静岡市清水区尾羽の国道1号静清バイパス「清水立体工事」で設置作業中の橋桁が落下し、8人が死傷した事故で、国土交通省静岡国道事務所が設置した事故調査委員会は8日、西側での橋桁降下作業中に当初の予定位置よりも約10センチ外側にずれて降下させていたことに作業員が気付き、調整装置で修正作業をしていた際に西側から落下した

 

 

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2023.8.9 あなたの静岡新聞

10センチずれ修正中落下か 静岡・清水区の橋桁事故 事故調査委発表

 

 静岡市清水区尾羽の国道1号静清バイパス「清水立体工事」で設置作業中の橋桁が落下し、8人が死傷した事故で、国土交通省静岡国道事務所が設置した事故調査委員会は8日、西側での橋桁降下作業中に当初の予定位置よりも約10センチ外側にずれて降下させていたことに作業員が気付き、調整装置で修正作業をしていた際に西側から落下したとみられる、と発表した。作業員が修正を試みた際「橋桁が動かなかった」との説明をしていることも新たに明らかになった。

 

 

調査で判明した内容を説明する舘石和雄事故調査委員長=8日午後、静岡市葵区の静岡国道事務所

 

 

 

 橋桁が落下するまでの工程(西側の橋脚上)

 

 

静岡市内で同日開かれた第2回会合の後、舘石和雄委員長(名古屋大大学院工学研究科教授)が述べた。
 事故調によると、7月5日夜から事故のあった6日未明にかけ、橋脚の内側から外側に向けて仮設レールで所定の位置の直上まで動かす横取り作業を行った後、枕木の役割を果たすサンドル(1個高さ15センチ)と油圧ジャッキを用いて、4~5人の作業員が現場周辺で降下作業を行っていた。
 高さ1メートル余りの降下量のうち、約90センチ降下させた時点で、橋桁が外側に約10センチずれていることが分かり、鉛直ジャッキと水平ジャッキを組み合わせて橋桁を水平方向に動かすための調整装置をセット。調整装置を作動させて内側に押そうとしたが、橋桁は動かず、操作をやり直すため一度ジャッキダウンし、再度持ち上げている途中に落下した可能性が高いという。
 事故調が工事を担当した名村造船所と日本鉄塔工業の共同企業体(JV)側に聞き取ったところ、最初に調整装置を作動させて内側に押そうとした際「装置は作動したが、橋桁が動かなかった」と話したという。
 舘石委員長は「(調整装置の設置方法など人的ミスなのか、調整装置の故障なのかなど)まさにその点を今後調べていく方向だ」と原因究明の方向性を明らかにした。西側のセッティングビーム(仮受け桁)については「今のところ設計計算書などをチェックする限り、特に瑕疵(かし)は見つかっていない」と舘石委員長は述べた。
 今後は落下した橋桁の挙動などをコンピューター上で再現するなど客観的な手法で検証することなども視野に入れる。次回の事故調は1カ月後をめどに開く予定という。

 

 

 6日午前3時10分ごろ、静岡市清水区尾羽の国道1号静清バイパスの工事現場で、「橋桁(げた)が崩れてけが人がいる」と110番通報があった。警察や消防によると、バイパスの高架化工事にあたっていた作業員ら30~70代の男性8人がけがをして7人が救急搬送された。このうち2人が死亡し、2人が重傷という。

 静岡県警清水署によると、死亡したのは室田久生さん(53)と前田要さん(51)。作業員約20人と警備員約10人の約30人が土台となる橋脚に鉄製の橋桁を設置する工事をしていたが、何らかの原因で橋桁が約9メートル下の地面に落下したという。一般の人や車両が巻き込まれた情報はないという。市消防局によると、男性8人は橋桁の上にいたとみられる。

 国土交通省静岡国道事務所によると、落ちた橋桁は重さが140トン、大きさは長さ60メートル、高さと幅は2・5メートル。静清バイパスは静岡市の駿河区と清水区を結ぶ国道1号の延長24・2キロのバイパス。事故が起きた「清水立体工事」は、静清バイパスのうち同区横砂東町―八坂西町の区間(延長2・4キロ)を高架化する同省の事業で、渋滞解消などのために2016年に開始された。現場は複数の共同企業体が施工しており、26年春ごろに上り線が開通する予定だった。

 同事務所によると、事故のあ…

 

 

 

 

橋桁落下事故、過去にも 広島では15人死亡、刑事責任問われた例も

 


橋桁が落下した、国道1号静清バイパスの工事現場=2023年7月6日午前9時19分、静岡市清水区、朝日新聞社ヘリから、柴田悠貴撮影

 

 

 静岡市の工事現場で6日未明に起きた橋桁の落下事故。橋の工事をめぐっては、過去にも橋桁が落下することによる大事故が起きている。

 1991年3月には、広島市の新交通システム「アストラムライン」の建設中、橋脚上にジャッキで下ろそうとしていた鋼鉄製の橋桁(長さ63メートル、重さ60トン)が約10メートル下の県道に落下。信号待ちをしていた車11台が押しつぶされた。橋桁と一緒に転落した作業員も含め15人が死亡、8人が重軽傷を負った。業務上過失致死傷罪などに問われた元請け業者の3人の有罪が確定している。

 

 

 98年6月には、愛媛県今治市を走る「瀬戸内しまなみ海道」の来島海峡大橋の工事現場で、仮設橋桁が落下。7人が死亡、1人が重傷を負った。

 

 近年では16年4月、神戸市の新名神高速道路の延伸工事で、鋼鉄製の橋桁(重さ約1380トン)が下の国道に落ちて作業員2人が死亡、8人が重傷を負った。

 工事会社の元現場所長が業務上過失致死傷罪に問われ、神戸地裁は19年、地盤の弱い河川敷での工事だったのに、事前に適切な地盤調査や改良の措置をとらなかったと指摘し、禁錮3年執行猶予5年(求刑禁錮3年6カ月)の判決を言い渡した。