出産後に夫から暴力を受け、離婚したという30代の女性

「現行制度でも信頼関係のある父母は協力して育児している。

信頼関係がないのに法律で共同親権を強制されても話し合いは不可能だし、子を紛争に巻き込む

 

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2023年6月15日 20時18分東京新聞

「虐待から逃れられなくなる危険がある」…離婚後の「共同親権」 弁護士グループが問題点訴える

共同親権の問題点について記者会見する弁護士グループ=15日、東京・霞が関で

 

 離婚後の父母がともに子の親権を持ち続ける「共同親権」の導入が法制審議会(法相の諮問機関)で議論されていることを受け、弁護士グループが15日、東京都内で記者会見し、「導入ありきの議論となっており、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待の被害者が逃れられなくなる危険がある」と訴えた。

 

 会見したのは離婚やDV、虐待の問題に詳しい弁護士約40人が参加する「共同親権を正しく伝えたい弁護士の会」の呼び掛け人5人。石井真紀子弁護士は「共同親権の導入国では、被害の継続が問題になっている。法制審はDVを例外的なケースのように扱っているが、現場では頻繁に起きている」と強調した。

 

 被害の当事者もオンラインで会見に出席。身体・精神への暴力を理由に夫と別れた30代の女性は、骨折などをしていないため、裁判所から元夫と子どもの面会交流を命じられていると説明。「共同親権になったら、彼が私をより頻繁に呼び出すことは目に見えている」と懸念した。同会は今後、離婚後も被害が続いているケースで、共同親権の導入で状況が悪化しかねない事例を集め、発信する。

 

 法制審家族法制部会は5月、協議離婚する父母が合意した場合、共同親権を認める方向で、制度設計の議論を開始。今月上旬には、裁判で離婚する父母に関し、一方が反対でも、裁判所が共同親権を決定できるとする制度案が法務省から示された。(大野暢子)

 

 

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2023年5月23日 20時08分

「DV被害者が居場所を隠せなくなる」…離婚後の共同親権に「子の居所指定権」案が浮上 支援団体が反対

 

 

共同親権の問題について記者会見する認定NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長(中)ら

 

 

 法制審議会(法相の諮問機関)が導入を議論している離婚後の「共同親権」を巡り、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者らを支援する民間の4団体が23日、都内で記者会見を開いた。子どもがどこに住むかを決める民法上の「居所指定権」を別居親にも与える案が浮上していることについて「DVや虐待の被害者を危険にさらすものだ」と反対を表明した。

 

 ひとり親世帯を支援する認定NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事長で、法制審家族法制部会委員でもある赤石千衣子氏は会見で「居所指定権を含む共同親権が導入されたら、DV被害者は居場所を隠せなくなる」と懸念。病児保育を運営する認定NPO法人「フローレンス」会長の駒崎弘樹氏も「国民がリアルタイムで内容を知ることのできない会合で、DVや虐待の実態と懸け離れた議論が行われている」と批判した。

 

 現行民法では、婚姻中は父母の双方が親権者となり、子の世話や教育、居所指定などを行う「共同親権」を規定。離婚後は、父母のいずれかが親権者となる「単独親権」を定めている。

 

 部会では現在、話し合いで別れる協議離婚のケースで父母が合意した場合、共同親権を認める方向で議論が進む。将来的には、父母の一方が共同親権に反対でも、裁判所が命令できる仕組みになる可能性もある。

 

 赤石氏らが23日の会見で特に問題視したのは、法務省が16日の家族法制部会で示した検討資料。日常的な行為や緊急の対応は一方の親だけでもできるが、子の居所指定は共同で行うとする婚姻中の原則を、離婚後も適用するとの考え方が例示された。

 

 会見には、出産後に夫から暴力を受け、離婚したという30代の女性も出席。「現行制度でも信頼関係のある父母は協力して育児している。信頼関係がないのに法律で共同親権を強制されても話し合いは不可能だし、子を紛争に巻き込む」と訴えた。(大野暢子)