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時事通信2021年11月28日号

 

現在、多くの学生が奨学金を利用しているが、子育て世代の大人は、奨学金制度の実態についてあまり理解していないことが日本生活協同組合連合会のアンケートで分かった。

 

30歳代後半の回答者のうち「(先進諸国の中で)公的な給付型奨学金制度がないのは日本だけ」ということを知らない人が66.8%、

 

「大学生の約半数が奨学金を利用している」ことを知らない人は65.9%に上った。

 

 

【2021年12月2日号】 

広島県府中町で昨年12月、中学3年の男子生徒が自殺した問題で、町教育委員会が設置した第三者委員会が報告書をまとめた。

 

報告書は、男子生徒の学習や生活態度は良好だったが、事実と異なる非行の記録に基づいた学校の進路指導により、希望していた高校の受験を認められず、それが自殺のきっかけになったと結論付けた

 

 

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2022.10.09

食い止めよ!円安は「インフレ税」だ〜今は消費税2%引き上げと同じ

日本の働く者は見捨てられている

 

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

 

消費税率を引き上げて税収を大企業に補助金として配れば、大反対が起こるだろう。ところが、いま円安によって物価が高騰し、これと同じことが進行している。それにもかかわらず、これに反対する政治勢力がない。日本の働く者は見捨てられている。

 

 

物価高騰の約半分は、円安による

物価が高騰しているのは、まず第1には、資源価格や農産物価格が世界的に高騰しているからだ。

ただ、日本の場合には、急速な円安がそれに拍車をかけている。

2022年8月のデータで見ると、契約通貨ベースの輸入価格の対前年比は 21.7%だが、円ベースでは42.5%だ。この差は、円安による。つまり、現在の日本で、物価高騰の約半分は、円安のためなのである。

資源価格の上昇は、日本政府の経済政策ではいかんともなしがたい。しかし、円安は日本の経済政策によって変えることができる。それを怠っているのは、税をかけているのと同じことだ。

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物価高騰で、働く者の生活が苦しくなっている

物価が上がって賃金が上がらなければ、働く者、消費者の生活は苦しくなる。食料品などが値上がりしているので、食費などの生活費を切り詰める。ガソリンも本当は高くて買えなくなっているのだが、それは補助金でごまかされている。

 

 

ただ、ガソリンを使うのは、どちらかと言えば豊かな人々だ。高齢者施設では、入居料を値上げしている。ギリギリの生活なので、大きな負担だ。

以上のことは、実質賃金が低下していることによって、統計的にも確かめられる。

物価高騰が収まる見通しは、当面ない。これから先、さらに物価は上がるだろう。

 

大企業は補助金を受けている

こうした問題が起きているのに、日本銀行は断固として金融緩和を続けるとしている。金利を上げると、景気に悪影響があるからというのが、その理由だ。

景気に対する悪影響とは、株価に対する悪影響、つまり、企業収益に対する悪影響のことだ。

実際、今回の円安によって、大企業を中心として、企業の利益は増えている。とりわけ、エネルギー、資源関連の上場大企業はそうだ。

法人企業統計調査のデータ(金融機関を除く)で2022年4-6月期の計数を21年同期と比較すると、営業利益と経常利益は、それぞれ13.1%と17.6%という非常に高い伸びになっている。

ただし、いくつかの留意点がある。

第1に、零細企業は惨憺たる有様だ。資本金2000万円以上ー5000万円未満では、営業利益や経常利益が減少している。また、従業員数も減少している。資本金1000万円以上ー2000万円未満では、売上も原価も、そして粗利益も営業利益も減少している。従業員数の減少率は4.6%に上る。

第2に、日本の株価の下落率はアメリカより穏やかに見える。しかし、ドル建ての日経平均を見ると、2021年1月以降、ほぼ傾向的に下落を続けており、現在の水準はコロナ前の2018、19年のレベルになっている。つまり、円安によって、日本の経済力は低下している。

第3に、こうした過程が続けば、日本経済は崩壊してしまう。上で見たのは、それに至る過程での一時的な企業利益の増加に過ぎない。

 

 

 消費税率を上げたのと同じこと

いま起きているのは、消費税の税率を2%だけ臨時的に上げたのと同じことだ。そして、その税収を大企業に補助金として配っているのと同じことだ。

このような政策を行えば大反対が起きるだろう。ただ、円安でそれが行われると、それが消費税率引き上げと同じものであることが、なかなか認識されないのだ。

そして、欧米に比べれば物価上昇率がまだ低いこと、またおそらくは一過性のもので将来永続するわけではないことから、これが許容されているのだろう。

物価が上がることによる悪影響は、これからますます進む可能性が強い。

数年前、金融庁の金融審議会の報告書は、老後生活のために2000万円の貯蓄が必要だとした。この忠告にしたがって2000万円ためた人は、2%のインフレが収まらなければ、つまり、将来、物価が元に戻らなければ、40万円の税金をかけられたのと同じことになる。そして、その税収を大企業に配っているのと同じことが起こっている。

これに対して何の反対も起こっていないのは、実に不思議な現象だ。

もし、同じことを消費税の税率引き上げで行なうと言えば、大反対が起こるだろう。しかし、効果は同じなのに、円安に対してはそうした反対が起こらない。

喩えはあまりよくないが、「朝三暮四」の故事を思い出してしまう(結局は同じことなのだが、やり方を変えられると、騙されてしまう)。私は、日本の国民や政治家が、この喩えにでてくる猿のように愚かだとは思いたくない。しかし、実際に起こっているのは、まさにそれなのだ。

 

 

インフレ税は最も過酷な税

インフレ税は、最も過酷な税だとされている。それは、所得の低い人々に対してより重い負担を課すからだ。

インフレ税は、人類の歴史で、数え切れないほど何度もあった。貨幣の改鋳という形でローマ帝国時代にもあったし、フランス革命前後のフランスでもあった(アッシニア貨幣)。

現代で有名なのは、第1次大戦期後のドイツのインフレだ。また、革命後のソ連のインフレだ。

これらは、その後の国の運命に大きな影響を与えた。

日本でも第2次大戦後に、インフレが起きた。そして、戦時国債は紙切れになった。

いま日本で、インフレ税が課され始めている。もちろん、歴史上のハイパーインフレの場合に比べれば、インフレ率はずっと低い。しかし、問題の本質は同じである。