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京都新聞

社説:寺田総務相 職務担う資格あるのか

 

 「政治とカネ」を巡って、寺田稔総務相が野党から厳しい追及を受けている。

 

  自身の政治資金に絡む問題が次々と浮上し、国会答弁の整合性に疑問符が付く。真摯(しんし)な反省もうかがえない。政治資金規正法を所管する総務省のトップとしての資質が問われよう。

 

  一連の問題は、寺田氏の二つの政治団体が地元・広島県内の事務所を共有する妻に賃料として10年間で約2千6百万円を支払っていたことが発覚後、相次いで明らかになった。きのうも参院の特別委員会で、関連団体の政治資金収支報告書に自身からの貸付金600万円が記載されていないほか、「寺田稔」宛て領収書の筆跡に関する偽造疑惑が取り上げられた。

 

  事務所賃料について、寺田氏は「全く問題ない。価格は適正だ」としているが、野党が政治資金を身内に還流させる「ファミリービジネス」と批判するのも当然であろう。同様の問題は、秋葉賢也復興相も指摘されている。答弁の根拠など、さらなる説明が欠かせない。

 

  寺田氏は、貸付金600万円は「当然、記載すべきものだ」と認め、領収書も「誰が書いたのか確認する」と釈明したものの、自身の関与は否定している。責任逃れに終始する姿勢は政治への信頼を低下させるだけだ。

 

  他にも後援会が3年前に死亡した故人を会計責任者とする政治資金収支報告書を提出したり、この問題に関する国会答弁を訂正したりと不手際が後を絶たない。加えて「事務的ミスが(今後)絶対ないとは申し上げられない」と開き直った発言にはあきれる。

 

  「政治とカネ」に国民の不信感は根強い。「ザル法」と言われる政治資金規正法とはいえ、総務相は率先垂範して順守すべき立場にある。指摘を受け、訂正を繰り返すようではその任に値しない。

 

  寺田氏は、岸田文雄首相が率いる自民党岸田派(宏池会)に所属する。同じ広島選出で、総務相就任前まで首相補佐官を務め、首相の右腕として重要閣僚に起用された。側近をかばい続ける首相の任命責任は極めて重いと言えよう。

 

  政治課題が山積する今臨時国会は既に折り返し点を過ぎた。

 

  岸田政権は、山際大志郎前経済再生担当相に続く「辞任ドミノ」を警戒しているようだが、与党内からも寺田氏の適格性を問題視する声が上がり始めた。閣僚の「疑惑」が国会審議の足を引っ張る事態は避けねばなるまい。