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コロナ感染拡大で業務増加 消毒作業従事の会社員 過労死認定
新型コロナウイルスの感染が拡大していたおととし、消毒作業を行う会社に勤めていた40代の男性が自殺したのは、長時間労働が原因の過労死だったとして労災認定されたことがわかりました。
過労死問題に詳しい弁護士は「今後も感染流行や大規模災害が起きる可能性があり今回を例外とせず対策を検討するべきだ」と指摘しています。
労災が認められたのは東京都内に本社がある店舗の消毒などを行う会社で働いていた当時43歳の男性です。
遺族の弁護士によりますと男性はコロナの感染が拡大していた時期に神奈川県内の支店の支店長代理として勤務し、横浜港に入港し集団感染が確認されたクルーズ船関連の消毒作業にも従事しました。
それ以降も以前からの消毒業務や部下の管理業務に加え、新たにコロナ対策として深夜や休日に飲食店やスーパーなどの消毒作業にあたっていましたが、おととし3月に自殺したということです。
遺族からの申請を受けて労働基準監督署が調査した結果、男性は亡くなる前の3か月間、月100時間前後の時間外労働が続いていたことがわかり長時間労働が原因でうつ病を発症していたとして過労死と認められました。
弁護士によりますとコロナの感染拡大で業務量が増えた業種で過労死が明らかになるのは珍しいということで「今後も感染流行や大規模災害が起きる可能性があり今回を例外と捉えず公務員も民間企業も従業員の健康と命を守る対策を検討するべきだ」と指摘しています。
男性の妻はNHKの取材に対して「コロナが流行してからは私たちが寝ている間に帰ってきて、起きる前に出勤するような生活でした。コロナ禍では医療現場以外にも消毒や清掃など公衆衛生を担う現場で大変な思いをした人たちがいたことを忘れてほしくありません」と話していました。
男性が勤務していた会社はNHKの取材に対して「当時、新型コロナが拡大するなかで昼夜を問わず依頼があり労働時間が増えていたことは事実です。応援態勢を組むなどしていましたがこうした状況のなか、労災が起きたことを重く受け止めています。再発防止に向けて徹底して取り組んでいきます」としています。
また、具体的な再発防止策として支店の社員の勤務状況を本社でリアルタイムで管理できるシステムを導入し、応援態勢や人事配置の見直しを行うほか、今回の労災が起きた背景や再発防止策などを管理職に周知したり研修を行ったりするなどの取り組みを行っているとしています。
死亡した男性の妻はNHKの取材に対し、「本当に突然の出来事でした。夫はとても責任感のある性格で、コロナが流行してからは私たちが寝ている間に帰ってきて、起きる前に出勤するような生活でした。一時的な繁忙であってまさか死んでしまうほど追い詰められていたと気がつけなかったことを後悔しています」と話しています。
そのうえで「コロナ禍では、医療現場以外にも消毒や清掃など公衆衛生を担う現場で大変な思いをした人たちがいたことを忘れてほしくありません。会社は業務量をコントロールすることができなかったのかという思いを今も抱いています」と話していました。
過労死問題に詳しく遺族の代理人を務める川人博弁護士は「コロナ禍では店舗などの衛生管理が重要となり、民間の会社でも深夜などに消毒会社が消毒に入る業務が増え、長時間や深夜の労働を余儀なくされたことが大きな背景にある」としています。
そして、職場が原因でうつ病などの精神障害で労災認定を受ける人が増えている現状を踏まえ、「今は働き方改革が進んだこともあり、時間管理の面で非常に効率的で無駄のない運営をしている。ただ、それは日常的にゆとりがない職場になっているということもできる。こうしたなかでコロナ禍のような時には、公共性の高い仕事だけでなく、それ以外の業種でも急激に業務が増加することが浮き彫りになった。今後も未知の病気の流行や大規模災害などが起きる可能性があるなかでこれを例外的な問題として捉えるのではなく、民間企業も公務員も働く人の健康や命をどう守るのかを考えて対策を立てる必要がある。民間企業にとっては受注が増えて利益につながる面もあるが一歩立ち止まって従業員の健康面を考える視点をしっかり持つことが重要だ」と話していました。
そのうえで「労災は申請から認定まで1年以上かかることも多いためコロナ禍の過重労働で倒れたり亡くなったりした人たちの当時の状況が労災認定というかたちで今後、さらに明るみになる可能性がある」と指摘しています。