基本的に、全裁判記録を保存せよ!

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少年事件の記録廃棄問題 江川紹子さんが指摘「期待を裏切る裁判所の感覚あぶり出された」

神戸新聞NEXT

 

過去の裁判記録は、歴史文書でもあると説く江川紹子さん=東京都内

 

 1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件など、重大少年事件の記録を各地の家裁が廃棄していた問題を受け、最高裁が年内にも有識者委員会を開き、事実上の永久保存にあたる「特別保存」の運用を検証する。今回の廃棄問題が浮き彫りにした課題は何か。事件記録の保存を求める運動に力を入れるジャーナリスト江川紹子さん(64)が神戸新聞のインタビューに応じ、「無関心、無責任、無秩序。国民の期待を裏切る裁判所の感覚があぶり出された」と話した。 

 

【表】著名な少年事件記録の保存と廃棄の状況  

 

連続児童殺傷事件に続き、全国で判明した重大少年事件の記録廃棄。しかし江川さんがとりわけ驚いたのは、「司法機関の反応の鈍さ」だったという。「裁判所が調査も説明もしないことにはがくぜんとした。記録に対する無関心や無責任、ルール(内規)を守らない無秩序など、『無』が際立った」。江川さんは「国民が無意識に裁判所へ期待していた、あるだろうと思っていたものが、(記録だけでなく)こんなにもない」という点にこそ、問題の根があると指摘する。 

 

 この問題では、同じ重大少年事件の記録でも、永久保存をした家裁と、廃棄した家裁に分かれていたことが判明した。江川さんは、職員の能力によって「属人的」に記録が残ったり、残らなかったりする仕組みは問題だと指摘。事件記録は「原則廃棄」という発想を、「原則保存」に変え、廃棄する時にこそ、さまざまな人がチェックする手続きにしなければならないと説く。

 

  さらに最高裁の有識者委が議論する出発点として、記録を廃棄した経緯の調査が必要不可欠と強調する。「調査をすれば関係者の処分に至ると恐れているのかもしれないが、処分をしなくても事実が分かればいいと思う」とする江川さん。「経緯を明らかにし、再発防止に生かすのが一番大事ではないか」と訴え、裁判所の対応に期待をかけた。(霍見真一郎、永見将人)  

 

    ◇ 【えがわ・しょうこ】 1958年生まれ。早稲田大を卒業後、神奈川新聞社に入社。29歳で退社してフリーランスとなり、オウム真理教事件などを取材。2020年より神奈川大特任教授。