マイナカードとSuica等の交通系ICカードの連携を推進する政府方針を批判
 

 JR東日本が監視カメラの画像をAIで解析して全乗客の顔を判別する顔認識システムを(利用者には周知せずに)稼働
 マイナカードと軍事
 マイナカードは「電子の兵事係(召集令状担当)」だ
 

上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕

◎ 政府はマイナカードとSuica等の交通系ICカードの連携を推進する方針を発表した。(※1)
 高齢者の運賃割引などに活用するなどとしているが、そのためには当然個人情報と結びつけられる。
 現在も交通系ICカードでオートチャージ機能を利用すれば銀行口座と結びつけられているが、さらにそれが拡大される。

◎ なぜそのように躍起になってマイナカードを推進するのか。
 IT業者の利権などが指摘されているが、理由の一つとして軍事との結びつきが推定される。軍事と関連の深い学者は、国防に必要なインフラとして「デジタルインフラ」を上げ、有事の際にマイナンバーを使っ
て自衛隊に情報提供することを提案している。(※2)
 現在は高齢者を口実にしているが、有事には民間資源の動員が必要となるからである。

◎ 戦前・戦中の召集令状(いわゆる「赤紙」)は軍から送られるのではなく、本籍地の市町村の「兵事係」の業務であった。役場には軍と警察との密接な連携のもとに「兵籍簿」という個人情報の書類が備えら
れていた。
 これには家族構成・職歴のほか当時は特殊技能だった運転免許など動員に必要な情報が記載されていた。兵事係は軍からの要請に従って召集者を選定して令状を送達していた。このため情実による兵役逃れが発生する余地もあり、兵事係が恨まれたこともあったという。

◎ 現在はIT技術を利用というか悪用すれば、人間を介さずに大量の個人情報を自動的に結びつけられる。
 交通の面に限ってもJR東日本が問題を起こしている。同社は不審者の検出などを口実として、監視カメラの画像をAIで解析して全乗客の顔を判別する顔認識システムを利用者には周知せずに稼働していたが、
服役終了後の出所者の顔情報も保有していることが問題視されて稼働を中止した。(※3)
 出所者のデータが一般に公開されているはずがないから、裏で警察との密接な連携がすでに行われていたことになる。

◎ 現在はこうしたシステムの稼働やデータの利用に法的な規制がない。すでにJR東日本は交通系ICカード情報の目的外使用でも以前に問題を起こしているが、IT技術の進展に伴ってマイナカード・交通
系ICカード・顔認識システムなどが結びつけば、誰がどこで何をしているか政府に筒抜けになる。
 現に中国などではこのような監視社会が構築されていると言われている。
 マイナカードは「電子の兵事係」であることにも注目する必要がある。

(※1)2022年12月23日『読売新聞』ほか各社報道
(※2)古谷知之「インフラ整備に必要な国防の視点 タブー視せず
    着手せよ」『Wedge』2022年12月
(※3)指宿信「監視カメラで全乗客の顔を判別」JR東日本の出所者
    検知システムはどこに問題があったのか」
プレジデントオンライン2021年10月19日
 https://president.jp/articles/-/51210

※関係報道紹介
 「何でもかんでもマイナカード」の高リスク
 保険証、運転免許証、交通系ICカード、学生証…河野デジタル担当相

 1枚のカードに個人情報を集約した場合、懸念されるのは紛失・盗難時の情報漏洩リスク。(中略)
 企業や行政機関からマイナンバー情報が紛失・漏洩したとの報告は、2021年度までの5年間で少なくとも約3万5千人分に上る。(後略)
         (12月27日発行「日刊ゲンダイ」3面より抜粋)