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事件NHK
国立がん研究センター東病院の元医長 収賄容疑で逮捕 警視庁
国のがん研究の中核を担う千葉県柏市の国立がん研究センター東病院に勤務していた医師が、東京のメーカーの医療機器を手術で使う見返りに現金およそ170万円を受け取ったとして、警視庁に収賄の疑いで逮捕されました。
逮捕されたのは、千葉県柏市の国立がん研究センター東病院の元医長で、フロリダ大学の准教授を務める橋本裕輔容疑者(47)です。
また、東京 千代田区の医療機器メーカー「ゼオンメディカル」の元社長柳田昇容疑者(67)が贈賄の疑いで逮捕されました。
警視庁によりますと、橋本医師は国立がん研究センター東病院の肝胆膵内科医長を務めていた令和2年度に行ったカテーテル治療の手術で、「ゼオンメディカル」社製の「ステント」という機器を1回使うごとに1万円をもらう契約を結び、令和3年5月ごろ、合わせておよそ170万円を受け取ったとして収賄の疑いが持たれています。
「ステント」の販売価格は1本およそ17万円で、柳田元社長は部下に指示するなどして、病院側が「ステント」の有効性や安全性を確認する調査への謝礼を装い、実態としてはリベートとして現金を渡していたとみられています。
警視庁はほかの病院に対しても同じような営業手法で販売していたとみて、詳しいいきさつを調べることにしています。
国立がん研究センター東病院と橋本医師とは
国立がん研究センター東病院は、日本のがん医療・研究の中核を担う病院として、千葉県柏市に1992年に設立され、国内最先端のがんの検査・治療を行っています。
病院のホームページによりますと30を超える診療科に246人の医師が在籍していて、1日平均およそ1389人の外来患者を受け入れ、昨年度は4790件の手術を行っています。
警視庁によりますと、橋本医師はこの病院で2013年から非常勤の医師として働き始め、2019年から2021年7月まで肝胆膵内科の医長を務めるなどしていて、消化器のがんの早期発見や治療方法に関する研究などにも取り組んでいました。
また、直近ではアメリカのフロリダ大学ジャクソンビル校の消化器内科で准教授として勤務しています。
国立がん研究センターをめぐっては、東京 中央区にある中央病院の50代の医師が、病院の医療機器に関連するシステムの導入をめぐって特定の業者が受注できるよう便宜を図った見返りに、タブレット端末などを賄賂として受け取ったとして、去年、神奈川県警に逮捕され、ことし、有罪判決が確定しています。
この問題を受けて、国立がん研究センターは外部の有識者も含めた調査委員会を立ち上げ、再発防止策を検討しているさなかでした。
今回の逮捕を受けて、国立がん研究センターは新たに、内部調査や倫理講習の実施についても検討したいとしています。
今回の事件の構図は
警視庁によりますと、今回の事件で、贈賄側の医療機器メーカー「ゼオンメディカル」と国立がん研究センター東病院に勤務していた橋本医師との間では、カテーテル治療に使う「ステント」を1本使うごとに1万円を支払う契約が結ばれていました。
ステントの病院への販売価格は1本およそ17万円で、ステントを使った本数に応じて病院側がメーカーに料金を支払う仕組みだったため、橋本医師が使えば使うほど、メーカー側の売り上げも伸びるという構図でした。
一方で、1万円を支払う表向きの理由は、橋本医師がステントを手術で使った使用感や操作性の評価をメーカーにフィードバックする「市販後調査」の対価とされていましたが、警視庁は調査は適切に行われず実態が伴っていないとして、実質的には販売促進目的のリベートだったと判断しました。
橋本医師と柳田元社長は面識はなかったとみられますが、警視庁はメーカーが会社ぐるみでリベートを渡していたとみて捜査しています。
国立がん研究センター「誠に遺憾で深くおわび申し上げます」
逮捕を受けて、国立がん研究センターは「元職員が、業務に関する収賄の容疑で逮捕されたことは誠に遺憾であり、深くおわび申し上げます。この事態を厳粛に受け止め、警察の捜査に全面的に協力するとともに、再発防止に努めてまいります」というコメントを発表しました。
ゼオンメディカル「深くおわび 再発防止に取り組む」
元社長の逮捕を受けて、ゼオンメディカルは「多大なるご迷惑とご心配をおかけしていることを深くおわび申し上げます。二度とこのような不正行為を発生させないよう、再発防止に取り組むとともに、コンプライアンス体制の一層の強化に努めてまいります」というコメントを発表しました。