ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

東北放送

「キティちゃん風も」変わった“柿”が大量発生その原因は?調べてみると大変なコトが…

視聴者から寄せられた疑問などを深掘りするコーナー「tbcNEWSDIG」。 まずはこちらをご覧ください。視聴者から送られてきた写真です。

 

  【写真を見る】「キティちゃん風も」変わった“柿”が大量発生その原因は?調べてみると大変なコトが… 

 

これらの写真、かなり変わった形をしていますが、秋の味覚、柿です。このように変わった形をしたものが見つかったという情報が複数寄せられているのです。 私たちが普段食べている柿とはずいぶん違って見えますね。それもいくつも情報が寄せられているんですか。なぜこんな形をしているのでしょうか、取材しました。

■「キティちゃん風」の柿が採れた!

取材班は柿の写真を送ってくれた視聴者から話を伺おうと宮城県大崎市岩出山に向かいました。 

 

記者: 「おはようございます。情報提供を頂いた石上さんですか?きょうはよろしくお願いします」 

 

情報提供者の石上さん:

「はい、よろしくお願いします!」 

 

石上伸一さん(69)です。自宅で採れたという柿を見せてもらいました。

 

 石上伸一さん: 「こちらです」 柿は、干し柿にするため、すでに皮が剥かれた状態で軒先に吊るされていました。

 

 石上伸一さん: 「分かりやすいのが、キティちゃん風のものや、このように2つに割れているもの。このようなものが今年初めて出来た」 

 

この形がいびつな柿は、自宅の庭の樹齢40年ほどになる柿の木に実りました。 

 

石上伸一さん: 

 

「初めて見てびっくりした。まずこれは食べられるのかと思った」

 

 石上さんの柿の木には今年、例年の5倍近い数のおよそ130個の実がなったと言いますが、そのうち30個ほどは通常とは違う変わった形をしていました

 

 石上伸一さん: 「まったく分からないが、数が採れたのは、今年はまったく台風が来なかったので実が落ちなかったということはあったが、それ以外考えられることはない」

 

 あと1か月ほどすれば干し柿になるということで、家族みんなで食べることにしています。 

 

石上伸一さん: 「例年通り、甘い干し柿になっていればいい」 

 

tbcが取材を進めたところ、県内のほかの場所でも、同じように変わった形の柿が大量に見つかっていることが分かりました。

 

一見、面白くかわいらしくも見えるこの変形した柿ですが、実はこうした柿が深刻な影響を与えていることも分かりました。

 

■「変形した柿」に農家は困った!

丸森町の耕野地区です。お邪魔したのは、「ころ柿」の名で知られる丸森町特産の干し柿用の柿を育てている農家の八島哲郎さんの畑です。

 

 八島哲郎さん: 「相当ひどいね」 八島さんは、この畑で干し柿用の柿の木、およそ200本を育てていて、今週中にも収穫を始める予定ですが・・・。 

 

八島哲郎さん: 「だいたい8割以上が奇形、変形している。例えばこれ。これはどうにもならない。

 

これとか・・・これね、ひどいやつだと」 通常の渋柿は、下から見ても出っ張りや引っ込みはありません。

 

比べてみると一目瞭然、実が2つ3つにわかれたようなものや角が生えたようなものがありました。 

 

八島哲郎さん: 「今までもあったんだけど、1本の木に1個あるかないかくらいだったんですけど、今年は軒並みダメ」 

 

形がいびつだと機械を使っての皮剥きができず、剥いたとしても売り物になるか分かりません。

 

 八島さんは例年、およそ3万個の干し柿を出荷していますが、去年は寒さによる霜の被害で収穫量が大幅に落ち込みました。

 

今年も遅霜の影響で実の数はいつもの半分ほど。

その8割に変形が見られるため、出荷できるのは例年の1割ほどになる可能性があります。 

 

八島哲郎さん: 「もちろん干し柿は食べなくても命に別状はないから。ただ私が心配しているのは、2年連続の大不作で、干し柿づくりや農業をやめるという人が出てくるのが一番心配」 

 

変形した柿の大量発生は、農家にとって深刻な問題になっています。

 

 八島哲郎さん: 「40年干し柿を作っているけど初めて。60年作って初めての先輩もいるから、2年連続の大不作をどう乗り越えようかというのは、私だけではなくて、丸森の干し柿農家にとって本当に深刻な問題です」 

 

8割というのには驚きました。

 

味に違いはないということですが、加工が難しくなり見栄えも悪いとなると、商品にするのは難しそうです。

専業農家の場合、出荷数が減ることはそのまま収入が減ることに繋がります。

 

では、なぜこのような変形した柿が大量に発生しているのか。八島さんはこれまでに経験がないと言っていましたが、県の担当者に原因を取材してきました。

 

■「柿の変形」は病気ではなかった!ではいったいナニが?

県園芸推進課にも、県内各地から変形した柿の発生情報が寄せられていると言います。原因を聞いてみました。 

 

県園芸推進課 上野慶紀技術主査: 

 

「一番は気温が、大きい原因ではないかと考えています。

 

過去に福島県で平成2年(1990年)に柿の異常果が大発生したという論文、報告があって、そこでは高温や日較差が原因ではないかと言われていた」

 

 柿は4月下旬頃に発芽し6月上旬頃に開花するとされています。この時期に高温の日があったり、1日の気温の高低差が大きかったりするとストレスがかかり、実の変形が起きるのではないかと言うのです。

 

しかし・・・ 県園芸推進課 上野慶紀技術主査: 「論文をいろいろ調べてみるのですけど、高温や低温の繰り返しによるストレスが影響しているのではないかという報告はあるが、最後の方には原因は不明で今後調査していく必要があるという記載で終わっているので、まだ原因は解明されているわけではないと考えている」

 

 結局、はっきりとした原因はよくわからず…

 

しかし、変形は病気によるものではありませんでした。

 

ストレスの影響に関しても県は、今年の4月から6月にかけての最高気温や1日の気温差を調べてみると、確かに気温の高い日や気温差の大きい日は多かったが、過去には今年以上に気温の乱高下が激しかった年もあり、今年が異常とまでは言えないということなんです。 

 

実が付き始めた時点で、すでに変形がみられるということで、実の成長過程で変異したものではないとみられます。

 

原因がはっきりしないため対策も難しいということですが、県では、これまで同様に木を適切に管理することが、今後の被害を減らすと見ていて、今年売り物にならない実でも例年同様に収穫して、その後のせん定作業もしっかり行ってほしいと呼びかけています。

 

 なお、柿は変形しても病気ではないため味は通常の柿と変わらず健康に影響もありません。

 

東北放送