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旧統一教会へ初の質問権行使の舞台裏 消えた“担当部署” 文科省が敷いた“異例“の厳戒態勢
■史上初めて行使された「質問権」 厳戒態勢の文科省
文科省は11月22日、史上初めて宗教法人法に基づき旧統一協会に対して質問権を行使した。そこに至る作業は、異例とも言える“厳戒態勢”の中で進められた。徹底した情報保全の一方で、大きな課題も見えてきた。
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行使に向けて最初に行われたのは、質問権を行使する場合の「基準」作りだった。その基準を作るため、名だたる宗教家が集められた一回目の専門家会議が開かれたのは、10月25日のこと。メディアが取材できるのは冒頭のあいさつ5分程度だった。文科省の事務方の合図で会議室に通された私はすぐに違和感を覚えた。会議に出席する専門家がメディアに背を向けて着席していたからだ。席には委員の名札が置かれていたものの、顔がほとんど見えない。最初は会議の形式などの理由で背を向けた配置になったのかと考えていたが理由は別にあった。 「出席者へのリスクを少しでも避けるためだ」文化庁の関係者はこう明かした。つまり、関係者や事務方も含めなるべく顔が写らないようにし、第三者から容易に特定できないようにするためだった。基準を決定する2回目の専門家会議が行われた11月8日には、1回目の会議の時にあった委員の名札もなくなった。文化庁の事務方による「記者レク」と呼ばれる記者への説明もテレビカメラの撮影は不可となり、音声収録のみとなった。これも異例のことだ。 複数の関係者の話を総合すると、この厳重な警戒は旧統一教会からの妨害行為や外部への情報流出などの可能性を考えてのものだという。それほどまでに質問権の行使が与える影響は大きい。
■妨害行為を懸念? 警備がつく人も
質問権は宗教法人が「著しく公共の福祉を害する行為」「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」などが疑われる場合に文科省が行使することができる。「回答」を踏まえ法令違反が確認された場合、裁判所に解散命令を請求できる。裁判所がこれを認めると解散命令が出され、宗教法人は法人格を剥奪され税制上の優遇がなくなる。まさに対象となった宗教法人にとっては、死活問題だ。 取材を進めると、関係者の中には、警察の警備がついている人までいるという。
確かにこれまでの旧統一教会の対応を見ると、文科省側が神経をとがらせることも理解できないわけではない。例えば、外国特派員協会で「カルトの支配から逃れる」というテーマで会見した旧統一教会の元2世信者、小川さゆりさん(仮名)に対して、旧統一教会側が会見をやめるようメールを送っていたことは記憶に新しい。また妻が旧統一教会の信者である橋田達夫さんの自宅に“アポなし訪問”し、「マスコミにはもう出ないで欲しい(橋田さん談)」などと求めたともされている(旧統一教会側は否定)。 一方で、慎重なうえにも慎重な姿勢で臨んだばかりに、史上初の質問権行使という重大事にもかかわらず、適切な手続きを踏んだのかどうかや、どんな質問内容であったのかという検証までも難しくしているのは、後世に禍根を残しかねないと考えている。
■消えた宗務課 質問内容も不明なまま
質問権を行使するにあたって中心となって作業しているのは、文化庁の宗務課という部署だ。この部署が突然「消えた」のもその一例だ。宗務課があったはずのフロアマップには先月、「宗務課」の部分に紙で目張りがされた。部屋を訪ねてみると、机や椅子はそのままに無人の状態だった。 宗務課は現在、法務省、警察庁、金融庁など各省庁から出向してきた人員合わせて38人態勢となっている。表向きには「人数が増えて本来ある部屋だと人が入りきらない」とのことだが、ある関係者は「従来の宗務課の部屋は旧統一教会が2015年に名称変更をするときに直接来ているはずで、その時に場所がばれている」と話す。つまりこれも明らかに旧統一教会を警戒した対応だった。 対面で取材しようと電話で場所を聞いても、どこで作業をしているかは「答えられない」という。通常の取材活動であれば当然できる、担当者への直接取材は難しい。 また、「質問権」の内容について永岡文科大臣は「法人の組織運営に関する規定文書、収支財産に関する書類、帳簿について報告を求める」と会見で明らかにしている。ただより具体的な内容については「効果的な行使の観点から差し控える」としている。文化庁の担当者も詳細な内容は明かさなかった。 内容を明かさない理由についてある文化庁の幹部は、「少しでも質問内容が漏れることはあってはならない」「揚げ足を取られるようなことがないようにしないといけない」と質問権の行使前に話していた。しかし、旧統一教会側がすでに質問内容を把握している今、公開できない理由はどこにあるのだろうか。
■質問権行使は1度で終わるのか?懸念される「長期戦」
質問権をめぐる動きは今後どうなるのか、実は不透明だ。旧統一教会の回答期限は12月9日だが、ある文化庁の幹部は「1度の質問権行使では終わらないと思う。何回になるかわからない」と話す。回答の内容が十分ではなかった場合、追加質問が必要になるためだ。仮に2度目の質問権を行使するとなれば、また質問内容などを宗教法人審議会に諮問しなければならない。その後旧統一教会へ質問文書を送ることになるわけだが、回答の期限を今回と同じように3週間程度設けると、質問内容の諮問、質問文書の送付、回答を待つ…それだけでまた1か月程度かかってしまう。もしも複数回の質問権行使となれば長期戦になることは避けられない。 さらにその「先」には、解散命令請求に至るかどうかの判断もある。関係者は口をそろえて「できるかはわからない。相手次第だ」と話す。旧統一教会側がどのような回答をするのか、それも踏まえた上でどれくらいの法令違反が見つかるのかどうかによる。 解散命令請求をしたとしても「彼ら(旧統一教会)も徹底抗戦でくるだろう」と文化庁幹部は推測する。文科省の幹部も「訴訟になることは考えておかないといけない」と話していることからも、解散命令請求を行うとしても一筋縄ではいかないだろう。 旧統一教会側は取材に対し「誠実に対応させていただく」とコメントしているが、どのような回答になるのか、それによって文科省や関係省庁がどのような動きを見せるのか。注目される。
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