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自治体「マイナ激務」で早くも悲鳴…無責任政権“総点検”丸投げ、尻ぬぐい仕事が次々発生
自治体に丸投げ(河野デジタル担当相(左)と加藤厚労相)/(C)日刊ゲンダイ
【集中企画・マイナ狂騒(3)】
マイナカードのトラブル続出を受け、岸田首相が立ち上げた「マイナンバー情報総点検本部」(本部長・河野デジタル相)は「秋までの総点検」を掲げている。そのため、膨大な点検作業を担う自治体などからは悲鳴が上がっている。
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「マイナカードの総点検は岸田政権の命運がかかっている。確実に秋までに完了させ、しかも点検後にトラブルが発覚することも許されない。国は迅速かつ精度の高い点検を自治体側に求めていくことになります」(霞が関関係者)
総務省が自治体との連絡役として60人の職員を設置したのも“お目付け”ということだ。しかし、岸田政権が無責任なのは、総点検を自治体に“丸投げ”していることだ。 「国は期限だけを示し、手法や基準は示さず、現場に丸投げ。どうやって作業を進めるのか、自治体は頭を抱えています」(都内自治体関係者)
■小池都知事や保坂世田谷区町もカンカン!
早速、かみついたのが小池都知事だ。「現場の多くは区市町村で非常に膨大な量になる。『秋まで』は、なかなか厳しいのではないか。
(国は)作業の方針を明確に示してほしい」とチクリ。
さすが、風を読むのに長けている。
世田谷区の保坂区長も「自治体の資源を短期的に集中させ、人海作戦で検証してくれというのは筋が違う。どう考えても不合理だ」とカンカンだ。
引っ越しシーズンは大混雑が必至…
総点検以外にも自治体ではマイナンバー関連の負荷が山積みだ。 【自主返納】 保有することへの「不安」からマイナカードの自主返納が急増している。広島市は23日、自主返納が5月以降、107件に上ったと発表。石川、富山、神奈川県平塚市でも自主返納が急増している。返納対応は信頼されるカードなら、発生しなかった業務だ。
【資格確認書】
来年秋に予定されている現行の健康保険証の廃止後、マイナ保険証を持たない人に発行される「資格確認書」は、膨大な件数になりそうだ。現在、マイナカード保持者は人口の約73%。このうち健康保険証として利用登録しているのは約7割で人口の半分程度だ。仮に登録数が横ばいで推移すれば、自治体は毎年、住民の半数に資格確認書を交付するハメになる。世田谷区なら約45万人分だ。
「資格確認書発行課」のような新部署がつくられるかもしれない。
【引っ越し】 引っ越しの際、新自治体への「転入届」の提出は、マイナポータルでは行えないため、引っ越す日から14日以内に来庁し、提出する必要がある。「これを怠れば、マイナカードは失効します」(デジタル庁の担当者)。
カードが失効すれば、再発行に費用は1000円、期間は1カ月以上かかる。病院に行けば、「無保険者扱い」になり、10割負担を請求される。失効を避けたい住民が押しかけ、引っ越しシーズンの役所は大混雑が必至だ。 「共通番号いらないネット」事務局の宮崎俊郎氏がこう言う。 「岸田首相が精度の高い総点検をしたいなら、マイナンバー制度の運用をいったん、停止してから行うべきでしょう。スケジュールについても自治体と相談し、無理のないものにする必要がある。結局、来秋の保険証廃止の方針を維持しているので、逆算して今秋までの総点検となっているのでしょう。時間ありきの点検ではうまくいくはずがありません」 “マイナ激務”に追われる自治体の職員が気の毒でならない。
マイナ保険証ついに“知事の乱”…推進派首長まで「廃止の時期再考を」とポンコツ政権に反旗
マイナ保険証を高く評価しているが…(宮城県の村井嘉浩知事)/(C)共同通信社
【集中企画・マイナ狂騒】#4
底なしマイナトラブル対応のマズさから、支持率急降下の岸田政権。日経新聞の世論調査によると、政府対応は「不十分」が76%に上る。共同通信の調査では7割が来秋の保険証廃止に反対だ。こうした世論の風を読んだのか、“モノ言う首長”が政府に注文をつける動きが出てきた。
「マイナ保険証」に医療費10割負担だけでは済まない大問題! 7割の病院でトラブルあり
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来年秋に現行の保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化する政府方針について、宮城県の村井知事は26日の定例会見で「国民が不安に思っている以上は丁寧な対応が必要。(政府は)国民の声をよく聞いて、開始時期をよく考えてほしい」と語った。 村井氏はマイナカードの推進派として知られる。運転免許証との一体化は「必ず携帯するようになる」と大賛成。マイナ保険証も「メリット」を強調していた。昨年10月、河野デジタル相がマイナ保険証への一本化を発表した時、村井氏は「医療や薬のデータが一元管理でき、個人も社会も便利になる。医療費の抑制にもつながる」と県独自の普及策を明らかにした。そんな推進派知事でさえ政府に開始時期の再考を求めたのである。 「マイナ保険証のメリットを高く評価し、普及を進めたい意向の村井知事が“待った”をかけたのは、それだけ来秋のスタートが無理筋だということです」(「共通番号いらないネット」事務局の宮崎俊郎氏)
推進派まで「保険証廃止の時期再考を」
来秋の廃止は7割が「ノー」、マイナ保険証統一はしっかり検討してから(河野太郎デジタル相)/(C)日刊ゲンダイ
岩手県の達増知事も23日、「来年秋の保険証廃止は時期尚早。時期にこだわらずしっかり検討してほしい」とクギを刺した。9月投開票の県知事選を控え、世論を気にしたのかもしれないが、7割に上る廃止反対の意見を踏まえ、首長が政府にモノ申すのは当然だ。
全国知事会の平井会長(鳥取県知事)は先月、河野デジタル相に対し、「国民のマイナンバー制度への信頼を損ないかねない」としてトラブルの再発防止を訴えた。「歯に衣着せぬ」物言いで知られる島根県の丸山知事は相次ぐトラブルに「ざるにも程がある」とバッサリ。世論の風を読むのがうまい小池都知事は、マイナンバー関連の総点検について「秋までは厳しいのではないか」と苦言を呈している。
「住民の声をちゃんと聞いている首長なら、政府のマイナトラブルを巡る対応のマズさについて黙っていられないでしょう。この先、岸田政権の対応に異議を唱える首長が相次いでもおかしくありません」(宮崎敏郎氏) “知事の乱”が岸田政権を揺さぶる――。
全国のモノ言う首長が、来秋の保険証廃止に「ノー」を突きつければ、岸田政権は窮地に立たされるに違いない。