アカデミー賞受賞俳優スーザン・サランドンさんは、人工知能(AI)は業界の「すべての人に影響を与える」と
「CEO報酬:高すぎ、脚本家報酬:安すぎ」など様々な主張が書かれたプラカードで行進する、「アメリカ脚本家組合(WGA)」と「映画俳優組合-アメリカ・テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)」の人たち(14日、ロサンゼルス)
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20230715BBCNEWS
アメリカの俳優労組ストライキ、「年末まで続く可能性」 撮影への影響も
米ハリウッドで14日、動画配信大手や制作会社などに利益の公正な分配と労働条件の改善などを求めるストライキに、数千人の俳優が参加した。ストが「年末まで続く可能性がある」という声も出ている。
俳優労組「映画俳優組合-アメリカ・テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)」によるストは、14日に始まった。同日朝からハリウッドやニューヨークの大手映画スタジオ各社前で行われたピケッティングスト(破り監視・スト参加要請の行動)には、俳優のジェイソン・サデイキスさんやスーザン・サランドンさんなどが加わった。
ハリウッドでは5月から、脚本家労組「アメリカ脚本家組合(WGA)」によるストも続いている。脚本家たちは賃金や労働条件の改善を求めているほか、人工知能(AI)の進歩で仕事が減らないよう保護する体制が不十分だと訴えている。
俳優と脚本家のストが同時に行われるのは、1960年以来63年ぶり。
このストにより、現在制作中の主要映画作品などに影響が出る可能性がある。
影響があるとみられるのは、映画「アバター」「グラディエーター」「デッドプール」などの続編、ドラマ「ストレンジャー・シングス」やアニメ「ファミリー・ガイ」、「ザ・シンプソンズ」の新シーズンなど。
ストが続く間は、俳優は映画への出演や、映画のプロモーション活動ができなくなる。
プレミア・イベントやプロモーション用インタビュー、「コミック・ブック・コンベンション(コミコン)」といった大型イベントはすでに中止されたり、スケジュール変更や規模が縮小されるなどしている。9月予定の米エミー賞受賞式が延期される可能性もある。
ストは「年末まで続く可能性も」
米HBOのドラマシリーズ「Succession」(邦題:メディア王 〜華麗なる一族)の主演俳優ブライアン・コックスさんは、ストは「年末まで続く可能性がある」とBBCに話した。
「動画配信というものが、パラダイムを変化させた」と、スコットランド出身のコックスさんはBBCのニュース番組「ニュースキャスト」に語った。
「私たちを締め出して、たたきのめそうとしている。ストリーミング(配信)は金のなる木だが、(配信各社は)利益を脚本家や出演者とは共有したがらない」
俳優側と、撮影スタジオや動画配信大手との新たな契約交渉は、13日に決裂した。SAG-AFTRAは制作会社を代表する映画製作者協会(AMPTP)について、「公正な取引を提供する気がない」と非難している。
約16万人の出演者は真夜中に仕事を止め、5月2日からストに入っているWGAの動きに加わった。WGAには1万1500人の脚本家が加入している。
組合員とその支援者たちは14日正午までに、ロサンゼルスやニューヨークなどの主要なスタジオや動画配信大手のオフィス前に集まった。
ストは映画界やテレビ業界の一部の大物セレブからも支持を得ている。13日にスト実施が発表されると、英ロンドンで行われていた映画「オッペンハイマー」のプレミア・イベントでは、出演俳優のマット・デイモンさんやキリアン・マーフィーさん、エミリー・ブラントさん、フローレンス・ピューさんらが退場した。
SAG-AFTRAとWGAはスタジオや動画配信サービスに対し、賃金やロイヤルティの改善、年金や健康保険料の引き上げ、業界におけるAIの使用に関する保護措置を求めている。
一方、「全米監督協会(DGA)」は6月に交渉を成立させ、ストライキには参加していないが、ピケッティング(スト破り監視・スト参加要請の行動)をしている人たちを「強く支持する」としている。
労組の要求
今回のストの背景には、デジタル配信時代への移行に対する不安や、テクノロジーのさまざまな変化などもある。
ニューヨークでピケッティングに参加した、アカデミー賞受賞俳優のスーザン・サランドンさんは、「AIはあらゆる人に影響を与える」とBBCに語った。
「いま解決しなければ、将来どうやって解決するのか。その思いは確実に、ずっとあった」
「将来のために仕組みを作っておく先見の明がないのなら、大変なことになる。トップダウンでは何も変わらないのは明らかなので、底辺にいる私たちにかかっている」
脚本家も俳優も、以前よりはるかに収入が減り、インフレの影響で契約金が目減りしていることに不満を抱いている。
俳優の場合、一つの役に対する報酬が減っているため、数年前と同程度の収入を得るには仕事を増やす必要が生じている。
脚本家の契約は、以前より短期間かつ不安定な内容に変化している。改稿作業や新作への着手が、報酬の対象にならないことも多い。
SAG-AFTRAのフラン・ドレシャー会長は13日、「私たちは、非常に強欲な存在の犠牲になっている」と語った。「共にビジネスに取り組んできた相手が、私たちをこのように扱っていることにショックを受けている」。
ホワイトハウスは14日に声明で、ジョー・バイデン大統領は「俳優を含むすべての労働者が公正な賃金と福利厚生を受けるに値すると考えている」とした。
「大統領は労働者のストライキを行う権利を支持し、両者が互恵的な合意に達することを望んでいる」と、ホワイトハウスのロビン・パターソン報道官は述べた。
イギリスのSAG-AFTRAの姉妹組合「エクイティ」に加入している俳優は、イギリスの雇用法に基づき、通常通り仕事を続けなくてはならない。その中には、HBOドラマ「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」の出演者も含まれる。
エクイティは、アメリカで行われるはずだった撮影など制作作業をイギリスに移し、ストの影響を回避しようとする動きは、「非常に注意深く監視」し続けていくと、アメリカの制作各社に通達している。
(英語記事 Hollywood strike could last until 'end of the year')