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鶏卵大手・イセ食品の破綻 秋篠宮殿下の研究資料が危機に瀕した理由
〈当職は、貴殿に対し、直ちに本件資料をお引き取り頂くよう本書を持ちまして請求申し上げます〉
こんな書面が秋篠宮家畜資源研究会理事の奥野卓司氏宛てに送付されてきたのは、今年4月のこと。送り主は破綻した鶏卵最大手「イセ食品」の管財人。
「本件資料」は秋篠宮殿下の資料だというから、穏やかではない。
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事の発端を、昨年6月までイセ食品の会長兼社長を務めていた伊勢彦信氏(93)が振り返る。 「私は長らく、秋篠宮殿下が総裁の山階鳥類研究所に微力ながら協力して参りました。鳥類の研究は絶滅危惧種ばかり注目を集める中、殿下は人類にとって鶏がいかに重要なタンパク源か理解し、鶏の研究に勤しんでこられた。ですが、この研究所には殿下が資料を置いたり研究されるスペースが不足していました」
そこで、 「何かお力になれればと、山階鳥類研究所の前所長で殿下の研究の秘書的な役割も担う奥野さんと相談の上、イセ食品木更津研究所の研究室を殿下にご提供することになっていたのです」
「あおぞら銀行にいいように利用された」
殿下の貴重な研究資料も木更津研究所に移された。あとは殿下が実際に使われるだけ、という状態になっていた今年3月、イセ食品及びイセに、突如会社更生法適用の申し立てがなされたのである。債権者のあおぞら銀行と彦信氏の長男で株主の俊太郎氏が申し立てたことで、「内紛」「親子の確執」とも報じられたが、彦信氏はこう憤慨する。
「2社で453億円と報じられた負債の多くは西田隆文元社長の事業の失敗によるもので、資産売却で債務返済のめどもついていたし、支払い能力もあった。息子は気が弱く断れない性格で、あおぞら銀行にいいように利用されただけですよ」
早急な撤去を要求
3月25日には会社更生手続き開始となり、 「管財人の高井章光弁護士から、木更津研究所の資料一式を早急に撤去するよう要求されました。当然管財人も、殿下に提供した場所と承知の上で、奥野さん宛てに書面を送ったのです」
結局、秋篠宮殿下の資料一式は、彦信氏が理事長を務める農業関連の教育機関の施設に急遽移送され、何とか事なきを得たが、 「今度は管財人が、その教育機関に、イセ食品の経営参画などを明記した確認書を解除する通知を送ってきた。
つまり、協力関係の解除を通告してきたのです。
管財人のやり方に憤るとともに、宮様にご迷惑をおかけしたことが畏れ多く、申し訳ない気持ちでいっぱいです」
「荷物を移していただいただけ」
管財人である高井弁護士本人に話を聞くと、 「秋篠宮さまの資料は、当事務所の弁護士が奥野さんとお話しして移してもらいました。木更津研究所は私の管財人就任前から売却予定で、買い手候補から連絡も来ていました。売却予定の物件から荷物を移していただいただけのことです」
ちなみに、奥野氏への通知から4カ月以上が経過した9月5日現在、木更津研究所の土地・建物は、登記上イセ食品所有のままだ。
再び、彦信氏の談。 「もう二度と手に入らないような好立地の金沢営業所も管財人は安値で売り飛ばしており、イセ食品の未来を考えているとは到底思えません。研究所は鶏卵事業の命で、手放すなんてとんでもない。売るなら私が買い戻したいぐらいです」
腰を落ち着けて研究に勤しむことのできる環境が整う日を、秋篠宮殿下も待ち望んでおられるに違いない。
「週刊新潮」2022年9月15日号 掲載
新潮社