日刊IWJガイド・非会員版「即時停戦を!『ウクライナ問題は少なくとも二つの革命から見ていく必要がある』岩上安身による国際政治学者・羽場久美子氏インタビュー報告!」2022.9.24号~No.3663号
はじめに〜<インタビュー報告>即時停戦を!「ウクライナ問題は少なくとも2004年と2014年の二つの革命から見ていく必要がある」ウクライナ紛争と米国の戦略 岩上安身による 国際政治学者・神奈川大学教授 羽場久美子氏インタビュー(続編)報告
おはようございます。IWJ編集部です。
昨日、夜8時より、即時停戦を!「ウクライナ問題は少なくとも2004年と2014年の二つの革命から見ていく必要がある」ウクライナ紛争と米国の戦略 岩上安身による 国際政治学者・神奈川大学教授 羽場久美子氏インタビュー(続編)が行われました。
大変、現状への危機感があり停戦への強い祈りに満ちたインタビューとなりました。
冒頭、羽場久美子教授が、ポーランドのポズナンで開催された国際歴史学会の中の国際関係史学会に出席した話から始まりました。ポズナンはドイツ国境に近い都市ですが、ウクライナからの避難民の人たちが来ている都市だといいます。
ところが、ロシア人には、ビザを発行しないので、すぐ近くにいながら、ロシア研究者が全然来られなかったといいます。
学会の中で、ロシアに対する非難が行われたといいます。
さらに、次回の大会は、イスラエルで行われる予定だというのです。
羽場教授「イスラエルが3ヶ月前に、パレスチナにミサイル攻撃をして指導者が殺されたとか、一般人に被害があったということですから、一方で、ロシアを非難しながら、イスラエルで次回の学会を開催するというのはどうなんだろうなと。学会自体も、ウクライナ・ロシア戦争中で変化してきています」
羽場教授のこの発言を受けて岩上安身は、「イスラエルがナクバ(パレスチナ人の虐殺と土地の収奪)以降、やっていることは、民族浄化であると誰しも思っています。ウクライナ政府は、『土地は取り返す』と言いながら、『国民は取り返す』とは言いません。ウクライナ政府が攻撃してきたのは、ウクライナ国民の籍を持ったロシア語話者でした。これを考えると、これもパレスチナでイスラエルがやったような、民族浄化ではないかと思います」と応えています。
羽場教授「ポーランドで開かれた後、次にイスラエルというのは、驚いた研究者も多かったと思います」
米国やNATOも、この国際際関係史学会と、まったくスタンスは同じです。
ロシアのことは批判しますが、イスラエルと同じようにロシア語話者を民族浄化をしてきたウクライナも、パレスチナ人を民族浄化しているイスラエルも、まったく批判せず、ダブルスタンダードを貫いています。
日本はもちろん、西側の大手メディアも、右へ倣えです。
このダブルスタンダードに、米国NATOや西側メディアの本質が現れているように思えます。
前回のインタビューで、重要な点を岩上が振り返りました。
「ウクライナは東西で発展の様相が異なり、東部が豊かで西部は貧しい。そして豊かな東部にほとんどロシア語話者が住んでいる。東西は折り合いがつかない」
羽場教授は「通常は西が豊かで東が貧しいと考えられるケースが多いですが、ウクライナの場合は逆で、ドンバス地方、ハルキウやドネツク方が重工業が発達していて豊かです。ザポリージャの方までですね」
ウクライナの地域特性は、ウクライナ支援のあり方にも影響を与えています。
たとえば、ウクライナ西部のザパルカッチャ州は、東部や南部からの避難民(国内避難民)が押し寄せていますが、支援の空白地帯になっています。
西部地域は経済発展が遅れ、道路や上下水道などインフラが整備されていないため、大きなトラックで支援物資を運搬することが難しいのです。
※【誰も助けに来ない】ウクライナの「辺境の地」に行ってみた(原貫太・フリーランス国際協力師のYouTubeチャンネル、2022年8月30日)
https://youtu.be/9MhAhxPK5KE
岩上安身は、ウクライナの国境のあり方そのものについて重要な指摘を行いました。
「ソ連時代にフルシチョフが、ロシアとウクライナはソ連邦という一つの国の中にあるものですから、2つの国の国境は県境のようなものでしかなく、国境線をウクライナに移してロシア東部をウクライナへ編入したという経緯があります。その程度のもので変更されたものを『永遠の国境線』のように言うのはどうかしているとロシア側は言っています。
しかし、こうしたことはかき消されてしまいます。歴史的なことを踏まえないで、まるで今のウクライナが今の国境線のまま昔から、国民国家として存在していたかのような、幻想がふりまかれている」
羽場教授は、「ウクライナが一つの国あり続けたという方が短かった、少なかったと言えます。そもそも、ウクライナという言葉が、辺境とか、小地域という意味です。国民国家形成が現段階までできなかった地域と言えます」と応えています。
インタビューで話し合われたのは、主に、3月と5月に出された『憂慮する日本歴史家の会』の声明について、2050年には、中国とあわせて、世界経済のGDPの50%を占めると予想されているインドの国際秩序における重要性と、ウクライナ紛争でのしたたかな立ち回り、ウクライナ紛争の「長期戦」のロシア側の捉え方の問題、制裁のブーメランがきつい欧州全般でのデモ頻発、台湾有事とウクライナ紛争の比較検討、原発を抱えた日本の安全保障問題など、多岐にわたります。
インタビュー中、いくつも興味深い視点や重要な論点がありました。その中の一つに、羽場教授と岩上安身の指摘したインドの問題があります。
インドは、ロシアの南に位置し、中国、韓国、日本とともに、ロシアに近接する国家です。3月と5月に声明を出した羽場教授も参加する『憂慮する日本歴史家の会』は、日本の外務省、中国外務省とともに、インドの大統領にも働きかけたといいます。
働きかけた当初のインド大使館の反応は、「情勢を見極めて」というものだったそうですが、最近、徐々に、変化がみられるということでした。
2050年までには、経済大国の中国に次いで、第2位に躍り出るインド。この両国で、世界経済の半分の富を産出するようになります。
このとき、国力に規定される世界のパワーバランスは、大きく変わっているだろうという見通しを、岩上は示しました。
そして、興味深いのが、羽場教授の「ロシア、中国、インドが結ぶと世界経済のかなりの部分を占め、これに軍事力も入れると、欧米は太刀打ちできない」という評価です。
そうして興味深いのが、羽場教授の「インドは早期に植民地になったので、反アングロサクソン・反米志向が強い」という指摘です。
エリザベス女王の死去に際して、王冠に使用されているインド産の世界最古と言われる「コイヌール」と呼ばれるダイヤの返却を求める運動がいち早く起きたのもインドです。
※「最古のダイヤモンド」返還を=英王冠に使用、ネット上で再燃―インド(毎日新聞、2022年9月17日)
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/e3-80-8c-e6-9c-80-e5-8f-a4-e3-81-ae-e3-83-80-e3-82-a4-e3-83-a4-e3-83-a2-e3-83-b3-e3-83-89-e3-80-8d-e8-bf-94-e9-82-84-e3-82-92-ef-bc-9d-e8-8b-b1-e7-8e-8b-e5-86-a0-e3-81-ab-e4-bd-bf-e7-94-a8-e3-80-81-e3-83-8d-e3-83-83-e3-83-88-e4-b8-8a-e3-81-a7-e5-86-8d-e7-87-8/ar-AA11V6wD
クアッドにも入っていながら、中国とロシアが核となる上海条約機構にも参加し、ロシアや中国とも強い結びつきを持つ、インドの加わった、2050年の国際秩序のカラーは、現在の米国と欧州が中心のそれとは明らかに異なります。
日本は、こうした将来の国際秩序を想像しているのでしょうか。
詳しくは、ぜひ、インタビューを御覧ください。
※オープン配信【9/23 ライブ中継 20時頃〜】岩上安身による国際政治学者 羽場久美子教授インタビュー(続編)
https://www.youtube.com/watch?v=H7gIQf2Libk
■9月21日に行われたプーチン大統領の予備役の部分動員を発表したテレビ演説に識者の反応が続々! IWJはスコット・リッター氏とコンソーシアム・ニュースのジョー・ローリア記者の論説記事を全文仮訳して紹介!
ロシアのプーチン大統領は9月21日、国民向けのテレビ演説を行いました。この中で、予備役を部分的に動員する大統領令に署名したことを明らかにしました。
※【演説全文】プーチン大統領 “予備役”部分的動員発表 なぜ?(NHK、2022年9月22日)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/detail/2022/09/22/25523.html
※Text of Putin Speech Announcing Partial Mobilization(naked capitalism、2022年9月21日)
https://www.nakedcapitalism.com/2022/09/text-of-putin-speech-announcing-partial-mobilization.html
このテレビ演説に識者の関心が集まっています。
それは、プーチン大統領が、ロシアの核兵器使用の可能性に明確に言及したからです。プーチン大統領は、テレビ演説の中で次のように述べています。
「米国、英国、NATOは、軍事行動をわが国の領土へ移すようウクライナに直接働きかけている。もはや公然と、ロシアは戦場であらゆる手段でもって粉砕され、政治・経済・文化、あらゆる主権を剥奪され、完全に略奪されなければならないと、語られている。
核による脅迫も行われている。西側が扇動するザポリージャ原発への砲撃によって、原子力の大災害が発生する危険があるというだけでなく、NATOを主導する国々の複数の高官から、ロシアに対して大量破壊兵器、核兵器を使用する可能性があり、それは許容可能という発言も出た。
ロシアに対してこうした発言をすることをよしとする人々に対し、わが国もまたさまざまな破壊手段を保有しており、一部はNATO加盟国よりも最先端のものだということを思い出させておきたい。わが国の領土の一体性が脅かされる場合には、ロシアとわが国民を守るため、我々は、当然、保有するあらゆる手段を行使する。これは脅しではない。
ロシア国民は確信してよい。祖国の領土の一体性、我々の独立と自由は確保され、改めて強調するが、それは我々が保有するあらゆる手段によって確保されるであろう。そして、核兵器で我々を脅迫しようとする者は、その羅針盤が逆になる可能性があることを知るべきだ。
世界の支配を目指し、わが祖国、わが母国を解体し、隷属させると脅す者を阻止するのは、我々の歴史的な伝統で、わが国民の宿命の一部となっている。我々は今回もそれを成し遂げ、今後もそうし続ける。皆さんの支持を信じている」
旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に関する一連の調査報道で著名な米国のジャーナリスト、ロバート・パリー氏が立ち上げた独立系メディアの『コンソーシアム・ニュース(Consorsium News)』は、21日付で「一夜にして戦争はどう変わったか」という論説記事をジョー・ローリア記者の署名入りで出しました。
※How the War Changed Overnight(Consorsium News、2022年9月21日)
https://consortiumnews.com/2022/09/21/how-the-war-changed-overnight/
この記事は副題に「ウクライナの4つの地域で住民投票を宣言し、新しいロシアの領土をあらゆる手段で守ると宣言したことで、ウラジーミル・プーチンはまったく新しい戦争を引き起こした」と書かれ、23日から実施されている東部・南部での住民投票が戦争に新しい局面を開いたと論じています。