武器を持たない人を殺すな!
Kです。
パレスチナ・ガザに対する極めてひどい攻撃が続いています。そして、イスラエルは「避難」という言い方で再びパレスチナ民衆をガザ北部からも追い出し二度と戻さず侵略しようとしています。1948年のナクバ(大災厄:イスラエルによる虐殺建国に伴いパレスチナの人々は一時的に居住地から追いだされるだけだと考えて着の身着のままで避難して以来難民となり、二度と自らの土地・故郷に戻れず75年間が過ぎています。)の再現です。また、言うまでもなく、この「避難」指示は、空爆等の中で実際には全く無理なことであり、かつその「避難」する人たちも途中で殺されています。さらに、この「避難」指示は、イスラエルによる虐殺のゴーサインだと考えます。許せません。
京都大学名誉教授・早稲田大学大学院教授でアラブ文学者でもあり、一貫してパレスチナ民衆に寄り添って闘っておられる、岡真理さんからの発信を、下記に貼り付けます。ぜひ熟読ください。
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京都の岡真理です。
ガザに対する地上侵攻を控えて、イスラエルはガザ北部の住民100万人以上に対し、命が惜しければ南部へ移動すべしと警告しました。これは、退避勧告ではなく、強制追放です。
(しかも、避難ルートでは、避難の途上にあった人々が攻撃され、70名が殺されています)。
10月7日以来、この間、ガザ/パレスチナとイスラエルの情勢をめぐる、テレビや新聞など企業メディアや主流メディアの報道は、エドワード・サイードが言う"Covering Islam"(イスラーム世界の出来事を報道(カバー)することによって、その事実をカバーする(覆い隠す)こと)そのものです。
これらの報道は、現在、起きていることを歴史的文脈から切り離し、問題の本質を隠蔽し、視聴者や読者がそれを理解することを、むしろ積極的に妨げています。
さらに、ハマースを「Human monster(人間の形をした化け物)、Human animal(人間の形をした獣)」(イスラエル大統領や軍高官のことば)と、彼らを悪魔化、非人間化することによって、ハマース主導の今回のイスラエル攻撃(その中には明白な戦争犯罪、国際法違反もあります)の一切合切を、人間性のかけらもない残忍非道な振る舞いとして描き出すことで、イスラエルによる比較を絶する、パレスチナ人に対するジェノサイドを正当化する報道となっています。
1990年8月の湾岸危機において、イラクのクウェイト侵攻後直ちに、クウェイト人の若い女性が、イラク兵がクウェイトの病院で保育器を破壊し、新生児を虐殺していると涙ながらに訴える映像が世界に公開され、残忍なイラク兵というイメージを作りました。しかし、それが完全なフェイク、アメリカが仕掛けた情報戦であったことは、今では有名な話です。
ガザにおける戦闘と並行して、これと同じ情報戦が、世界の都市で展開しています。
そのひとつが、ハマースが、ガザ境界付近のキブツや音楽祭で、子どもを斬首したり、焼き殺した、というものです。
たまたま手にした10月13日(金)付けの神奈川新聞朝刊3面の外報面掲載の共同通信発の記事が、ホロコーストを思わせる残虐な方法で殺された女子供について紹介しています(共同通信発ですので、神奈川新聞以外の地方紙にも、同様の記事が掲載されていることでしょう)。
*ハマース当局はこれを否定していますが、それについては、記事では述べられていません。イスラエルの犯罪に対しては必ず実行される「両論併記」の原則も、ここでは、忘れ去られています。
AP通信をはじめ、さまざまなメディアが、SNSや企業メディアで流通するこうした情報のファクトチェックをしていますが、「焼かれた子供」については、確認はとれていません。
これについて、以下、FOXニュースの記事がたいへん参考になります。
https://news.yahoo.com/watch-white-house-shuts-down-192649577.html?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAALhXZNufRBQfIA-LwLFyvPEftF0X-hyI4tkhPXcJzpes9epXf9dFzGfrx9mKVjaoZwsTMymUAQO3GGTs9IK359o9vz8jYe532Oya1g4BBQErxRWGcLBefZxUAo7mIlQyPjh0oPAHRkxCdWpXhoqHCvZjrbKaBjCHlLJ4wsJmtJGv
見出しは、
イスラエルの亡くなった子供の写真が真正なものかどうか問いただす記者に対して、ホワイトハウスの報道官が会見を打ち切り
というものです。
報道官カービーは、
「イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がその日のうちにXに投稿した、ひとりの血まみれの赤ん坊の死体と他の2人の子供の焼死体の写真を、米国が独自に検証したかどうか尋ねられ、
「私たちはこれらの画像を検証したり、確認したりするような仕事はしません。イスラエルの首相から送られてきたものであり、その信憑性を疑う理由はまったくありません」とカービーは述べ、写真が偽物である可能性を示唆されたことに動揺しているようだった。」
(FOXニュースより)
言い換えれば、報道官の発言は、これらの出来事が事実かどうかは未確認であり、事実であるという確証はないということを示唆している、ということです。
そして、これが事実にちがいないとする唯一根拠は、それが、ネタニヤフ首相が送ったものであるから、ということです。
(むしろ、だからこそ、その信憑性が疑われて然るべきと思われますが。)
共同発の記事も、ファクトチェックしないまま、イスラエル側の発言をそのまま掲載しています。
ISによる暴虐の記憶も新しく、「ハマース」が「イスラーム主義組織」であることから、老若男女の区別なく、彼らがISのように、斬首したり焼き殺したりする、というイメージは容易に受け入れられ、ハマースの悪魔化が進み、イスラエルを攻撃する者たちへのヘイトを煽ります。
ハマース当局は、民間人を人質にし、イスラエル兵を捕虜にしたことを公表し
(イスラエル兵については、「戦争捕虜」という表現が適切ですが、十把一絡げに「人質」と表現されていることにも注意が必要です)、それが彼らの作戦であったことを認めていますが、子どもを焼き殺した等については否定しています。
これについて、もうひとつ、参考になる記事があります。
世界最大の野外監獄からわずか5キロの地点で、夜通しのダンスパーティが行われていました。
(それが、あたかも、パレスチナとイスラエルの平和を願う音楽祭であるかのような投稿がSNSに氾濫しています。)
その「平和を願う音楽祭」で、ハイム・カッツマンという、パレスチナとイスラエルの平和を願う青年が射殺されたという記事を読み、この人物について調べてみました。
ハイム・カッツマンが、ハマースの攻撃で殺されたのは事実ですが、ガザ境界付近のキブツに暮らしており、その日は、近所の女性の友人宅にいて、侵入してきたパレスチナ人兵士に射殺されたということを、その女性の友人が証言しています。(自動翻訳で読めます、K)
https://www.journaldequebec.com/2023/10/10/une-femme-enlevee-par-des-terroristes-du-hamas-temoigne-1
女性の友人は隠れていたクローゼットから引き出されたあと、別のパレスチナ人兵士が、どこからか子供を連れてきて、彼女にその子を預け、彼女は、子どもとともにガザに連行されましたが、その後、子どもとともに解放されました。解放の理由は不明と彼女は語っています。
上の事例は、少なくともパレスチナ兵が子どもを殺さず、また、女性にそのケアを依頼し、連行したものの、その後、解放した、ということを示しています。
ガザのパレスチナ兵による奇襲攻撃において、子どもたちや民間人が殺害されたことは戦争犯罪です。
しかし、それは、ハマースを非人間化するために、SNSやメディアを使って積極的に拡散されている具体的な内容とは異なっているのではないかと、推測されます。
10月11日、パレスチナ系アメリカ人の歴史学者、ラシード・ハーリディ(コロンビア大学教授)は、そのレクチャーのなかで、アルジェリア独立戦争、ベトナム戦争、アイルランド問題等を例に出しながら、過去において、成功した民族独立闘争は、現地の闘い以上に、世界の主要都市における闘いが重要であることを認識していたと語っています。
この場合の、世界の主要都市における闘いとは、まさに、このような情報によるバトルであり、その重要性を熟知しているイスラエルは、プロパガンダを重要な戦略と位置付け、莫大な国家予算を傾注し、日頃から世界規模で展開しています。
日本も、そうした情報戦の舞台です。
これらのフェイクニュースは、イスラエルによるガザのジェノサイドを可能にするために、
そして、イスラエルに国際法違反の占領・封鎖を継続させ、パレスチナ人には難民の故郷帰還や主権をもったパレスチナ独立国家の建設という正当な権利がある、という歴史的事実を隠蔽し、世界世論を味方につけるためにすさまじい規模で展開されています。
こうした情報を根拠に、アメリカ政府をはじめEU各国も、ガザに対するイスラエルの無差別攻撃(戦争犯罪です)を無条件かつ全面的に支持しました。
パレスチナに公正な平和の実現を願う者として、こうした情報戦とも闘わなければなりません。
少なくとも、ハマースがイスラエル人の赤ん坊を焼き殺した、という情報については、それが検証・確認されたものではない、ということ、FOXニュースの記事が有力な根拠になります。
拡散していただければ嬉しいです。
そして、このフェイク情報が端的に示しているように、こうしたフェイク情報を大量に世界中に拡散することによって、イスラエルがガザに対するジェノサイドを正当化し、世界の支持を得ようとしているということに、市民の注意を喚起してください。
検証・確認のないまま、こうした情報を新聞記事にしたり、テレビで報道したりするメディア、イスラエルに対する支持を表明したりする政府は、ガザにおける、すでに前例を見ない大量虐殺の共犯者です。
岡 真理
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この子どもを焼き殺したということについては、テレビのワイドショーであるコメンテーターがこの事実は検証されていないと発言していました。
このような発言はほとんどないのが実態です。