ガザの病院-死の危機の中にある
  本質はイスラエルによる75年間の侵略
  「どっちもどっち」論は侵略者の共犯

  パレスチナ民族浄化を狙うアパルトヘイト国家
  キシャメディアのガザ報道は犯罪

  12月に緊急の浅野講座(会場:たんぽぽ舎)準備中
  「メディア改革」連載第140回

 

      浅野健一(アカデミックジャーナリスト)

◎ パレスチナ自治区・ガザを統治するハマス(正式名称はイスラム抵抗運動)が10月7日にイスラエル(ナタニヤフ政権)に対する軍事作戦を展開して以降、世界の目が1948年の建国時からのイスラエルによるパレスチナ人民に対する民族浄化、戦争犯罪に向けられている。
 イスラエル軍は、ハマスをテロ組織と断じて、報復のための壊滅作戦を展開している。
 11月16日には、ハマス中枢の司令部があると勝手に決め付けた地区最大のシファ病院を武力制圧した。
 イスラエルのガラント国防相は、病院内で、使用可能なトンネルの立て坑、武器を積んだ車両1台を発見したと発表した。
 しかし、CNNなどの映像を見ると、米国の家庭に普通にあるような銃などで、とても軍司令部に置くものではない。
 ハマスは病院の軍事利用を否定。ハマス指導者のハニヤ氏は16日、「でっち上げのうそに基づく攻撃だ」と非難した。

◎ 日本メディアと御用学者は、ハマスを非情な人道に反するテロ組織と決めつけているが、2006年のパレスチナ立法選挙で勝利し、2007年のガザの戦いの後、ガザ地区を統治してきた。
 岸田文雄首相は「自由で開かれた民主主義国」などと謳うが、ロシアのウクライナへの特別軍事作戦を「国際法違反の侵略戦争」と断じ
一方で、アパルトヘイト国家イスラエルのパレスチナへの半世紀以上の「力による現状変更」である戦争犯罪を侵略と規定しない。

 ガザでは4500人を超す子どもたちを含む1万1千人を超える住民が虐殺されているのに、キシャクラブメディアも米日の人権に関する二重基準を批判することはない。米国による国連安保理常任理事会でのイスラエル非難決議での十数回に及ぶ拒否権発動を黙認している。
 日本メディアは、「イスラエルはやりすぎだが、どっちもどっち」という姿勢だ。

◎ 16日にアップされた米国のネットメディア「デモクラシー・ナウ」(エイミー・グッドマン氏主宰)は「癒されぬガザの傷」と題した記事で、イスラエルのジェノサイドによって、ガーゼが生まれた地でガーゼが不足していると書いている。

https://www.democracynow.org/2023/11/16/the_undressed_wounds_of_gaza
 医療用の「ガーゼ」はドイツ語だが、その語源は、パレスチナの「ガザ地区」で、ガザの特産品だったという。Ghazza(アラビア語)→gaza→gaze→ガーゼとなった。
https://ameblo.jp/itofutonten/entry-12824734696.html

 記事は「WHOによると、36あるガザ地区の病院のうち26の病院が機能しておらず、最大のシファ病院では患者180人を埋葬した」「イスラエル軍は医療スタッフ200人を殺戮した」と書いた。
 イスラエル軍のパレスチナ人民への冷酷で残虐な戦争犯罪に言葉が出ない。
 何を言うべきか、気が重い。
 イスラエル建国とパレスチナ民族の民族浄化は、私が生まれた年に始まった。
 75年間、国際社会はイスラエルの暴圧を見逃してきた。

◎ 重信メイ氏は、10月11日のBS-TBS番組で、パレスチナが弾圧されてきた歴史を説明した後、「毎日のようにいじめられている子が初めてやり返したら、それに対して焦点が当たった状況」「パレスチナの場合は“抵抗”ではなくて、テロになってしまうことが問題」と指摘した。

 重信氏を出演させたTBSに保守派からから執拗な抗議があった。

◎ パレスチナ情勢に詳しい岡真理・早稲田大学大学院教授((現代アラブ文学)は10月27日開かれた緊急講習会「歴史の忘却に抗して」(京大有志の会主催)で、「ハマスをテロリストと見なすことによって見落とす『記憶と歴史』の中に問題の根っこがある」と語った。朝日新聞の下地毅記者が伝えている。

https://www.asahi.com/articles/ASRCC5W42RBWPLZB00R.html
 「歴史をふりかえれば、ハマスの攻撃は殺されつづけてきた側のそうするよりほかなかった民族解放運動の闘いだ。
 これを『暴力の連鎖』と、したり顔で解説することはまちがっている。占領者の暴力と被占領者の抵抗暴力を同列で語ることはゆるされない」
 岡氏は「いま沈黙することはジェノサイドの共犯者になることです
「まずは即時停戦を訴えてください。停戦になったら、イスラエルのアパルトヘイト廃絶のために声をあげてください」と訴えている。

◎ かつて3年半住んだインドネシアでは、百万以上の人たちがデモに参加した。
 欧米でも数十万規模の集会が開かれている。たんぽぽ舎の柳田真共同代表らが企画し、鎌田慧さんらが呼びかけ人になった11月4日(土)のイスラエル大使館前集会には1600人が参加した。
 尊敬する鎌田さんは私も呼びかけ人に入ってほしいと声をかけてくれた。私も呼びかけ人になったが、当日、急用ができて参加できなかった。
 鎌田さんから5日、「浅野さん。お身体いかがですか。昨日は、集会に来られず、心配しています。大丈夫ですか。また、お願い致します」というメールをもらった。
 私は1970年代からパレスチナ人民の闘いを支援してきたが、努力が足りなかった。何をなすべきかいま真剣に考えている。
 12月にたんぽぽ舎の浅野講座で緊急の学習会を開く準備をしている。