武力による紛争解決にくみしないとした日本の平和原則を根底から覆しかねない。将来に禍根を残す大きな転換である。  政府が防衛装備品の輸出ルールを見直し、外国企業に特許料を払い日本でライセンス生産する武器を、ライセンス元の国に輸出できることにする。「防衛装備移転三原則」と運用指針の改定を、きょう閣議決定するという。  現在は、米国のライセンスで生産した武器は部品に限り米国へ輸出が認められるが、今後は完成品も含めて米国以外にも輸出できるようにする。  救難など、非戦闘目的の5分野でも、防御や業務の実施のためなら、殺傷能力のある武器を搭載していても輸出を認める。  日本は「武器輸出三原則」に基づき、長く武器の禁輸政策を続けてきたが、安倍晋三政権が2014年、武器輸出を「防衛装備移転」と言い換えて解禁した。  国民的議論のないまま、武器輸出が際限なく広がるのではないか。強い懸念を禁じ得ない。  政府は武器輸出指針の見直しに合わせ、米企業のライセンス製品である地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を米国に輸出する方針も決めた。  新ルールでは、第三国への輸出には日本の事前同意が必要で「現に戦闘が行われている国」は除かれる。  だが、ウクライナにパトリオットを供与している米国の在庫を補充することになれば、間接的な紛争当事国への武器供与とみなされよう。平和国家として積み重ねてきた国際的な信用を失うことにつながらないか。  輸出後の適正な管理は困難で、第三国への流出防止を確実にできなければ、紛争の助長を招きかねない。  問題なのは、重大な方針転換を与党の協議だけで決め、議事録も公開しないことだ。  輸出するほど武器を生産することは、平和憲法の理念に基づく自衛の範囲を超えるのではないか。国会で議論するのが筋である。  日本は英国やイタリアと次期戦闘機を共同開発し2035年の配備を目指している。  今回は、同戦闘機を想定した国際共同開発品の第三国への輸出について結論を先送りしたが、年明けにも結論を出すことになった。  自民党は前のめりの態度を隠さないが、殺傷兵器そのものであり、なし崩し的な解禁は容認できない。

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日本、アメリカにパトリオット・ミサイル輸出へ 「防衛装備移転三原則」を改定

日本、アメリカにパトリオット・ミサイル輸出へ 「防衛装備移転三原則」を改定

 

大井真理子、BBCニュース 日本政府は22日、「防衛装備移転三原則」を改定し、地対空迎撃ミサイル「パトリオット」をアメリカへに輸出する方針を決定した。

長年の平和主義政策からの転換となる。 米ホワイトハウスはこの動きを歓迎している。

アメリカは日本のこの決定によって、自国の備蓄ミサイルをウクライナに送れるようになる。 西側諸国では、ロシアの侵攻を受けているウクライナへの弾薬供給が不足している。 

パトリオット・ミサイルは、アメリカがウクライナに供給している中でも最先端の兵器の一つ。

 

 日本はこれまで、ライセンスを持つ企業のある国から受注した「ライセンス生産品」の部品のみ、ライセンス元の国に送ることを認めていた。

しかし新ルールでは、完成品も送ることができる。 政府が三原則の改定を発表した直後、外務省は自衛隊が保有するパトリオット・ミサイルの米軍への移転を発表した。声明で、同ミサイルを「米国に移転し、米軍の在庫を補完することは、米国との安全保障・防衛協力の強化に資するとともに、我が国の安全保障及びインド太平洋地域の平和と安定に寄与するものであることを日米間で確認しており、我が国の安全保障の観点から積極的な意義を有する」と説明している。 また、インド太平洋地域以外に展開する米軍を含むアメリカ政府以外へ、さらに提供されないこと、目的外の使用や第三国への移転については、日本の事前同意を得ることを「米国政府に義務付ける」ことなどが、発表に盛り込まれている。 日本は引き続き、戦争当事者への武器輸出を禁止している。 ただし、今回の改正によって、アメリカは日本製のパトリオット・ミサイルで自国の備蓄を補充できるようになる。そうすれば、アメリカ政府は自国製の同型ミサイルをウクライナに送れるようになる。 日本では、アメリカ防衛大手ロッキード・マーティンとRTXのライセンスの下、三菱重工がパトリオット・ミサイルを製造している。

 

 アメリカはかねて、日本に武器輸出のルール見直しを求めていたとされる。

 

ルール変更は2014年以来となる。 米連邦議会は12月初め、ウクライナへの600億ドル相当の軍事支援を含む大型支出法案を否決。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はアメリカを訪問し、議会幹部らとも協議を重ねたが、交渉は実らなかった。 ウクライナは、国際社会の援助が減少しているため、すでに軍事作戦の縮小を余儀なくされていると警告している。

ウクライナは数カ月前から、アメリカに防空支援の強化を求めている。 

 

パトリオット・ミサイルに加えて、英紙フィナンシャル・タイムズは21日、日本が現在、英防衛大手BAEシステムズからライセンスを受けて製造している155ミリ砲弾について、イギリスへの輸出を検討していると、消息筋の話として伝えた。

 

 どの部品をどの国に輸出するかは、日本の国家安全保障会議(NSC)がケースバイケースで決定することになる見通し。

 今回のルール変更は、日本が長年の平和主義的な姿勢と自ら葛藤する中で行われた。

 

 第2次世界大戦後、日本は自衛を除いて戦争を禁止する憲法を採択した。

 

憲法は軍隊を公式に認めず、自衛能力に限定している。

 

 当初制定された「武器輸出三原則」は武器輸出を全面禁止していたが、2014年の安倍政権下で50年ぶりに緩和され、「防衛装備移転三原則」となった。この動きに、中国は疑念を抱いた。

 日本はさらに昨年、中国と北朝鮮の脅威を理由に、2027年までに防衛費を国内総生産(GDP)の2%に倍増させると発表している。 

 

日本が懸念を抱いているのは中国の軍拡の動きだ。

もし台湾で紛争が起きれば、日本は米中戦争に巻き込まれるだけでなく、アメリカの同盟国として標的にされる可能性がある。日本には米軍基地があり、アメリカ国外では最大の兵力が集中している。 日本にとって北朝鮮もまた常時、国の存亡がかかる危険要素であり続ける。

北朝鮮の今年のミサイル発射回数は過去最多で、そのうちの数発は、日本上空を通過した。

それだけに、北朝鮮の核開発への野心に対して、危機感は高まっている。 (英語記事 Japan to send Patriot missiles to US which may aid Ukraine)

(c) BBC News