たんぽぽ舎です。2023年7月20日(木)【TMM:No4819】地震と原発事故情報

 

陸自のヘリ墜落・銃乱射で取材自粛する企業メディア(上
 | 報道各社による報道加害はなくならない
 └──── (浅野健一)

◎ 六月二九日、横浜市の大学生が交際していた男性に殺害された事件
で、テレビ・新聞は翌日、遺族が代理人弁護士を通して発表したコメン
トの全文を報じた。遺族は「誤った情報がまことしやかに報道されてい
ること。悪意のある情報操作。私たちの住まいはもちろんのこと、○○
の祖父宅にまで押しかける報道陣のモラルのなさ。この全てのことに疑
問悲しみ憤りがあります」などと訴えた。
 「無念でしかない」という心情を綴ったコメントは「好奇心を満た
ための憶測や誤った情報で娘をこれ以上傷つけないでください。どうか
そっとしておいてください。お願いします」と結ばれていた。

 私は半世紀前から、メディア・フレンジー(集団的人権侵害取材)
批判してきたが、報道各社による報道加害はなくならない。
 この女性の場合も、海外で被害に遭っていたら、外務省が遺族に「
名・匿名」希望を確認し、メディア取材も抑制できたが、国内の場合、
警察が記者クラブに個人情報を「広報」するので、被害者も晒し者にさ
れてしまう。

◎ 一般市民の被疑者・被害者はメディアによって派手に報道される
が、政治家・公務員や企業メディア社員の場合、取材・報道はかな
自粛される。

 今年一月一六日に東京・高島平警察署のトイレで巡査部長が拳銃で
殺。一月二七日には、国会に近い永田町のビルで、機動隊員がトイレの
個室で拳銃による自殺をした。
 五月五日には首相官邸守衛所のトイレで二五歳の機動隊員が拳銃自
した。三月二四日には、成城署で実弾入りの拳銃の銃口を向けて、警官
が警官を脅した事件もあった。政治の中枢で起きた警察官の銃刀法違反
による事件なのに、関係者への取材はほとんどなかった。
 警視庁は米ブルームバーグ通信の取材に、警官の拳銃自殺を「広報
ていない」と答えた。この「広報」とは、庁内にある「七社会」など三
つの記者クラブへの広報(公表ではなく記者クラブ限定の便宜供与)のことだ。

◎ 市民を守るはずの自衛隊員による深刻な事故と事件も相次いだ。
 四月六日午後、沖縄県の宮古島付近で十人が搭乗した陸上自衛隊U
60JAヘリコプターが行方不明となった。
 陸自は事故の発生の後、第八師団(熊本市に司令部)師団長の坂本
雄一陸将の氏名、肩書を公表しただけだった。
 陸自トップの森下泰臣陸上幕僚長は四月一三日の会見で、一〇人の
ち九人の氏名が公表されていないことに関し、「隊員の家族を守るのも
私の責務。総合的に勘案し、その都度判断したい」と述べた。
                       (下)に続く