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毎日新聞

「副業に公務員どうですか」 和歌山県が兼業人材を大規模募集

 

 

民間企業に籍を置きつつ、県庁で働く人材を大規模に募る計画

 副業で公務員、してみませんか――。和歌山県が民間企業に勤める多くの専門人材を、兼業のまま受け入れる計画を進めている。2023年度からの予定で、県によると、20人程度を想定し、全国都道府県の中でも大規模な取り組みとなる。情報技術で業務変革を図るデジタルトランスフォーメーション(DX)のほか、串本町で予定されている民間小型ロケット発射に伴い進める「宇宙教育」に携わる人材などを想定。“お役所仕事”の内実を知ってもらい、改善する方策の一つで、県は「企業とのウィンウィンの関係を目指す」としている。 

 

 専門知識のある人材に、民間企業に籍を置きつつ、局長級を支える「右腕役」として県庁で勤務してもらう。政策を形づくる際、専門性を生かして助言するなど、月4回程度の出勤を想定し、日数に応じて給与を支払う予定。今までにない発想を得たり、企画力向上を図ったりする狙いだ。

 

  県などによると、副業・兼業の人材受け入れは、デジタル分野を中心に各自治体などで実施されているが、県は「20人規模が実現すれば、組織には大きなインパクトになる」としている。分野としては、他に未利用の土地や施設の有効活用を進める不動産開発、企業誘致などを見込んでおり今後、各部署の希望を基に募集要項を作成。22年度内に募集をし、書類選考や面接で適性を見極める。契約段階で公務員としての守秘義務の順守を求めるなどし、兼業の問題点のクリアを図る。

 

  一方、民間企業と県で職員を相互派遣する取り組みも同時に進める。県は銀行やJAなど地元企業と既に年間、数人程度の交流を実施している。銀行出身者は金融や会計の知識を生かし、補助金関係の執行や進行管理を担うなどしているという。

 

  今回、想定している交流先は大企業を含む全国の民間企業だ。シンクタンクや商社など対象企業は幅広く検討する。期間は1年を見込む。県の若手・中堅職員を民間に送ることで、知見を広げる狙いもある。一方、民間出身者が県庁で働くことについて、県は「自治体と共に仕事をする企業も多い。行政の論理や意思決定プロセスを内部で理解でき、企業側にもメリットがあるはず」としている。

 

  県が民間人材を求める背景には、デジタル技術の進展で時代の変化の流れが速まる中、対応できる力を培う思惑がある。兼業が社会に浸透しつつあることや、コロナ禍を経てテレワークなど多様な働き方が定着していることも後押しとなったとしており、仁坂吉伸知事は「世の中の変化のスピードが格段に変わった。厳しい民間の世界に触れ、職場全体の発想法に刺激を与えたい。前例踏襲ではない、枠にとらわれない政策形成ができたら」と語った。【山口智】