告発は23年1月1日付で東京地検に出されたのを皮切りに、これまで今回を含めて6回目。見つかった不記載分は最初の告発の際は468万円だったが、2回目に80万円、3回目に220万円、4回目に194万円、そして今回の268万円を足して1436万円となった。
最初の告発を除き、追加告発の中で今回が最多の金額となったのは、NHKの報道等を受けて二階派が収支報告書を訂正、追記をしたことで新たに発覚したからだ。
一例をあげると、22年5月10日の日本歯科技工士連盟の30万円、4月7日の4万円、4月20日の18万円はいずれもオートバイ政治連盟、6月2日の20万円、7月1日の20万円はいずれも日本建設職人社会振興連盟が購入した二階派のパーティ券だ。その合計92万円分が、二階派の収支報告書には記載されていなかった。
2023年の二階派の政治資金パーティの様子。平沢勝栄議員のHPより。
◆報道後に初めて収支報告書に記載 「罪を自白したようなもの」
23年11月27日の加筆訂正によって、初めて収支報告書に記載された。この加筆に対して告発状では、パーティ券収入が不記載だったことを認めたからこそ加筆したのであって、これは二階派による「自白」だと指摘している。
二階派のパーティ券不記載問題を最初に取材・報道したのは「しんぶん赤旗日曜版」だ。その記事が出た後にも、22年のパーティ券収入が不記載となっていた。上脇教授は、「二階派は何も反省していなかった」と厳しく批判している。
◆事務方の独断はあり得ない
自民党派閥の刑事告発を続けてきたる上脇博之神戸学院大学教授は次のように指摘する。
「安倍派の告発補充書と追加告発状で当時の事務総長を被告発人に加えました。二階派にも事務総長がいて報道機関が見解を求めている記事を確認したので、同じように被告発人に加えました。20万円を超えるパーティ券収入の明細を収支報告書の記載しないことを事務方だけの独断で行なうことなどあり得ませんから、二階会長の他に当時の事務総長3名も告発したのです。特捜部には、清和政策研究会だけではなく、志帥会についても捜査を尽くし立件してほしいと思っています。」
<安倍派パー券不正>下村、塩谷、高木の3氏を新たに刑事告発 最新22年分でも不記載発覚 「安倍派はなんら反省していない」と専門家
政治団体「清和政策研究会」(以下、安倍派)が20万円を超えるパーティ券収入を政治資金収支報告書(以下、収支報告書)に記載せず裏金化していた疑惑。公開されたばかりの2022年度分についても不記載が確認されたとして、安倍派の22年時の会長代理だった下村博文氏と座長の塩谷立氏、高木毅事務総長らが12月8日...
◆政治資金規正法改正に踏み込まない岸田首相
12月13日の国会会期末の岸田首相の記者会見で、政治資金規正法の改正についての質問があったが、「改正を検討する」という発言はなかった。東京地検の捜査ができるのは、規正法の公訴時効の5年分だけ。不記載がいつから続けられてきたのかという真相解明、今後どうやって防止していくのかという対策を、具体的に議論できるのは国会だけだ。パー券不正疑惑がききまで大問題となっているのに、岸田首相がもし法改正の必要はないと考えるのであれば、その理由を是非有権者に説明してもらえないだろうか。
■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。