日本政府は、ハワイ山火事の被災者の救援支援として、総額200万ドル(約2億9000万円)規模の支援を決定しました。
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■はじめに〜8月8日、ハワイ・マウイ島で発生した山火事の犠牲者は、現時点で106人に! 米国の過去100年の山火事で最悪の死者数! 13日時点で、行方不明者は約1300人! 史上最悪の山火事の原因は、人災!? 背景に差し迫ったハワイ州内の住宅危機が!? ウクライナへの巨額支援とハワイへの被災地支援とどちらを優先するのか!? 優先順位を問われるバイデン政権!! もともと、ハワイに強い宅地再開発需要がある中で再開発業者によって、焼き出された避難民の人たちの人権が侵害されてゆく可能性も!
おはようございます。IWJ編集部です。
8月8日、ハワイ・マウイ島で発生した山火事の犠牲者は、15日、計106人になったとマウイ郡当局が発表しました。
※米ハワイ・マウイ島山火事の死者106人に(共同通信、2023年8月16日)
https://www.kanaloco.jp/news/international/article-1012585.html
ハワイ州のジョシュ・グリーン知事が、13日に、米CBSニュースに語ったところでは、死者の総数がわかるのは最長で10日後になるとのことです。13日時点で、行方不明者は約1300人です。
106人という死者は、アメリカで過去100年超に発生した森林火災では、最も数が多くなっています。
※米マウイ島火災、1300人が行方不明 発見と身元確認が困難と(BBC、2023年8月15日)
https://www.bbc.com/japanese/66506295
他方、日本政府は、ハワイ山火事の被災者の救援支援として、総額200万ドル(約2億9000万円)規模の支援を決定しました。
※【速報】ハワイ山火事 日本政府が約2億9000万円支援を発表(FNNプライムオンライン、2023年8月16日)
https://nordot.app/1064445925863047516
8月8日に、マウイ島内の4か所で火災が発生しました。火災の被害が集中したのは、1820年から1845年にかけてハワイ王国の首都が置かれていたマウイ島西部の歴史的な町、ラハイナで、町の8割が焼失したとも言われています。
ラハイナの人口は約1万3000人で、2000軒以上の建物が火災の被害を受け、このうち86%が住宅だったといいます。11日時点で、4500人が避難を強いられているとのことです。
※マウイ島の大規模森林火災、歴史的な町ラハイナの惨状 地元住民らが撮影(BBC、2023年8月11日)
https://www.bbc.com/japanese/video-66446921
※ハワイの山火事、なぜ大惨事に? 州史上最悪の災害を解く4つの疑問(朝日新聞、2023年8月13日)
https://digital.asahi.com/articles/ASR8F2SY0R8FUHBI003.html
ラハイナ住民の35%が焼き出されている、ということになります。
このラハイナの住民が14日までに、山火事の原因を作ったとして、地元電力会社ハワイアン・エレクトリック・インダストリーズ(HEI)と子会社を相手取り集団訴訟を起こしています。
訴状では、HEIが山火事が起きやすい気象条件を認識しながら通電を遮断しなかったため、「送電線からラハイナの致命的な火災が起きた」と主張しています。
※米ハワイ山火事、電力会社に集団訴訟 「送電継続で出火」―死者99人、捜索続く(時事ドットコムニュース、2023年8月15日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023081500181
8日は米国立気象局から、火災の危険を知らせる「レッド・フラッグ」と呼ばれる警報が出されていました。これは1. 高い気温、2. 非常に低い湿度、3. 強い風――という三つの状況が起きていたことを意味します。
バイデン大統領は、10日、ハワイ州の被災者や地元当局に対し、連邦政府による緊急支援が可能となる大規模災害を宣言しましたが、2013年に引退したロン・ポール元下院議員(テキサス州選出)は、14日、ハワイの大規模災害とウクライナ支援240億ドルを比較しつつ、「マウイ島の惨状を映した最近の映像を見ながら、バイデン大統領がウクライナにあと240億ドル必要だと議会に訴えるのを聞くのはつらい」とバイデン大統領を非難しています。
※As Maui Burns, Biden Demands Another $24 Billion…For Ukraine!(平和と繁栄のためのロン・ポール研究所、2023年8月14日)
http://ronpaulinstitute.org/archives/featured-articles/2023/august/14/as-maui-burns-biden-demands-another-24-billion-for-ukraine/
連邦緊急事態管理局(FEMA)は、壊滅的被害を受けた島西部の観光地ラハイナの再建には、推計で少なくとも55億2千万ドル(約8千億円)が必要だと発表しています。
※ハワイの山火事、死者93人に ラハイナ再建に8000億円必要(毎日新聞、2023年8月13日)
https://mainichi.jp/articles/20230813/k00/00m/030/017000c
アメリカ人全体の55%以上がウクライナへの援助継続に反対し、共和党員では、4人に3人がウクライナへの援助拡大に反対している中で、バイデン大統領が反対の声を押しきり、240億ドルのウクライナへの追加支援を強行しようとしている、まさにそのときに、ハワイで大惨事が起きたのですから、それでもウクライナ支援を強行しようとするバイデン大統領に対して、ロン・ポール元下院議員が嘆くのも、理解できます。
ハワイ州知事は、民主党のジョシュ・グリーン知事です。
グリーン知事は、この大規模火災の起きる直前の7月17日、「住宅問題に関する宣言」を発表しています。
※PROCLAMATION RELATING TO HOUSING(ハワイ州、2023年7月17日)
https://governor.hawaii.gov/emergency-proclamations/
この宣言の中で、グリーン知事は、ハワイ州における住宅問題が深刻で「住宅費の増加により、地域社会は貧困のリスクにさらされており、住民の4分の1がホームレスになる危険にさらされている」と述べています。
さらに、「ハワイで住居を確保できない人々の中には、医療、建設、教育などの専門職など、ハワイで働くために必要不可欠な労働者が含まれており、彼らはハワイから離れるか、そもそもハワイで働く機会を断らざるを得ない。住宅危機により、当州の有能な人材が本土の物価の安さに流出し、熟練労働者を惹きつける市場から自らを追い出している。2022年には毎日20人が州を離れた」と述べ、住宅危機が、ハワイ州の緊急課題の一つであることを強調しています。
このグリーン知事の「住宅問題に関する宣言」の目的は、次のように規定されています。
「本規則は、『住宅に関する知事の緊急宣言』(以下、「宣言」)にもとづき、宣言の下で進行が許可されるプロジェクトの認定を通じて、住宅の建設、開発、再開発を迅速に行うことを目的としている」
この宣言をグリーン知事が発出したタイミングで、米国史上最大の山火事が発生しました。
この山火事の後には、当然、焼け跡となった土地の、再開発問題が浮上します。
このグリーン知事の宣言にもあるように、もともと、強い宅地再開発需要がある中で、この火事を「渡りに船」とばかりに、再開発事業の好機とみて、再開発事業者達が動き出し、焼き出された避難民の人たちの人権が後回しにされてゆく可能性があるのです。
実際、NBC放送など米国メディアは15日(現地時間)、不動産投資家がマウイ火災生存者に接近して土地や家を買うという提案の連絡をしていると報じているのです。
※ハワイ山火事被害者に「家を売れ」不動産からの連絡殺到…住民「吐き
気がする」(中央日報、2023年8月16日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/173074c079aa7b18796f4122acd998180edce25b
マウイ島の山火事後の住宅再開発問題が、どのように進展するのか、注目されます。