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「法務副大臣を辞任」の柿沢未途氏が「買収」で逮捕される可能性…一部区議に「現金バラマキ」疑惑浮上
現職区長、地元選出の法務副大臣が辞職や辞任を次々と表明し、江東区政は混乱に陥っている。
10月26日、東京都の木村弥生江東区長(58)が辞職を突如表明した。その2日前の10月24日、今年4月の区長選で選挙期間中、自身に投票を呼びかける有料広告14万円を動画広告サイトに支払っていたとして、公職選挙法違反の疑いで東京地検特捜部から強制捜査を受けた。 木村氏は任意の事情聴取も受け、区長室、木村氏の自宅、実家に捜査が入ったことを26日の会見で語った。 「ご期待いただきながら、このような形で辞職することに申し訳ない思いでいっぱいです。区政を混乱、停滞をさせてはならないと考えました」 25日の朝、電話で副区長に辞職の意思を伝えた。江東区を地盤とする東京15区で衆議院議員などを務めた父の木村勉氏(84)に相談し、「決めたことなので尊重する」との返答を受け、辞職を決意したという。 「出直し選挙に出るつもりはありません。衆議院や参議院、国政選挙も出馬はありません」 木村氏は今後、出馬の意思がないことを示した。 辞職会見から4日後の10月31日、木村陣営を支援していた柿沢未途法務副大臣(52)が有料広告使用を「私が勧めた」として内閣総務官室に副大臣の辞表を提出。柿沢氏は父の代から東京15区(江東区)を地盤としており、4月の区長選で木村氏の支援を行っていた。 柿沢氏は当選5回で、今年9月に発足した岸田第2次改造内閣で法務副大臣に就任。選挙違反を取り締まる法務省ナンバー2の辞任劇となり、岸田政権へのダメージとなろう。 「’13年の公職選挙法改正でSNSを利用した選挙運動が認められるようになった。SNSを通じで投票を呼びかける行為は違法とならないが、有料広告を使用しての呼びかけは資金力のある候補が有利になるために禁じられた」(全国紙司法担当記者) 公選法は選挙運動の目的で候補者名を示した有料広告の使用を禁じているが、政党や政治団体がバナー広告を貼るなどは適法で、木村陣営は、政治団体のサイトに有料広告がリンクしていたので、「例外に含まれる」との認識だったようだ。
「選挙期間中、選挙管理委員会や警察からの指摘はなかった」 木村氏は会見でそう述べ、捜査機関への牽制をほのめかした。
柿沢氏は朝日新聞の取材に対し、「何がアウトでセーフかという認識、知識がなかった」「違法だという認識はなくて、あとあと『あれ違法なの? まずいなぁ』と」と故意ではないことを強調。
公選法の解釈は今後の捜査、裁判に譲るが、父も政治家で、自身も衆議院議員として選挙を経てきた木村氏や柿沢氏がなぜ公選法違反となる有料広告を使用したのか。
捜査の焦点ともなるこの点について、会見で木村氏は、「現在捜査中なのでお答えできない」と不十分な説明に終始した。前述の司法担当記者が経緯をこう語る。
「61歳の男性が木村区長を深川署に刑事告発し、受理され、警視庁の案件となった。東京23区の首長クラスであれば政治家の汚職を取り扱う捜査2課が捜査をする。ところが、案件を奪うかのように特捜部が持っていった。
あの程度の公選法違反で、強制捜査を行ったのは異例なことで、区長が本丸ではなく、柿沢氏の議員バッジを視野に入れた捜査、と目されていた。木村氏の父や妹も事情聴取され、ガサ入れも行っていた。どうやら有料広告使用だけでなく、買収罪も狙っているようだ。
4月の区長選で、一部の区議が柿沢氏からの現金受領を認めた、という話もあり、仮に事実であれば逮捕も免れない」
柿沢氏は法務副大臣の役職は辞任したが、議員辞職についての明言は避けている。ロッキード事件後の田中角栄を引き合いに出すまでもなく、判決確定までは「推定無罪」として有罪判決を受けても、政治活動は続けられ、出馬もできる。
一方の木村氏はこれまで区議会で同問題を追及されても、「監督が行き届かなかった」とし、自身の直接関与を否定していた。にもかかわらず、強制捜査からわずか2日での辞職表明となった。 「議会で追及はしていたんだけど、まさか本当に辞めるとは……」 自民党所属の江東区議は驚きを隠せないようで、匿名を条件にこう続ける。 「推定無罪、として居座り続ければ議会は荒れるが、居続けることもできた。辞めるにしても、11月、12月は来年度予算審議の大事な時期で、予算の目処が立ち次第辞職する、と内々に伝えれば各会派ノーとはならないはず。 53万人の区民を預かる区長として、来年度の予算編成の目処が立つまで辞めるべきではなかった。来年度予算の審議をしながら、次の区長候補の擁立もしないとならない。もしも柿沢氏も辞職や逮捕となれば、江東区政は大混乱となる」 区役所によれば、木村氏の半年間の在任期間は区政史上最短という。年内に、数億円の費用をかけて区長選挙が行われる。さらに柿沢氏の進退次第では補選も行われる運びとなる。14万円の有料広告がきっかけで億単位の税金が使用される事態となりそうだ。
取材・文:岩崎 大輔
FRIDAYデジタル