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日刊IWJガイド・非会員版「米国で初の全国規模のPFAS汚染調査!『米国の水道水の少なくとも45%には、1種類以上のPFAS化合物が含まれていると推定』」2023.7.9号~No.3951号
おはようございます。IWJ編集部です。
米国地質調査所(USGS、United States Geological Survey)は、7月5日、「水道水調査、全米でPFAS『永遠の化学物質』を検出--米地質調査所、水道水の少なくとも45%に1種類以上のPFASが検出されると推定」と題する報告を発表しました。
「米国地質調査所(USGS)の新しい調査によると、全米の水道水の少なくとも45%には、パーおよびポリ過フッ素化アルキル化合物(PFAS)と呼ばれる化学物質が1種類以上含まれていると推定されている。PFASには1万2000以上の種類があり、現在の検査でそのすべてが検出できるわけではない。USGSの調査では、32種類の検査を行った」。
USGSの調査は、公共水道の水道水に含まれるPFASを、全国規模で、検査し比較した初めての例です。
USGSが調査した32種類のPFAS化合物のなかで、最も多く検出された化合物は「PFBS、PFHxS、PFOA」であり、「PFOSとPFOAは、EPA(※IWJ注)が2022年に発表した暫定的健康勧告を、今回の調査で検出されたすべてのサンプルで超えていた」ということです。
(※IWJ注)EPA:米国環境保護庁の略称(United States Environmental Protection Agency)
ほとんどのPFAS曝露は、「都市部や潜在的なPFAS発生源の近く」においてみられ、「USGSの科学者は、水道水中にPFASが観察されない確率は、農村部では約75%、都市部では約25%と推定」しています。
※Tap water study detects PFAS 'forever chemicals' across the US -- USGS estimates at least 45% of tap water could have one or more PFAS(USGS、2023年7月5日)
https://www.usgs.gov/news/national-news-release/tap-water-study-detects-pfas-forever-chemicals-across-us
EPAは、ウェブサイトで、「PFASの人の健康と環境リスクに関する現在の理解」と題して、特定レベルのPFASへの曝露による「既知の健康への影響(の可能性)」を紹介しています。
・生殖能力の低下や妊娠中の女性の高血圧の増加などの生殖への影響。
・低出生体重、思春期の早まり、骨の変化、行動の変化など、子どもの発達への影響や遅れ。
・前立腺がん、腎臓がん、精巣がんなど、一部のがんのリスクの増加。
・ワクチン反応の低下など、感染症と闘う体の免疫系の能力の低下。
・体の自然なホルモンへの干渉。
・コレステロール値の増加または肥満のリスク。
EPAは、これまでの調査研究ではよく知られたPFAS化合物にしか焦点が当たっていないこと、PFASの種類と用途は時間の経過とともに変化することなどから、PFASへの曝露に関連する健康への影響は特定することが困難だ、と付け加えています。
※Our Current Understanding of the Human Health and Environmental Risks of PFAS(EPA)
https://www.epa.gov/pfas/our-current-understanding-human-health-and-environmental-risks-pfas
日本でも徐々に注目を集め始めているPFAS汚染の問題に、米国は本腰を入れるようになってきました。
PFASは別名「永久化学物質(forever Chemicals)」といわれるほど分解されにくく、安定性が高いため、1940年代ごろから、焦げ付かないフライパンなどの表面処理剤や、撥水剤、消化剤などに使われてきました。
便利な反面、一度人体に入ると分解されにくく、長期にわたって残留することがわかっています。特に健康リスクが高いとされるPFOSは、2002年に大手メーカーの3Mが自主的に製造を中止し、米国環境保護庁も同年「重要新規利用規則(SNUR)」の対象物質に指定しました。
PFOSは、米軍などが使う泡消化剤にも含まれていたことから、日本ではまず、沖縄の米軍基地周辺地にPFAS汚染が問題になりました。
東京でも、市民団体「多摩地域の有機フッ素化合物(PFAS)汚染を明らかにする会」が横田基地周辺の住民650人の血中PFAS濃度を計測し、「血液調査に参加したほぼ全員から、PFASが検出された」という結果を報告しています。
※東京都下の水道水が危ない! 米軍と自衛隊の基地による汚染か!? 多摩地域住民650人中、半数以上から健康リスクのある高濃度血中PFASを検出!〜6.8「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」記者会見 ―原田浩二 京大准教授ほか 2023.6.8
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/516456
※これまでIWJが取材してきたPFAS汚染に関する記事は以下から御覧になれます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/pfas
米国から、在日米軍を経由して、日本に持ち込まれ、土壌と地下水を汚染しているPFASに対して、日本はどう向き合っていくのか。
PFAS汚染の現状を、真剣に直視すべき時を迎えています。