【転載記事】
おはようございます。IWJ編集部です。
10月7日金曜日、午後3時半ごろより、「自民党自体が統一教会のマインドコントロール下にある!? 文鮮明カラーを払拭した韓鶴子体制の統一教会が『国家復帰』計画の野望を企てる!」と題して、岩上安身によるジャーナリスト鈴木エイト氏インタビューをお送りしました。
鈴木エイト氏は、9月26日に、御著書『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』を小学館から緊急刊行されたばかりです。安倍元総理銃撃事件の後こそは、連日テレビや新聞、統一教会と政治の問題が取り上げられるようになりましたが、これまでは教団と政治家の圧力のもと、ほとんど誰も書けなかった問題を扱っています。
岩上安身が「記者クラブ制度と巨大寡占資本によって、新聞テレビが全部コングロマリット化」していて、フリーランスには入る隙間もない、独立メディアが全然育たない状況にあっては、生計をジャーナリズムだけに依存しない「兼業ジャーナリスト」でなければ、鈴木氏のような仕事はできないのではないか、と問いかけました。
岩上「『やや日刊カルト新聞』という、ややリスクのある新聞を出されていて」
鈴木氏「僕もどこかの通信社にいたという立場ではなくて、ブロガーから始めた人間なので。自分では『野良系ジャーナリスト』といってるんですけれども。自称ですよね。名前もカタカナが入っているし、なかなか信用されない。やっていく中で理解してもらえればいいかなというくらいで」
岩上は「野良ではないというジャーナリストは、どこかで飼われているわけでしょう。そんなのは全部エセだと思っています」と応じました。
岩上が自分が学生だった頃に実際に体験した、原理研の勧誘活動の様子を話すと、鈴木氏は、2000年ごろから、勧誘の手法が非常に洗練されてきたのではないかと指摘しました。
岩上「(失恋などで)傷ついた心にすっと入り込んでいく、あの手口の巧みさを感じました」
鈴木氏「日本に入ってきて60年、洗練されてきているんですよね、『信者を生産していくシステム』が。どういう時に持っていくとちゃんと信者にまで育て上げることができるか。経験則的に、非常に狡猾にこういうルートに乗せれば、信者にできるという」
岩上「今、2000年代くらいになってくると」
鈴木氏「そうですね。非常にマインドコントロールの手法がシステム化して、洗練してきている団体なのかな、という印象でした、当時は」
鈴木氏は、統一教会と政治との関係を考えると、実は祖父・岸信介や父・安倍晋太郎とは違い、安倍晋三氏は、当初、統一教会との間に一定の距離を置いていたのではないかと指摘しています。
岩上「(岸信介の)孫の晋三さんは意外に距離を持っていたと? どこかで、安倍晋三氏が変節したのか、と」
鈴木氏「(安倍元総理銃撃事件についての)最初の報道もそうだったんですが、祖父の岸信介時代のことが取り上げられて、その流れの中で、(山上容疑者の)動機であるとかが、出てきたんですけど。『これちょっとまずいな』と思って。そこ(岸信介と統一教会)のクローズアップが、今回の事件の背景ではないので。
実際に、この直近の10年間、何があったかということを、ちゃんと伝えない限り、事件の背景であるとか、犯人の動機を掘り下げることはできないと思っていましたので、事件直後の1、2週間の報道は、かなりまずいなーって思っていました」
岩上「カルトの基礎知識として、必要なことかなとは思うんですけれども」
鈴木氏「当然、必要なんですけれども、あの時の報道ベースで言うと、岸信介と文鮮明の関係から、安倍晋三さんも、統一教会と関係があると思い込んで銃撃した、というストーリーだったんですよ。
その流れでいってしまうと、明らかに、安倍晋三さんは勘違い、犯人の思い込みで殺されてしまったという。逸らしていくという意図的な報道ではなかったと思いますが、そういう方向に話が行ってしまうんですね。
ここ10年で、何があったかということを、ちゃんと語れる人は僕以外いなかったので。当時のことを取材してた人、有田(芳生)さんもずっと継続して取材はされていましたが、どうしても第2次安倍政権以降のことを、ちゃんと語れる人は、限られています。その中から、そういう報道は一切出ないことによって、山上容疑者の動機面がかなり誤解されてしまうんじゃないか、と。
実際に直近の報道でも、安倍晋三事務所にいた人が、2000年代後半までは、距離を置いていたと証言されているんですね。それは僕の見立てともあっています。
反ジェンダーの流れなど、2000年代前半にも、ある程度共鳴関係にあったことは確かですが、2013年の参院選で発覚した、組織票支援を直接頼むような関係までには至ってなかった。
そこにかなりの乖離があって、2000年代後半、2010年あたりから民間レベルではかなり近づいていたのもあり。そこに、誰か、近づけた人がいるというのは、確かであって。そこで、どこかで分水嶺を越えてしまった。
明らかに距離を置いていたのに、第1次安倍政権の失敗から、2回目はいろんな要素があったんだとは思いますが、そこで、なぜ、安倍晋三という政治家が、統一教会のアプローチを受け入れて、緊密な関係になってしまったのか。そこをきっちり検証すべきだと思うんです」
安倍晋三氏と統一教会との関係が取り沙汰されたのは2006年5月に遡ります。天宙平和連合(UPF)が開催した『祖国郷土還元日本大会』に、当時官房長官だった安倍晋三氏と、元法務大臣の保岡興治らが祝電を送ったことが発覚していますが、安倍晋三氏自身の「判断」による祝電ではないとの見方もあり、当時は「まだ」密接な関係を構築していなかったと、鈴木氏は指摘しています。
鈴木氏は、法務大臣に就くような政治家に接近するために、文鮮明から指令が出ていたと述べました。
鈴木氏「まず、その政治家のところに秘書として信者を送り込んで、弱みを握れと。最終的には、自分が立候補しろ、みたいなところまで、文鮮明が指示をしていたと言われています」
岩上「現時点では、秘書官の点検はまったくされていないので、自民党は全部やらなきゃいけないと思うんですけれども。本当に信者からスタートして、ついには政治家になった人っていう人は、何人かいるんですか?」
鈴木氏「そこは詳しくはっきりされてないですけど、いろんな情報を見ていくと、少なからずいるんじゃないか。それはまだはっきりと表に名前が出てないんですが、いろんな情報が入っていますが、なかなか裏取りができない」
岩上「では、これから裏取りをして、世間に公表していく、大事な作業ですね」
公設秘書は、一般の人が知ることのできない情報や、官僚が作る資料も真っ先に見ることができます。そうして得た情報をどう使うのでしょうか。統一教会が、海外に本部を置き、日本支部はコントロールされた出先であることを考えると、国政の重要情報が、韓国や米国、さらには統一教会の文鮮明とその一族との密接な関わりを考えると、北朝鮮へも流出していた可能性があります。少なくともそのリスクは否定できません。
鈴木氏は、安倍元総理が、統一教会との関係を一気に深めていったのは、2010年の参議院選挙の前だったと指摘しています。2010年の参院選前、「漏洩した国際勝共連合の内部通達文書」とされる文書に「山谷(えり子)先生、安倍先生なくして私たちのみ旨は成就されません」との文言があります。この時点で、安倍元総理は、統一教会との間に何らかの関係性が構築されていたと考えられる、といいます。
鈴木氏「この当時、(統一教会は)霊感商法の摘発をかなり受けていて、『政治家対策が足りなかったのではないか』ということで、政治家対策を強化しはじめた時期ではあるんですよね」
鈴木氏「統一教会だけとは限らず、宗教右派と言われる人たち、日本会議であるとか、神社本庁であるとか親学の関連(一般財団法人親学推進協会、理事長・高橋史朗氏)であるとか、伊藤哲夫さんなんかもそうですけど。そういう宗教右派と言われる一群の人達の中に統一教会がいたという、ニュアンスですね」
ここで、岩上は、「なぜ、あんなに(統一教会は)反ジェンダーにこだわるんでしょうか。どうしてもよくわからない」と問いました。
鈴木氏「教団の純血思想とバッティングしちゃうのもあると思いますが、統一教会が反共産主義というのもそれ自体は便宜的に掲げてきたものなんですよね。
それが東西冷戦が集結して、その存在意義を亡くした時に、過激な性教育であるとか、男女共同参画であるとか、選択的夫婦別姓とか、LGBTであるとかも含めて、それも『文化共産主義だ』ということでターゲットにして、カメレオン的に(ターゲットを)変えてきているんですよね」
岩上「(文化共産主義)って、それ自体がでたらめじゃないですか。レーニンと(選択的夫婦別姓)なんの関係もない」
鈴木氏「そういうものと、保守派の政治家とニーズがあった。自分たちがカメレオン的に変えていった、それは政治家にうまくコミットするために利用してきた面もあって、非常に『こずるい』というか。
岩上「この『こずるさ』と、日本の保守の馬鹿さ加減が共鳴して出てきたものなのかなと思うんですけれども。選択的別姓問題といっても、韓国は別姓でしょう。それが日本に来たら、別姓反対だとか、そういうデタラメを言っているということに、なぜ誰もまともに『お前ら嘘ばかりつくんじゃないよ』と言わないのか」
鈴木氏「そういうところ、突いていくと、いろんなボロが出てきますね」
鈴木氏は、ミソジニーとマチズモを、伝統的な衣を借りて表現しているのではないかと述べました。
鈴木氏「保守派の政治家にすり寄るためと、そこの共鳴関係を作っていく上での選択だったんじゃないでしょうか」
鈴木氏は、当時、霊感商法の摘発が続き、教団本部にも強制捜査の手が及ぶのではないかという危機感、「(教団の)霊感商法会社摘発と家宅捜索への危惧」から、政治家への擦り寄りが強化され、「反ジェンダーでの共鳴」が、保守派の政治家、安倍元総理との関係を深めたのではないか、と指摘しています。
鈴木氏「霊感商法会社の摘発が続いたのが、2007年から、厳密にいうと10年からなんですが、教団本部への強制捜査寸前まで及んだということで、教団が危機感を覚えて、もう一度政治家対策に本腰を入れなおし、教団の解体であるとか解散命令であるとかに発展しないように、政治家にコミットして保護をしてもらうようになったっていうのが、第2次安倍政権の誕生前夜の状況なんですよね。
実際に、第2次安倍政権になって以降は、特に国家公安委員長には息の掛かったような政治家がずっと登用されてきていますし。まったく、教団への手入れであるとかは、霊感商法自体は商品介在させないようなものに変えてきたので当然それもあるんですけど、組織運用とか組織の自体の危機っていうのはずっとなかったんですよね。この10年、今回の事件が起こるまでは、共存共栄関係が続いていた」
岩上「自民党、特に第2次安倍政権は、自民党の中でも異質の、自民党が持ってたしょうもない部分の強度を高めた政権であることは間違いないですよね」
鈴木氏は、統一教会という組織の非情な側面に言及しました。
鈴木氏「(統一教会は)きめ細かい思想的な裏付けは、まったくない団体だと思うんですよ。あくまで形として(宗教団体として活動)しているだけで、実態は『金集め』であって、細かいところは『知ったことではない』」
岩上「そうか、そうやって(信者が)困窮しようが、そんなことはどうでもいい、ということですか」
鈴木氏「だから、いろんな所でつじつまが合わない団体ではあることは確か」
岩上「本当に(信者が)ボロボロになっていっても、無理ですってなった時には捨てちゃうわけですね?」
鈴木氏「そうです。極端な話、教団に貢献できない人は見捨てる。通常の宗教団体は逆じゃないですか、社会的な弱者であればあるほど助ける、救済するとか」
岩上「うちの教団のホスピスありますよ、とか、墓地がありますよとか」
鈴木氏「最初に加入する段階で、障害のある人には絶対声をかけるなと。街頭勧誘するときのマニュアルで、教団の活動に貢献できない人には絶対声をかけないと。
そもそも、本当に社会的弱者を救済する宗教団体という概念からまったく違う団体なんですよね」
岩上「なるほど。さて、2012年9月に教祖・文鮮明が亡くなる。これ、時代というのは、面白いように、不思議な偶然が重なりあってるんですね。というのは、この第2次安倍政権発足の前夜、9月に文鮮明が死去している。文鮮明がずっといたというイメージがとても強くて、文鮮明の後を追ったと。
この韓鶴子の独裁体制になっているということは、分かっていませんでした。むしろ、韓鶴子の独裁体制と第2次安倍政権は、共に手をつなぎ、歩んできた」
鈴木氏「時系列で言うと、かなりリンクしているんですよね。『独生女(どくせんにょ)』宣言をして、自分が生まれながらの神の一人娘だと韓鶴子が言い出して。
それまでの教団の教義とかと、まったく矛盾するようなことを言い出して、子どもたちが反発をしたり。後継争いの前から、2000年代から、一番の後継候補だった三男も追放してるんですよね。(中略)
結局、息子たちは全部追放されてきちゃって」
岩上「文鮮明体制の影に隠れていますが、これまでの統一教会を見てきた目ではなく、もう一度刷新した目で韓鶴子体制を見て、そこに組み込まれてしまった日本の統一教会と安倍政権の関係を見ないといけない、ということですよね」
鈴木氏は、安倍氏は、自身の政治的野心と引き換えに危険な取引を結んだのではないか、と指摘しています。第2次安倍政権が発足した翌年の2013年3月15日、国際勝共連合の新会長就任パーティーに多くの自民党議員が出席し、7月の参院戦へつながっていきます。
2013年、山口県田布施(たぶせ)村出身の、元産経新聞政治部長・北村経夫氏が参議院選挙比例代表に出馬しました。この北村氏の選挙をめぐって、官邸の2トップである、安倍総理と菅官房長官が統一教会に選挙支援を「じきじき」に依頼していたことが発覚しました。
鈴木氏は、この事件が発覚したのは、北村氏を支援していた地元の不動産会社社長が、統一教会と手を組むと知って怒り、選対部長を問い詰めて官邸からの指示だと聞き出したこと、そして北村氏の事務所にいた自民党の若手による告発からだったと説明しました。
自民党の若手が暴露した統一教会の内部通達FAXには、以下のように書かれていました。
「全国区の北村さんは、山口出身の政治家。天照皇大神宮教(『踊る宗教』とも)の北村サヨ教祖のお孫さんです。首相からじきじきこの方を後援してほしいとの依頼があり(中略)今選挙で北村候補を当選させることができるかどうか、組織の『死活問題』です」
この事件は、当時、絶頂期にあった安倍政権に忖度するメディアはまったく見向きもせず、唯一『週刊朝日』だけが取り上げてくれた、と鈴木氏は振り返りました。
鈴木氏は、2013年以降統一教会との関係を深めていった安倍氏について、次のように語りました。
鈴木氏「その(統一教会との付き合いの)濃淡でいうと、やっぱり菅政権とか、第4次安倍改造内閣の濃さはかなり突出してるんですよね。
ただ、政治家にとってみたら、そこまで(統一教会を)重要視していなかったのかな、と。今回の事件が起こるまではですね。『気軽に付き合ってただけ』みたいな。
陰謀論的な『こういう教団に日本の政治が侵食されていたんだ』という見方も、また、ちょっと危険なところがあって。
実際の教団の影響力は、昨日、世耕さんが言ってみたいに、『まったくない』というような取り方も出来るのであって。
今回の事件によって、様相が変わってしまった、という要素は、やっぱり強いですよね。安倍さんの事件が起こった後だからこそ、そう見えるというものと、当時、実際に統一教会と付き合ってた政治家が見ていた絵は、今見えてる絵とまったく違うんですよ」
※「旧統一教会に賛同する議員いない」 世耕氏が発言、野党は「えー」(朝日新聞、2022年10月6日)
https://digital.asahi.com/articles/ASQB64W35QB6UTFK016.html
鈴木氏は、2010年代以降の統一教会の実態を最も詳しくみてきたジャーナリストです。その言葉には重みがあります。今回のインタビューでは、鈴木氏におうかがいしたい内容がたくさん残りました。鈴木氏には、次回のインタビューをご快諾いただきました。
鈴木氏が言う、「当時、実際に統一教会と付き合ってた政治家が見ていた絵は、今見えてる絵とまったく違う」とは、どういう意味なのか、また次回のインタビューで詳しくおうかがいしていきたいと思います。
※冒頭オープン【ライブ配信 10/7. 15時30分〜】岩上安身によるジャーナリスト 鈴木エイト氏インタビュー
https://www.youtube.com/watch?v=LivWVWyafj0