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東京五輪談合 組織委元次長が博報堂と私的契約 出向終了直後に
東京オリンピック・パラリンピックを巡る談合事件で、組織委員会大会運営局の元次長、森泰夫容疑者(55)=独占禁止法違反容疑で逮捕=が組織委への出向終了直後にコンサルタント会社を設立し、広告大手「博報堂」(東京都港区)とコンサル契約を結んでいたことが関係者への取材で判明した。博報堂は元次長や他の6社とともに東京地検特捜部の捜査を受けている。元次長はこの6社のうちの1社と顧問契約を結んでいたことが既に判明しており、談合疑惑がある落札7社のうち2社と私的な契約関係にあったことになる。
博報堂とは別に、元次長と契約を結んでいたのはイベント会社「セレスポ」(豊島区)。組織委職員は「みなし公務員」で、就業規定は職務に関連して不当に利益を得ることを禁じている。出向終了直後の特定企業との契約は癒着が疑われかねないが、関係者によると、元次長は博報堂、セレスポとの契約について「自身の経験や知見を期待されて契約を結んだ。組織委での職務とは無関係」と特捜部に説明しているという。
日本陸上競技連盟から組織委に出向していた元次長は、東京五輪・パラが閉幕して約半年後の2022年3月末に出向を終えた。陸連には復帰せずに退職し、翌4月21日に自身が代表のスポーツ事業関連のコンサル会社を東京都千代田区に設立した。
関係者によると、元次長は五輪が閉幕した21年夏ごろからコンサル会社設立の検討を始め、博報堂との契約は同社から依頼されて結ばれたという。博報堂は取材に「個別の取引に関しては答えられない」とし、契約金額や期間などを明らかにしなかった。一方のセレスポは22年4月から1年間の契約で元次長を顧問として迎えたが、特捜部などの家宅捜索を最初に受けた同年11月に契約を途中解除した。同社は顧問料などは非公開とした上で「スポーツ事業に関する助言などを受けた」と説明している。
特捜部は今月8日、元次長の他にセレスポ専務取締役の鎌田義次容疑者(59)ら3人を独禁法違反で逮捕した。博報堂側は容疑を認めているとみられ、在宅での捜査が進められている。談合が疑われているテスト大会の計画立案業務の落札額は、セレスポが5件計約1億1500万円でトップ、博報堂は2件計約4000万円で6位だった。【二村祐士朗、井口慎太郎、松尾知典、北村秀徳】
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「入札を有名無実化し…」電通幹部出席の会議資料に明記 五輪談合
電通の本社ビル=2023年2月8日、東京都港区、瀬戸口翼撮影
東京五輪・パラリンピックの運営業務をめぐる談合事件で、大会組織委員会による発注が始まる2年前の2016年、広告最大手「電通」の社内会議で「入札を有名無実化して電通の利益の最大化を図る」などと記した資料が共有されていたことが、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部はこの資料を入手しており、こうした考えが、電通が談合を主導した背景にあったとみて調べている。
【図】東京五輪・パラのテスト大会の計画立案業務(26件)で落札企業が受注した会場と主な競技の一覧。電通はサッカーやバスケットボールなど5件で7979万円
電通広報部は「回答は控える」とした。 事件では、組織委大会運営局の元次長・森泰夫容疑者(55)と電通スポーツ局の元局長補・逸見(へんみ)晃治容疑者(55)らが、組織委が18年5月以降に発注した各競技のテスト大会や本大会の運営業務について、会場ごとの受注予定業者を事前に決めたとして、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで逮捕された。契約金は400億円規模だった。
関係者によると、電通から組織委に出向中の幹部職員が16年、大会運営業務の発注見通しなどについて情報共有する会議の開催を、電通本体の五輪担当者らに呼びかけた。この幹部職員が作成し、電通社内の会議で示したプレゼン資料には、発注形式が入札になる想定で「入札を有名無実化して電通の利益の最大化を図る」などと記されていた。会議には逸見元局長補を含む幹部らが出席したという。