石渡明委員が「安全側への改変とは言えない」と述べて反対し、決定を見送った

 

(石渡委員)はい、私はですね、やはりあの、科学的技術的な知見に基づいて、人と環境を守ることが、原子力規制委員会の使命だと思っております。
 で、あの今回の改変というのは、これは科学的技術的な何らかの新知見があって、それに基づいて、改変するという、そういった改変ではないと理解しました。
 それから、今回の炉基法(原子炉等規制法)の概要に書いてある改正案というのは、特に運転期間というものを、法律から落とすということで、ありますので、これは安全側への改変とは言えない。というふうに私は考えます。

 この資料の中にも、経産省のですね、改正案の概要みたいな、74頁、ここにあの、ポンチ絵のような形で、表のような形で、示されていますけれども、あの、基本的にですね。炉規法の40年、60年という枠組みは維持する。ということがここに書かれています。
 そうであるなら、今の炉規法の枠組みというのは、基本的には、変わらない。というのが私の理解です。

 そして、炉規法を我々が自ら進んで改正する必要というのは、私はあまりないと思います。
 ということと、もう一つ、私自身はこの委員会の中で、地震・津波等の自然ハザード関係の審査を担当させて頂いています。いくつかの発電所がですね、まだ、審査中で、かなり、審査が延びています、これは、あの、いたずらに延ばしているわけではなく、鋭意審査を進めていますが、残念ながら、今のところ、結構時間がかかっている。

 そうするとですね、時間をかければかける程、その分だけ、運転期間が延びるような案がどうも提案されているようである。
 そうしますと、審査をして、その期間が延びると、より高経年化した炉を将来動かすことになる。
 二律背反のようなことになってしまうというように、私は考えます
 

ということで、私はこの案には反対を致します。
 

 

 

原発60年超運転案は「安全側への改変とはいえない」

 昨日の原子力規制委員会で、原子炉の運転期間延長案に石渡委員が反対表明、

 決定は見送りとなりました。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/230093

 

原発60年超運転案は「安全側への改変とはいえない」 異例の反対意見で規制委が正式決定を先送り

2023年2月9日 06時00分

 原子力規制委員会は8日の定例会合で、原発の60年超運転に向けた新たな規制制度案を正式決定するかを議論したが、石渡明委員が「安全側への改変とは言えない」と述べて反対し、決定を見送った。来週、定例会で改めて議論する。規制委の重要案件で意見が割れたのは、極めて異例だ。 (小野沢健太)

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◆パブリックコメント 大半は見直しに反対

 新たな規制案は、原発の運転開始から30年後を起点に10年以内ごとに劣化状況を審査、規制基準に適合していれば運転延長を認可する。昨年12月の定例会では全員一致で了承。この日は、国民からの意見公募(パブリックコメント)の結果を受けて、最終案を議論した。

 意見公募に寄せられた2016件の大半は制度の見直しに反対する内容だったが、規制委事務局は規制案の内容を変更することなく、案を正式決定するかどうかを定例会に諮った。委員5人のうち、山中伸介委員長ら4人は案に賛成したが、石渡委員は反対を表明した。山中委員長は多数決で決定することはせず、運転期間を規定する原子炉等規制法(炉規法)の条文改正案とともに再び議論するとした。

 定例会後の記者会見で山中委員長は「(石渡委員に)誤解もあると思う。反対意見があること自体は問題とは思わない。委員の間で議論を深めたい」と話した。

 政府は昨年12月、原発の再稼働審査や司法判断などで停止した期間を運転年数から除外し、実質的に60年超の運転を可能にする方針を決定。関連法の改正案を今国会に提出することを目指す。現行の炉規法に定められた「原則40年、最長60年」とする運転期間についての規定は削除され、経済産業省が所管する電気事業法で改めて規定される見通しだ。

◆「将来老朽化した原発が動くことになる」と石渡明委員

 「私は、この案に反対します」—。会合の終盤、石渡明委員がきっぱりとした口調で異を唱えた。

 

 「今回の改変は科学的な新知見があって変えるものではない。運転期間を法律から落とすことになり、安全側への改変とは言えない。われわれが自ら進んで法改正する必要はない」

 

 地質の専門家として東北大教授などを歴任し、2014年から委員を務める。日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)の審査で、地質データの書き換えが判明した際には、審査の中断を提案した。原発の運転期間見直しでは、昨年11月に規制委事務局が新規制案について電力会社からの意見聴取を提案した際も、「時期尚早」と反対。議論は先送りになった。

 新たな政府方針では、審査による停止期間が運転年数から除外される。現在、審査中の10基は電力会社の説明が不十分で長引いているケースがほとんど。地震津波対策の審査を担当する石渡委員は「いたずらに審査を延ばしているのではなく、残念ながら時間がかかっている。審査が長引くほど、その分だけ運転期間が延び、将来的により高経年化(老朽化)した原発が動くことになる」と指摘した。

 審査が難航することで、老朽原発の運転を助長する事態に強い懸念を示した。この日の会合では、山中委員長が「どういう運転期間になっても規制ができるようにする仕組みだ」などと説明したが、石渡委員は「私の考えは述べた通り」と引かなかった。

 

 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230208/k10013974611000.html

 

 規制委員会での石渡委員の発言は14分ほど。

 

 https://www.youtube.com/watch?v=xfoAROLG7wo#t=2h0m10s

 

 石渡委員の異議は安全側に立ったまともな意見なのに、

 山中委員長はじめ他の委員は、検査によって原子炉の安全性を確認できるという幻想に基づいて、

 運転期間延長を支持しました。

 

委員長は来週15日の規制委員会で炉規法(原子炉等規制法)改正案を示して議論し、

 最終的には多数決で決める意向のようです。

 

 

資料1  https://www.nra.go.jp/data/000419904.pdf 

 「寄せられた2016件の意見の大半は制度の見直しに反対する内容だった(東京新聞)。」

 

 資料1の4~43頁には、炉規法改定に対する意見、

 44頁以降には、高浜原発で中性子脆化の試験がまともに行われていない実態などが書かれています。

 

 

 

■日経新聞2月10日2023年

60年超原発の改正案、規制委が了承見送り 1人反対

 

まさのあつこ 地味な取材ノート

ジャーナリスト。2022年10月に4度目の取材活動再開。『あなたの隣の放射能汚染ゴミ』(集英社新書)、『投票に行きたくなる国会の話』(ちくまプリマー新書)、『四大公害病』(中公新書)、『水資源開発促進法 立法と公共事業」(築地書館)』など。