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【社説】ガザ安保理決議 早期停戦へ具体的行動を

パレスチナ自治区ガザで戦闘がエスカレートしている。イスラエル軍はついに、病院にまで攻撃を加えた。常軌を逸している。

深刻さを増す人道危機を受けて、国連安全保障理事会は「長期間の人道的な戦闘休止と回廊設置」を求める決議案を賛成多数で採択した。一刻も早い停戦を強く願う。

戦闘開始から40日余りが経過した。戦火は終息に向かうどころか拡大する一方だ。

犠牲者も増え続けている。死者はガザだけで1万1千人を超え、このうち約4500人は子どもだという。目を覆うばかりの惨状だ。

 

ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの掃討を目指すイスラエル軍は、地上侵攻を本格化させ、ガザ最大の病院に多数の兵士と戦車が突入した。病院地下にハマスの司令部があると主張し、攻撃を正当化している。

しかし、病院にいるのは数千人もの患者と避難民、医療従事者だ。逃げ場を失い、命の危険にさらされるのは罪のない人々である。

戦争にもルールはある。病院への攻撃は、国際人道法違反と非難されて当然だ。

多数の子どもが巻き込まれる惨状に突き動かされ、安保理はようやく戦闘休止の決議に至った。15カ国中、日本や中国など12カ国が賛成した。

ガザ情勢を巡る安保理決議案は、それまでに4回提出された。常任理事国である米国やロシアなどが自国の利害を優先し、拒否権を行使するなどして全て否決されている。

今回はイスラエルに理解を示す米国が拒否権を行使せずに棄権した。国際社会で高まるイスラエル批判を直視せざるを得なくなり、決議案を黙認した形だ。

国連総会緊急特別会合は10月下旬、人道的休戦を求める決議案を121カ国の賛成で採択した。今回の安保理決議は総会決議にない法的拘束力を伴うため、国連加盟国は従う義務がある。

事態の悪化から安保理決議までに、時間がかかり過ぎた感は否めない。それでも、犠牲者の増加を食い止めるために国際社会が結束したことは評価できる。

問題は、具体的にどうやって戦闘を止めるかである。

イスラエルは「決議は無意味だ」と反発し、攻撃を継続する姿勢を崩していない。次は安保理決議の実効性が問われる局面だ。

戦闘の休止に欠かせないのは、イスラエルに影響力を持つ米国の強い働きかけだ。これ以上の戦闘拡大は容認できない、との姿勢を明確にしなければならない。擁護する態度を変えないなら、米国への批判が高まるだろう。

ハマスを支援するイランとの関係が深い中国の役割も期待される。

一時的な戦闘休止を長期停戦につなげる過程では、より多くの国の関与が必要だ。中東和平を見据え、息の長い取り組みになる。